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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

「高校生の耳飾り」

作者: ふじきり
掲載日:2026/05/20

 高校生の月本兼続(つきもと かねつぐ)はピアスをしたいと思っていた。だけど結局何も出来ない、出来てない。

「あのさ、確かに言うのは自由。だけど実行する気もないのに、それは言っちゃいけないんじゃない?」

友達の佐々木圭史(ささき けいし)が言う。

場所は放課後の教室。

二人して窓から校庭で部活をするたくさんの生徒を眺めながらそんな他愛もない話をして時間を潰している。

「今時ピアスなんてしても先生も怒らないっしょ」

「でも校則じゃ駄目って書いてあるじゃん」

「あー、それ言い訳。免罪符か何かだと思ってるんじゃない?」

「うん。まあそうだけど」

「だったらチャッチャとやっちゃいなよ」

「……俺さ。あのやった姿に憧れはある。だけどブスッって穴をあけるのが嫌なんだってば」

「じゃあ、もう元々やる気ないんじゃん」

「まっ、金もないしな」

「みんな腹に入っちゃうもんな。俺ももうこずかいそろそろ底つくわ。ポイ活頑張んないと。お前もポイ活しろよ」

「分かってる。でもなんかカッコ良く見えるんだよな」

「お前の言ってるソレってホントにピアスか?」

「ああ?」

 その話に割り込んできたのは、部活に行く途中の同級生・猿渡カイシ(さわたり かいし)だった。

「それ、イヤーカフなんじゃね?」

「なにそれ」

「穴開けなくてもいいヤツ。ピアスに見えなくもない」

「たとえばどんなの?」

「検索しろよ……」

言いながら素早くスマホで検索をかけると画像を見せてくる。

「こんなの」

「そうそうそう。こんなの」

「よく見ろ。ピアスとかって書いてないだろ?」

「イヤーカフ?」

「耳に挟み込むヤツ。穴なしピアスとも言うとか言わんとか」

「ほーんとかぁ?」

「だから調べろって」

「いや、どーでもいい話だから」

「……」

 でも兼続にとっては、どうでもいい話ではなかったようで、カイシのスマホを奪い取るとジッとそれを見ていた。

 こんなの欲しかったんだよな……。

「あれ、もしかしてヒットしちゃった?」

「あー、でも金属アレルギーとか大丈夫か?」

「え?」

「普通の安いヤツって金属汗で溶けちゃったりしてアレルギーなったりするらしい」

「へぇ、物知りぃ」

「だから茶化すなって」

「分かった分かった」

「ぁ、サージカルって書いてある。コレ、いいヤツなんじゃない?」

「確かに」

「何サージカルって」

「だから」

「はい、調べます。ぁ、AIに聞いてもいい?」

「それはお前の自由」

「ぁ、あれ? コレ、思ったよりも安い」

 これなら自分にも買えそうだと自分のスマホにリンクさせようとして止められた。

「えっ」

「これくらいなら俺が買ってやるよ」

「はっ?」

「正確には、俺がポイントで買ってやるよってこと」

「そ……れは」 嬉しいけど、何かあるんじゃないかって疑ってしまう。

「ただし」

「あっ、きた。等価交換」

「いやいや。そんな大それたものじゃなくて」

「何かあるんだ……」

「うん」

「……何?」

「初めてのカフは、俺に付けさせて欲しい」

「ぇ、お前が付けてからコイツに渡すってこと?」

「違う」

「だったら何?」

「だから。品物が届いたら俺がお前の耳にカフ付けたいってこと」

「えっ……」

 それは不意打ち。

思ってもみなかった提案だった。だけどすぐに『そんなことなら』とも思ってしまい承諾する。

カイシはとても嬉しそうに笑顔を作ると早速その場で注文をした。



 数日後。兼続はカイシの自宅にいた。

彼の部屋に入って届いた封筒が開封されるのを見つめる。頼んだのは銀色の医療用のステンレスで作られた三連にも見えるカフだ。

「どっちの耳にする?」

「どっちでもいいけど……」

「じゃあ、どっちの耳からから試したい?」

「左?」

「分かった」

 最初は左、次は右に着けて感触を味わう。そして落ちにくい右耳で落ち着くと兼続は改めて礼を言った。

「俺のささやかな願望を叶えてくれてありがとう」

「別にいいけど」

「……けど?」

他にも何か希望があるのかと問いただすと相手の口から飛び出した言葉に一瞬フリーズしてしまった。

「ぇっ?」

「もうちょっと耳触って、ちょっと抱き締めてもいいか?」

「…………」 はっ? 何言ってんの? と思っている内に抱き締められて耳を揉み揉み触られた。

「ぇ、ちょっと?!」

「ああ、ごめん。俺、耳フェチ」

「ああ、耳フェチ……って、耳フェチなら何で俺今抱き締められてんの?!」

「お前がいい匂いするから」

「ぇ、何。俺、それ以上何かされる?!」

「いやいや。それは大丈夫。俺、耳フェチだから」

 言いながらも力強く抱き締めてくる。

やっぱりタダより高い物はないかも、と危機を感じた兼続だった。 終わり 20260520


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