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『日常の中の怪異』 ― 私が体験してきた不思議な話 ―  作者: かゆると


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34/39

追いかけてくる足音

部活で走っていたときの話だ。


私の通っていた中学校は山手にあって

ロードワークに出ると、坂ばかりだった。


上って、下って、また上って。


正直、走るのが得意じゃない私には

それだけでしんどかった。


その日は10キロのロードワーク

いつも通り

グラウンドでの練習を終えて

外へ走りに出た。


以前の話でも触れたが

私は足が遅い。


そのためロードワークでは

ほとんどの場合、一番最後を

一人で走っていた。


長距離の顧問が

最初は後ろについて



「足を上げろ」


「肩に力を入れるな」



と声をかけながら走ってくれるのだが

途中で



「頑張れよ!」


と声をかけて、前へ抜けていく

いつも通りの、ロードワークだった。


……そう思っていた。


折り返し地点を過ぎ

5キロを越えたあたりで

ふと、後ろから

足音がすることに気付いた。


最初は顧問かと思った。

さっき抜いていったはずなのに――


でも、顧問にしてはリズムが違う

だが、振り返る余裕はない。


一度リズムを崩すと

立て直せないのが分かっていた。


ただひたすら

前だけを見て走り続けた。


足音は

ずっと一定の距離でついてくる。


追い越すこともなく

離れることもなく

ただ、後ろにいる。


9キロ地点を過ぎると

校舎が見えてきた。


それでも足音は

消えなかった。


(あ、なんだ……誰か遅れてるのか)


(私より遅いなんて珍しい……

 体調でも悪いのかな)


そう思った。


そして校門でゴールし

すぐに振り返ったが


――誰もいなかった。


息を整えながら周囲を見渡す。


部員も顧問も

すでに全員揃っていた。


その日以降

同じことは起こらなかった。


私は誰にも話さないまま

卒業した。


それから何年も経ち

陸上部のOBの集まりで

ふと思い出し、その話をした。


すると――

その場にいたほとんどの人が

『聞いたことがある』と言った。


そして当時の部長が

ぽつりと口にした。



「あれ……日誌の彼なんじゃないか」

(※第三十四話参照)



彼がなぜ亡くなったのかは

今でも分からない。


もしかしたら

走ることが好きで


あの日も、ただ

一緒に走っていただけなのかもしれない。


ただ――

その日、短距離顧問だけは来ていなかった。


それに気づいて、ふと聞いてみたが

誰も、あの人のその後を知らなかった。


長距離顧問にも聞いてみたが、



「……さあな」



とだけ言って

それ以上は何も言わなかった。

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