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『日常の中の怪異』 ― 私が体験してきた不思議な話 ―  作者: かゆると


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44/50

ルームミラーに映るもの

これは、今の車の一つ前

私が初めて自分で買った車の話だ。


ディーラーの人が

私の話をよく聞いてくれて

一台の車を紹介してくれた。


中古で、ナビもついていない

オーディオだけの型落ちの車。


でも、前の車では音楽が聴けなかった

だから、それだけでもう十分だった。


六十九万だったものを

『初めての車だから』と

六十万ぴったりにしてくれ

納車されたときは、本当に嬉しかった。


仕事帰りに遠回りをしたり

夜中にドライブに出たり

そんな時間が、ただ楽しかった。


ただ――


ひとつだけ、気になることがあった。


ルームミラーに、

時々、何かが映る。


最初は見間違いだと思った。


けれど――


確かに、そこにいる。


何度か目にするうちに


(またか、なんだろ?

 まあ…いっか)


そう思うようになって

いつしか気にしなくなっていた。


ある日のことだった。


ドライブの途中でコンビニに寄り

用を済ませて車に戻ると――


後部座席に、何かいた。


人ではない


でも、動物でもない。


白いモヤのようなものが

後部座席に浮かんでいた。


ただ――


それは

私の方を見ているような気がした。


(あ……これか

 ルームミラーに映っていたのは)


そう思った。


ただ、不思議と怖くはなく


(どうすることもできないし

 今まで何も、なかったしなー)


そう思って

とりあえず、そのまま帰ることにした。


後日、ディーラーでの点検の際

前の持ち主のことを聞いてみた。


長年その店を利用していたおばあちゃんで

ご主人が亡くなったあとも

その車には乗り続けていたらしい。


けれど――



「このままでは前に進めないから」



そう言って

最後の車として新車を買うことを決め

思い出の詰まったその車を手放したのだという。


(そうだったんだ…

 じゃあ……今も)


そう思いかけて、

やめた。


その帰り道、ルームミラーに

また“それ”が映った。


今度は

はっきりと後部座席の中央に。


私は、独り言のように

ディーラーで聞いた話を

そのまま話した。


そして最後に、こう言った。


「奥さまと――

 新しい思い出を、作ってください」


そのとき。


ルームミラーに映っていたそれが


ほんの少しだけ――


揺れた気がした。


それから、ルームミラーに

何かが映ることはなくなった。


あれが何だったのか

本当に“旦那さん”だったのか

私には分からない。


あのとき

あの言葉でよかったのかどうか――


それも今でも分からないけれど。


慣れない新車を運転する奥さんの隣で

旦那さんが、静かに笑っている――


そんな光景を思うと…


少しだけ、心が温かくなった。

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