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『日常の中の怪異』 ― 私が体験してきた不思議な話 ―  作者: かゆると


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養源院に辿り着けなかった修学旅行

中学生の修学旅行で

京都へ行ったときの話だ。



自由行動の時間があり

私はどうしても行きたい場所があった。



――養源院

「血の天井」で有名なお寺だ。



修学旅行が決まったときから

自由行動では『必ず』そこへ行くつもりでいた。



地図を調べ、電車の路線を調べ

乗り換えの時間や滞在時間まで細かく計算した。



念のためそれぞれの親にも聞き

先生にも何度もしつこいくらい確認した。



そして迎えた自由行動の日



私たちのグループは四人のため

それぞれ行きたい場所を一箇所ずつ出し合い

全部で四箇所回る予定を立てていて

養源院は、一番最後に組み込んでいた。



最初の三箇所までは、驚くほど順調だった

電車も予定通り、道にも迷わず

予定していた時間よりかなり余裕があった。



「これなら最後の養源院も余裕で行けるね」


「時間余ったら別の所も行きたいな」


「血の天井ってちょっと怖いね」


そんな話をしながら

私たちは最後の目的地へ向かった。



けれど――

何かがおかしい。



まず、電車の時間が違った

あれだけ入念に調べていたはずの時刻と合わない。

さらに、乗り換えの駅名も違う。



「おかしいね」


「違う場所のルート見てたのかな」


「先生にも聞いたのにね」


そう言いながら

乗り換えて、また乗り換えて……



ようやく

『たぶんここじゃない?』

という駅で降り

そこからは地図を見ながら歩き出した。



滑り出しは良かった……はずだった。

しかし今度は

目印にしていた建物が見つからない

確か、この辺りのはずなのに。



私たちは同じ道を何度も歩き直し、

通りがかった人にも道を聞いた。

「すみません、養源院ってどこですか?」



すると、その人は少し考えてから

「ああ、えーとね……」



と口頭で道を教えてくれた。




しかし、言われた通りに歩いてみても

そこに養源院はない。



別の人に聞く。


教えられる。


歩く。


――見つからない。



地図も、道も、人さえも……

なぜかすべてが、少しずつ噛み合わない。



それでも私たちは

集合時間ギリギリまで探した。



私以外の三人も、本当に一生懸命探してくれた。



けれど結局――

その日、養源院には辿り着けなかった。



しかし今思うと、不思議なことがある…

京都には他にも

有名なお寺や見どころがたくさんあり



時間も残り少なかったのだから

途中で諦めて

別の場所に変更することもできたはずだ。



実際

別のところへ行きたいと言っていた友人もいた。



なのに――

あのときの私は、それを一切考えなかった。



『もういいや』


『別の場所に行こう』



そんなことは、一度も思わなかった。



ただ、どうしても……

養源院に

【行かなければならない】気がしていた。



『どうして辿り着けないんだ』


『誰が邪魔しているんだ』


そんな

わけの分からない怒りさえ覚えていた。



どうしてあの日

あんなにも固執していたのか……

今でも分からない。



そして――

あの日以来

私は、養源院に行きたいと

一度も思ったことがない。



もしかすると――

あの日、私が辿り着けなかったのは

〘行ってはいけない場所〙だったから、

かもしれない。

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