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『日常の中の怪異』 ― 私が体験してきた不思議な話 ―  作者: かゆると


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言ってなかった「ありがとう」

これは、息子が中学生になる年の話だ。


当時の私は、UFOキャッチャーが好きで

息子が喜びそうなぬいぐるみをよく取っていた。


子どもだから、大事にするわけではない

それでも、気づけば

部屋にはたくさんのぬいぐるみが増えていた。


やがて息子も成長し

好みはフィギュアなどに変わっていった。


小学校を卒業して始まった春休み

中学生らしい部屋にしようと思い

ぬいぐるみも含めて

いろいろと処分することにした。


ただ――


やはり、ぬいぐるみだけは悩んだ。


目があって、表情がある

ゴミ袋に突っ込んで

そのまま…というのも気が引ける。


調べてみると

供養してくれるイベントもあるらしいが

その年の分はすでに終わっていた。


どうしたものかと姉に相談すると



「塩とお菓子を添えてゴミ袋に入れて

 捨てたらいいよ、私はそうしたよ」



と教えてくれた。


さっそく半紙に塩を包み

少しのお菓子を添えて

ぬいぐるみと一緒にゴミ袋へ入れた。


ある程度片付けが終わり

翌日まとめて処分場へ持っていくことにして

その日は、和室にひとまとめにして置いておいた。


その日の夜中

水を飲みに一階へ降りたときだった。



――ガサガサ



小さな音がした。


(猫かな?)


そう思ったが

猫はリビングの定位置で寝ている。


耳を澄ますと……

音は和室から聞こえている。


和室の扉を開けて

電気をつけると音は止んだ。



そして――



扉のすぐ前に

ぬいぐるみを入れたゴミ袋が置かれていた。


(あれ……?こんな手前に置いたっけ)

 

違和感を覚えながらも

私は袋を部屋の奥へと移動させた。


電気を消して扉を閉め

二階へ戻ろうとした、そのとき。



――ガサガサ


トスン。



さっきよりはっきりと、音がした。


私はもう一度、和室の扉を開けた。



すると――



さっき奥へ移動させたはずのゴミ袋が

また扉のすぐ前に戻っていた。


そこで、気付いた。


(あ……)


(そうか、ちゃんと言ってない)


私はゴミ袋を開けた。


そして、正座をして

手を合わせて声に出した。



「今まで、息子と遊んでくれて

 ありがとうございました」



もう一度袋を縛り、今度は奥に置いた。



それからは――



音がすることはなかった。


翌日、処分する前に

旦那と息子にも同じように

手を合わせてもらった。


後日、この話を姉にすると



「アンタらしくもない」



と笑われた。



目があって、形があるものには

何かが宿ることがある。


改めてー

そう思わされた出来事だった。

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