表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EATER―異能者達の宴―  作者: ケロっち
とある女子高生の日常
3/16

女子高生の日常2

―放課後―


ワイワイと賑やかな教室の中、私はホクホク顔で鞄の中に教科書をつめていく。

一日の授業が終わり、フリータイムになったということもあるが、なにより臨時収入が嬉しくて、感情を隠すことができない。ついつい、鼻歌を歌ってしまったりなんかもしてしまう。


何しろ、一万円。学生生活において、この金額はとても大きい。

私の欲しいもので携帯電話やゲーム機といった高額なものを選ばなければ、余裕でお釣りが出る。

感情を隠せという方が無理があると思う。

でも、衣恵は横で苦笑いをしていた。


「カモ、あんた、いつも稼いだときは楽しそうだね」

「ん?当ったり前!博打なんて楽しんだモン勝ちでしょ?」

「そーいえてしまうアンタが羨ましい。 ウチなんて、賭け事苦手だから、あんまり勝てないし。 流石、『嵐の女帝』と呼ばれるだけあるよね、カモって」


そう、私はここ富真学園において、一部の人から『嵐の女帝』と呼ばれている。

というのも、賭場で今まで不敗の実績をもっているからである。

ちなみに、この賭場を通称『コロシアム』と呼び、校内の3箇所に不定期で開催されている。


勿論、賭場とは博打を行うためにある場所な訳で、非公式だったりする。

しかし、一部先生も参加していたりするため、特に検挙されることはない。

そのせいか、チェスだろうが、将棋だろうが、麻雀だろうが、チンチロだろうが腕に自信さえあれば、特にジャンルは問わずできる。

私みたいな博打好きでなくても、気軽に参加できるのだ。

と、こんなことを考えていると、ふと思い出したくないことを思い出してしまった。


「あ…やばっ…」

「カモ? どうしたの?」

「えっ…? あ、うん…よくよく考えてみると、今日お母さんに帰りに買い物頼まれてたんだよねぇ…」


一瞬、衣恵の表情が固まる。


「へ、へぇー。ちなみにカモさんや。 買い物ってどのくらいかかりそう?」

「ん? 買い物自体はあんまり量はないんだけど、タイムセールだから…」

「タイムセールかぁ。そりゃ、厄介だねぇ。 んじゃあ、もしかして、今回スウィーツは?」

「あはは。ごめん、ちょっと、無理かも」


苦笑いしつつ、頭をさげて謝る。

いくら自分がおごってあげる立場とはいえ、約束をやぶったのはこっちだし、きっと彼女のことだから、すでにケーキのためにオナカの準備をしているはず。

案の定、衣恵は肩をがっくりと下げ、目に見えるかのような落ち込みオーラを放ち、「終わりじゃ…世界の終焉がきたのじゃ…」とか、何処かのRPGの長老が言いそうな言葉をはいていた。

しかし、私の親友はそんなことでへこたれはしない。彼女が立ち直れないことは、あまりないのだ。三秒後には、いつものテンションで会話に復帰してきた。


「ま、まあ、それなら仕方ないよねぇ! ウチも、なんとなく、予想はできていたさぁ!」

「その割には、三秒くらいまるで世界の破滅みたいな表情してたけど?」

「…カモさんや」

「…何?」

「世の中には、黒を白、白を黒と言わなければならないことがあるんDA!」

「いや、これ、そんな大事だっけ?」

「大人になればわかる!」

「あんた、私と同い年じゃない…しかも、私の方が誕生日早いし…」

「カモ、あんた意外とS?」


私の友人は滝のような涙を流した。

もっとも、こんなやり取りが私達二人なりの会話だったりする。

時たま疲れを感じることはあるけれど、衣恵とこういう話をしていると、落ち込んでいる時励みになるし、真面目な話の時は彼女は真剣に相談にのってくれるのだ。

自分でいうとちょっと照れくさいけど、一緒にいると楽しいのだ。


「ふぅ、それはともかく、今度おごってあげるから我慢して」

「あ、Sは否定しないんだ」

「……おごらないよ?」

「マジすんません、それだけは簡便してください。ウチのMP的な何かが減るからぁあ!」

「冗談よ。 ま、ともかく、ごめんね」


申し訳なく思っていると、衣恵はきょとんとした顔をする。

そして、おもむろに私の顔をつねってきた。

むにぃと頬が伸びて、非常に痛い。


「いっ!ちょ、ちょっほ!なにふんほほ!?(ちょ、ちょっとなにすんのよ!?)」

「あ、ごめんごめん。 いや、カモの偽者かと思って」


笑いつつ、衣恵は頬から手を離してくれた。

話してくれた今でも、ちょっと頬がジンジンとする。


「偽者ってなによ、偽者って!」

「いや、だって、普段こんなにしょんぼりしないからさぁ。 まあ、これはこれで、カモデレってレアなシチュエーションだから私的には天からのご褒美なんだけどね」

「カモデレってなによ、カモデレって」

「それは、世界の三大元素の一つといわれるもので、カモから生成されます。 普段賭け事とツンと天然で構成されているカモですが、一定の周期で…具体的に言うと衣恵調べでは、1賭け・8ツン・1天然の割合比が成立すると10回に一回程度の確率でデレます。このデレがカモデレと呼ばれるもので、一部の男子と私にとってはご褒美です」


なんだか分からないけど、とても疲れそうな気がしたので、スルーすることにした。

それに、そろそろタイムセールのある店にいかないと間に合わないし……。


「あ、ごめん、いそがないと」

「ん?あれま、意外と時間経っちゃってたんだ」


衣恵が携帯を出して時間を確認する。

時刻は十七時半。間に合いはするけど、ゆっくりは出来なさそうだ。


「えっと、それじゃあ、そろそろ行くね?」

「ああ、うん。 ねぇ、カモ」

「ん? 何?」

「お姉さんからの忠告! 買うもの買ったらさっさと帰ること! 最近は夜道危ないからねぇ。 カモ、可愛いから襲われちゃうかもよぉ?」

「あはは、忠告ありがと。 じゃあ、また明日!」


私が手をふりながら駆け出すと、カモもいつものように、まるでひまわりみたいな笑顔で手を振り返してくれた。

きっと、明日も明後日も今日みたいな日々が続くんだろうなぁ。

そう、この時の私は思っていた。

今まで自分が生きてきた日常が、永遠に続くものだと信じて……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ