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『日常の中の怪異』 ― 私が体験してきた不思議な話 ―  作者: かゆると


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コックリさん

【コックリさん】


1973年、つのだじろう氏の漫画

『うしろの百太郎』の大ヒットがきっかけとなり

心霊ブームと共に

爆発的に流行したと言われている。

(AI調べ)


時代の流れの中で

名前やルールを変えながら

繰り返し流行る、いわゆる“テーブルゲーム”

それは、私たちの年代も例外ではなかった。



その年、なぜか

学校ではコックリさんが大流行していた。


何がきっかけだったのかは分からないが

とにかく爆発的に流行っていた。


同級生や先輩にも何度か誘われたけれど

私はそういう類のものは

絶対にやらないと決めていた。


自分が参加すれば

ただのお遊びでは済まなくなる――

そんな気が

もうその頃にはなんとなくしていたからだ。


その日は土曜日で、学校は半日で終わり

先生たちの会議があるとかで

ラッキーなことに部活もなかった。


友達と帰ろうとしていたとき

下駄箱で同じクラスの子に

後ろから呼び止められた。



「ねえ、一回だけコックリさんやらない?」



即、断った。

でもなぜかしつこくて

どうしてもやらせたがる。


後で聞いて知ったのだが

理由は修学旅行の写真騒ぎだった

あの時、心霊写真が写ったのは

私たちだけだったらしく

そこに目をつけられたようだった。



「いいじゃん、一回だけ!ね?」


「絶対やらないよ。

 ていうか、シャレにならなくなる前に

 コックリさんなんてやめなよ」


「大丈夫だって!

 ちゃんと帰せば問題ないよ」


「本当に帰ったかどうかなんて

 どうやって分かるのさ。

 ……って、そういう問題でもないけど。

 とにかく私はやらないよ」



この時

無理にでも帰ってしまえば良かったのだが

友達が半ば拉致される形で連れて行かれてしまい

帰るわけにもいかなくなった。



「ああ、もう!分かったよ……。

 でもその場にいるだけだから。

 私は見てるだけ。

 それがダメなら本当に帰る」



条件を出して承諾させると

私は渋々、教室へ戻った

教室にいたのは

私を含めて全部で七人

コックリさんに参加するのは

私と友達を除いた五人だった。


そして――

始まった。


好きな人は誰かとか

先生のこととか

芸能人のこととか

明日の天気とか。


とにかく

聞いていてくだらないことばかりだった。


本当に来ているとしたら

こんな質問ばかりされるコックリさんに

私はむしろ同情してしまったほどだ。


しばらく時間が流れ

コックリさんを帰す時間になった。


そのときだった

参加していた五人が騒ぎ始めた。



「コックリさんコックリさん

 お帰りください」


10円玉が動かない。


「もー誰?力入れすぎ」


「今日はもう終わろうよ」



キャッキャッと

楽しそうな声が教室に響く

私は冷めた目でそれを見ていた。


(最初から自分たちで動かしてるって

 分かってるじゃん……

 あーあ、早く終わらないかな)


そう思っていたのだが

だんだん様子がおかしくなっていった。



「ねぇ、マジでもう終わろうよ」


「しつこいって!いい加減にしてよ」


「ちょっとー!」



10円玉に指を置いたまま

立ち上がる子まで現れた

近くに行って見てみると

紙の上をウロウロ動く10円玉があった。


何度も

『帰ってください』とお願いするたびに

まるで反応するように、鳥居から遠ざかっていく。


それが何度か続いたとき――


突然、10円玉が

『お、ま、え、も』

と文字を指した。


次の瞬間。

パリーン!!

窓ガラスが突然割れた。


教室の前方だったため、私たちに怪我はなかった。

でも参加していた五人はパニック寸前で

泣き出す子もいた。



「何やってんだお前ら!!

 早く帰れって言っただろう!!」



騒ぎに気づいた先生たちが来て

教室はさらに騒がしくなった。


私は友達と目配せをして

騒ぎに紛れて教室を抜け出した。


帰り道。

友達が伸びをしながら言った。



「やっと帰れたぁ!

 でもビックリしたよね。

 なんで急に割れたのかな?」


私も伸びをしながら答えた。


「さあねぇ……

 本当に来てたんじゃない?

 あんなくだらない質問ばっかして

 用が済んだら“帰れ”だもん。

 怒らない方が無理なんじゃない?」



それもそうか、と二人で笑いながら

その日は家に帰った。


月曜日

私は生活指導の先生に呼び出された

土曜日、その場にいたからという理由だった。


ありのままを話し

職員室を出ようとすると

今度は担任に呼び止められた。


あの紙の裏に――

私の名前だけが、ひらがなで

紙からはみ出すほど書かれていたという。


私は身に覚えがなかった。


でも、そのとき

私はふと思い出した。


帰らずに

紙の上を

ウロウロしていた10円玉。


あの動きは――

もしかして……


それ以来

私は断固として

コックリさんの類には

関わらないようにしている。

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