表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『日常の中の怪異』 ― 私が体験してきた不思議な話 ―  作者: かゆると


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/42

持ち帰った匂い

これは、まだアパートに住んでいた頃の話。


旦那の仕事は、生死に関わるものだ。


今はもうその部署を離れているけれど

当時は人が亡くなる現場に

立ち会うことも多かった。


だからだろうか

あの頃は、時々、妙なことがあった。


これは、その中のひとつの話だ。


ある日、旦那が仕事から帰ってきて

着ていた服を脱ぎながら言った。



「なんか、変な匂いついた」



私は鼻があまり良くない

だから言われても、正直よく分からなかった。


ただ、生死に関わる仕事のあとだし

そういうこともあるよな……くらいに思っていた。


とりあえず、その服はすぐに洗わず

柔軟剤入りの洗剤に浸けておくことにした。


二日ほど、そのままにしていたと思う。


旦那がその部署に入ると決まった時

私はなんとなく気になって

玄関に盛り塩を置くようにしていた。


気休めみたいなものだ。


塩は、いつもは時間が経つと

カチカチに固まる。


けれど――


そのときだけは違った。


次の日、玄関の塩を見て違和感を覚えた。


固まっているはずの塩が

なぜか、しっとりと崩れていた。


(うーん……湿気かな?)


そう思って、新しく盛り直した。


けれど――


その翌日には

同じように塩が崩れていた。


前日よりも、ひどく

まるで水に溶けたみたいに

形がなくなっていた。


さすがに気味が悪くなって

私は昔、霊能力者のおばちゃんに教わった

“やり方”を思い出した。


『九字切り』と呼ばれていたものだ。


ただ、一般的なものとは少し違っていて

当時子どもだった私にもやりやすいようにと

簡略化して教えてもらったものだった。


詳しいやり方は、うまく説明できない。


それでも、教わった通りに

玄関で一度だけそれを行ってから

新しい塩を盛った。


それからは――


塩が崩れることは、一度もなかった。


あれが何だったのか、今でも分からない。


ただ……

あの服は、二日間浸けておいたにもかかわらず

匂いが完全に取れることはなかったらしく

旦那はしばらくの間



「まだ臭うな」



と言い続けていた。


鼻が悪い私には

最後まで分からなかったけれど。


しかし、それも

あの“九字切り”をしてから

ぱたりと聞かなくなった。


そして、もう一つ。


その頃、まだハイハイをしていた息子が

しばらくの間、洗面所に近づこうとしなかった。


抱いて連れて行こうとすると

嫌がるように身体をよじって、ぐずる。


そして決まって

洗面所の上の方を見てぐずっていた。


服はもう、そこにはないはずなのに。


私は今でも

あのとき息子が何を見ていたのか――


分からない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ