表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『日常の中の怪異』 ― 私が体験してきた不思議な話 ―  作者: かゆると


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/45

猫の視線の先

我が家には、猫が二匹いる。


一匹は、今の家に引っ越してきてから

迎えたメス猫。


もう一匹は、ここ三年ほどの間に

縁あって引き取ったオス猫だ。


年も七歳ほど離れているし

オスとメスということもあって

二匹の仲は…あまり良くない。


そのため、少し別の事情もあって

一日の半分ずつ

ケージの中と外で分けて過ごさせている。


そんなある日のこと。


仕事を終えて帰る途中

スマホを見ると、旦那と息子は

義実家に行っていると連絡が入っていた。


(やったあ!夕飯作らなくていいじゃん)


そんなことを考えながら

少し浮かれて帰宅した。


玄関を開けてリビングに入ると――


すぐに、違和感に気づいた。


ケージの中にはメス猫

そして、外にはオス猫。


そのオス猫が

ケージにぴったりと寄り添うようにしていて

中のメス猫は、ケージの隅で固まっていた。


二匹とも、毛を逆立てながら……

こちらを睨んでいる。



「ちょっと、どうしたの?」



そう言いながら近づく

けれど、二匹とも動かない。


毛を逆立てたまま

ただ、じっとこちらを見ている。


……いや、見ているのは

私じゃなくてーー

私の、後ろだ。


(……どこ見てんの?)


振り返るが

そこには、ただの壁しかない。


(……もしかして、虫?)


一瞬、嫌な予感がよぎる。

私は、あの


“緑でカマのある生き物”


以外は平気なのに

アレと対峙する時は

恐怖のあまり動けなくなってしまう。


(疲れて帰宅して、アレと会いたくない

 頼むから違ってよね…)


そう願いながら、壁を確かめる。


けれど、何もいない。


ほっと息をつく。



「何に怖がってんのよ。

 大丈夫、母ちゃん帰ってきたでしょ」



そう言いながら

猫たちに近づいてしゃがむ。


そのとき、猫たちの視線が

私の後ろを保ったまま…すっと下に動いた。


(……ん?)


立ち上がる。


視線も上がる。


横に動く。


視線も、同じように動く。


(はー……なるほどね)


(私の後ろに、何かいるのか)


そう思ったとき

ふと、帰り道の光景を思い出した。


信号待ちのときに見かけた、たぬきの遺体。


いつもなら、そういうときは必ず手を合わせる。


――早く、成仏してください


それが、一番の供養だと

昔、霊能力者のおばちゃんに

教えてもらっていたからだ。


けれどその日は、疲れていて

ただ、ぼんやりと眺めるだけだった。


(そっか……あれか)


(ついてきちゃったのか)


そう思い、胸の前で手を合わせる。


〘ごめんね。何もしてあげられないの。

 どうか、早く成仏してください〙


そう祈った。


そのとき、背中のあたりが

ふっと軽くなった気がした。


「よし……」


それ以上は何もできない。


そう思って、猫たちはそのままにして

手を洗いに洗面所へ向かった。

そのままお風呂に入り


リビングへ戻ると――


さっきまでの様子が嘘のように

猫たちが一斉に鳴き始めた。


『お腹すいたー!』


『ごはんくれー!』


と言わんばかりに。


(ああ、還ったんだな)


そう思いながら、餌を用意する。


ふと視線を上げると、猫たちはもう

どこも見ていなかった。


ただ、いつも通りに

私のほうだけを見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
たぬ(ちょっと寄らせて貰ったらねっこたちがめっちゃ威嚇してくる怖)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ