この結婚、死んでも嫌です:番外編ーチャックの冒険
チャックが家から出て、迷子になっていた間の話です。
どうやって迷子になって、どうやってマリアたちと出会ったかという話。
チャックの視点が、殆どひらがなで、少し読みにくいかもしれないです。お暇な時にぽつぽつと、でどうぞ。
「チャック様、どちらに、おいでですか?」
じじょのこえ。
いっしょに、いつものにおいがくる。
「くしょん」とはなをならした。
どのじじょも、すごくにおう。
ジョエルさまがちかくにくると、それはもっとおおきくなる。
おおきくなって、ぶあーってジョエルさまをおそう。
「ジョエルさま、にげて」
はじめてみたときは、おどろいてさけんじゃった。
でもジョエルさまは、へいき。
きっとジョエルさまは、つよいんだ。
さすが、ぼくのごしゅじん。
「チャック様、お昼御飯ですよ。出てきてください」
うわあ、ごはん!
ぼくは、ぴょんぴょんと、とびだした。
ぴかぴかのおさらに、ぼくのだいすきなごはん。
おさらのまえにすわって、いただきますっていって、おさらにかおをつっこんだ。
――おいしい―――!
いっしょけんめいたべたら、ねむくなってきた。
そうしたら、じじょがぼくをもちあげてさすった。
ゆびがちょっといたい。
このじじょは、ゆびがいたいひと。
ジョエルさまのゆびは、いつもやさしくてきもちいいのに。なぜかな。
ぼくのこと、すきじゃないから?
ぼくをねどこにおいたあと、じじょがにわにでた。
ドアがあいてる。
にわにでられる。
いまならにわであそべる!
ぼくはいそいでドアからでて、にわにかけだした。
すこしあそんだら、ねむくなった。
くさのなかでおひるね。
おきて、またあそんだ。
ちいさいくろいのが、じめんのうえをあるいてる。
いちれつだ。
まえあしで、タシッておさえた。
はいでて、またれつになる。
すごくおもしろい。
いっぱいあそんでつかれちゃった。
あれ?
うしろに、ぼくのへやがない。
へやが、かってにどこかへいってしまったのだ。
だめだなあ! ぼくのへや。
ぼくはへやをさがすことにした。
たくさんあるいて、たくさんはしった。
いろいろなものとあそんでいたら、おおきなうまがみえた。
うまは、しっている。
ぼくがこのうちにきたときに、うまのひく、ばしゃにのってきたんだ。
ぼくはうまに、こえをかけた。
「こんにちは。なにしてるの?」
「仕事だよ。後ろに引いている荷物を運ぶんだ。坊やは何しているの?」
「へやがどっかにいっちゃったの。さがしてるとこ」
「部屋はどっちにあるの?」
ぼくは、あっち、とあたまをふった。
「俺は今からそっちに帰るんだけど、乗って行くか?」
「うん。ありがと」
ぼくはうまのおじさんにおれいをいって、うしろのだいにのった。
だいはゆらゆらしながらすすむ。
わらのうえにのっかっていたら、ねむくなってきた。
すごくきもちがいい。
「坊や。ここまでだよ。降りな」
すっかりねていたみたい。
「うん、ありがと」
「部屋はここらにあるのかい? 大丈夫かな?」
「うん、だめなへやを、ちゃんとみつけてあげるんだ」
うまのおじさんは、ちょっとこまったように、ぼくをみている。
「さっきの場所に戻りたくなったら、ここにこいよ。また明日、あそこに荷物を運ぶからね」
「うん、ありがと」
「おいおい、マーキングして、匂いをつけておきなよ。場所がわからなくなるよ」
ああ、マーキングかあ。
なんとなくしっている、きがする。
ぼくは、あしをあげて、おしっこをした。
「じゃあ、その匂いを頼りにここへ戻っておいで。部屋がちゃんとみつかるといいね」
ぼくはそこから、へやをさがしはじめた。
でもすぐに、くらくなってしまった。
くらくなると、ねむくなるんだよね。
はこがいっぱい。そこにもぐった。
あったかいなあ。
ぼくのへや、ごめんね。
あした、おきたら、さがすね。
あかるくってめがさめた。
まわりは、おにわとちがって、ひとがいっぱいいる。
ちいさいにんげんもいる。
ちいさいにんげんは、はじめて。
ぼくより、ちょっとおおきいのもいる。あれって、にんげん?
よつあしだから、べつかも。
ぼくは、ひとがおおいほうにむかった。
だって、おもしろいもん。
でも、おなかすいた。ごはんはどこ?
じじょは?
おへやといっしょに、あそびにいったのかな。
「おい、坊主、見ない顔だな。どこから来たんだ」
おおきいくろいいぬがはなしかけてきた。
「こんにちは。うまのおじさんにのせてもらってきたの」
くろいおじさんは、ちょっとくびをかしげている。
「親か、飼い主は?」
「わかんない。じじょもおへやといっしょに、どこかへいったの」
「侍女? いいとこの子か?」
「じじょはにおいがきらいだから、いなくてもいいや」
「おお、女の付ける匂いはきついもんがあるな。まあ、おいおい慣れるから、しばらく我慢しろよ」
そこに、ちゃいろのいぬがやってきた。
「何してんだ? 見かけない顔した坊主だな。どうした?」
「もしかしたら迷子かもしれない。部屋がどっかにいったんだとさ」
「家じゃなくて、部屋か?」
ちゃいろのおじさんが、ぼくにきいた。
「うん、おにわであそんでいたら、いなくなったの」
「俺は、庭に出て後ろを向いたら家が見えるけどな。後ろを向いたら部屋がいなかったのか。どんだけ広い庭なんだ?」
くろいおじさんが、こたえた。
「いいとこの子なんじゃないか?」
「そりゃあ、大変だなあ。いつから部屋を探しているんだ?」
ちゃいろのおじさんが、ぼくにきいた。
「ねるまえ。いっかい、くらいくなった」
「それじゃあ、腹が減っているんじゃないのか?」
「うん、ごはんがでてこないんだよ」
ぼくはちょっとだけ、なきたくなった。
「待て。泣くなよ。何か持って来てやるから」
そういって、ちゃいろいおじさんは、はしっていった。
すこしして、パンをくわえてもどってきた。
「ほら、食えよ」
「ありがとう。いただきます」
パンが、すごくおいしい。
「いいとこの子だな」
「ああ、いいとこの子だな」
「おい、坊主。名前は?」
「ええと……リチャード・アウグ……トゥ?……フォン?……ううんんっと」
「短く言うとなんだ?」
「チャック」
「そうか、可愛い名前だな」
「かなり、いいとこの子だな」
ふたりはぼくをみている。
「ぼく、へやをさがしにいくね。ありがと」
ちゃいろのおじさんがいそいでいった。
「おい、見つからなかったら、ここに戻ってこいよ。いいな」
ぼくはマーキングをした。
「よしよし、ちゃんとマーキングしたな。この場所は覚えたな」
「うん。だいじょうぶ」
そういってから、「のどがかわいたの。みずはどこ?」
「この道を真直ぐ行くと、広場に出る。そこの真ん中に大きな噴水があるから行ってごらん」
「うん、ありがと」
そういって、ぼくはまっすぐみちをはしった。みちのさきがあかるい。
ひろばにでると、まえにおおきなふんすいがあった。
みずだ!!
ふんすいのはしに、あしをかけて、いっしょうけんめい、みずをのんだ。おいしい―
みくちめくらいで、きゅうに、からだがもちあげられた。
ばたばたしたけど、ぜんぜんうごけない。
すごいいきおいで、ぼくはそらをとんでいく。
そのままばしゃにのせられた。
おへやをさがしにいけない、どうしよう。なきそうになっていたら、きれいなこえがした。
「可愛くて可哀想な子。こっちに来る?」
やさしいめが、ぼくをみている。
このひとのとこに、いきたい。ぼくはまえあしを、いっぱいにのばした。
おんなのひとは、ぼくをやさしくだっこして、なでてくれた。
このひとのにおいは、やさしい。このひとのゆびも、やさしい。
ジョエルさまとおんなじ。
おんなのひとにくっついていると、おちつく。
ぼくは、ゆっくりとめをとじた。
そうしたら、おんなのひとは、ぼくのなまえをよんだんだ。
「チャック」
ぼくのこと、しってるんだ。すごい。
すごく、うれしい。
それから、おんなのひとはなまえをおしえてくれた。
わたしはマリアよって。
マリア、だいすき。




