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失ってから気付いた愛情

人は失ってからじゃないと、大事なモノに気付かないと、実感した事がありますか?


私は……、あります。


それは、母と過ごした日々。



無条件に私を心配し、愛してくれた「お母さん」


2026年7月7日


急に痴呆症状が酷くなり、朝晩の区別がつかなくなって、退職の為に返す筈だった物を深夜に持って行った事の記憶が一切なく

また、自宅での一切の食事を拒んでいた母は、フラフラになっていたとの事で、勤めていた老人ホームへ、攫われるかのような早さで連れていかれた。


……心配してくれていたと分かっている。


でも、突然、知らない人間が何人も押し寄せてきて、「一人にはさせておけませんよね?」「週3日はデイサービスを利用してもらおうと思ってます」とか、その方が「お母さんの為」、「娘さんも安心ですよね?」

とかなんとか、あれこれ一気に詰められてさ


実は、いつからか分からないが、感情を麻痺させていた私は、全てを施設に任せた。

……任せてしまった。


母が家からいなくなって、2日・3日……ぐらい経った頃かな?


私の心の麻痺?、が突然消え……


配偶者も子供もいない私を、唯一無条件に愛して心配してくれていた人が、傍からいなくなったのだと悟って、静かな絶望が私を包んだ。


ずっと一緒に暮らしてて、弟が独り立ちして、父が亡くなってからもずっと、二人で支え合ってきた。

弟は、普段自分勝手でいても、家族の為に一生懸命働いていた父を尊敬していたようだ。

でも私は、見栄っぱりで自分勝手で、田舎(鹿児島)に帰省した時に、父の実家に真っ先に行かなかった等の理由で、焼酎を呑んで酔った挙句、母を蹴った父を、殺してやりたいと思う程嫌いになって、心の底から憎んでいた。


弟は、何でかは忘れたが、現場にいなかったから、私の気持ちなんて微塵も分かりはしないだろう。


「やめて!!!」って叫んで、母を庇った私には、父は流石に何もしなかったが、隙を見つけて母に更なる暴力をふるおうとしていた。


……周りにいた父方の親戚連中は、今思えば、何もしてくれなかったな!!!〇ね!!!!


あまりにも無力だった自分にも嫌気が差したかのかもしれない……。

その何年後かに、とある居合い道場で三段を習得した私は日本刀の本身を手にしていたが、その事を最も喜んでいたのは、何事も人と違って、派手で抜きん出ているのを求めていた、憎き父だった。


何て言うか……、馬鹿馬鹿し過ぎた。


憎しみの役に立つかもしれないと思って始めた手習いは、そんなものじゃなかった。


一度だけ、稽古の途中に、道場の庭で刀を持って、ゆっくりと座ろうとした時に、突然、【何か】を感じた時があった。


……風?


……悟り?


……解脱する瞬間の無限の喜びか?



あの瞬間だけ、本当に、私は無敵だったのではないかと、今思う。


まぁ、結局は……。

静かに袴を捌いて正座し、そっと刀を置いて刀礼した私に刃を向けるような狼藉者はそこにはいなかった───



……私が居合いを習っていたのは本当だが、ある鉄道事故のせいで、継続の道は絶たれたのだ。


遠くなった静かな悟り……。


今も私の傍らには二本の真剣があるが、もう誰を斬る気もない。


だってもう、憎い父は、とっくにあの世へ逝き、


もしこの先母が亡くなってしまったなら、


きっと私は悲しみのあまりに狂って、何もしなくても死ぬだろうからだ。

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