十二単の女の子
白いワンピースの女の子を見てから
一ヶ月経つか経たないかくらいの頃だった。
その日は、私ひとりで二階の部屋で寝ていた。
夜中、ふと目の前で
何かが動くような気配がして目を覚ました。
視界に入ってきたのは
豆電球のついた小さなオレンジ色の光。
その薄暗い部屋の中に――
女の子が立っていた
いや、正確には、浮かんでいる…
十二単を着た女の子だった。
前に見たときと同じように
体は少し透けていて
そしてやっぱり……
顔だけが、なぜかはっきり見えない
でも、私はなぜだかすぐに思った。
――あ、あの子だ
不思議と怖いとは感じなかった
それよりも頭に浮かんだのは
まったく別の疑問だった。
〈なぜこの子は、十二単を着てきたんだろう?〉
そんなことを考えながら
私はしばらくその子を見つめていた。
すると女の子は
まるで{見て見て}と言いたそうに
ふわり、ふわりと
ゆっくり宙で揺れ始めた。
その様子を見て
ふとこんなことが頭をよぎった。
〘……あれ?
もしかして、褒めてほしいのかな?〙
私は思わず笑って
「似合ってるよ、可愛いじゃん」
そう声をかけてみた。
すると女の子は
それに応えるみたいに
ふわふわと嬉しそうに揺れて――
そのまま、すっと消えていった。
私はしばらく
女の子がいたはずの空間を見つめていた。
そして頭の中では
ひとつの疑問だけがぐるぐると回っていた。
〈なぜ……十二単だったんだろう?〉
十二単は
平均で十二~十五キロほどあるという
いくら幽霊とはいえ
着るのも脱ぐのも大変だろうに。
どうしても見せたい理由があったのか
それともただ単に着てみたかっただけなのか……。
頑張って着ているあの子を想像すると
怖さよりも
思わずクスッと笑えてきてしまった。




