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『日常の中の怪異』 ― 私が体験してきた不思議な話 ―  作者: かゆると


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22/40

最後に会った霊能力者

時系列は前後するが

第二十一話『噴水の手』の出来事から

しばらく経った頃の話だ。



母はその後も、時々あの女性と

会っていたらしい。

けれど私たち姉妹が

女性や娘さんたちに会うことは

それからしばらくなかった。



やがて私たちは市外へ引っ越すことになり

母も連絡は取っていたようだが

自然と会う機会は少なくなっていったらしい。



そんなある日のこと

学校から帰ると母が泣いていた。


「どうしたの?」


私がそう聞くと

母はしばらく黙ってから言った。


「……アンタが、まだ小さい時に会った

 霊能力者のおばちゃん覚えてる?」


もちろん覚えていた

あのとき、私の体に手をかざして

「出ていきなさい」と叫んだ人だ。



母は絞り出すような声で続けた。


「そのおばちゃんね……

 除霊に失敗して……

 廃人みたいになっちゃったって

 娘さんから連絡がきたの」


それだけ言うと、母はまた泣き出した。



……私は何も言えなかった。



それからまたしばらくして

私たちは借家から

新築の家に引っ越した。



引っ越して少し経ったある日

母が朝、私と姉に言った。


「今日は学校が終わったら

 部活は休んで早く帰ってきなさい」


理由は教えてくれなかった



姉と二人で

「なんだろうね?」と話しながら

学校へ向かった。



そして放課後、家に帰ると

見知らぬ車が駐車場に止まっていた。



姉と顔を見合わせて家に入り

リビングの扉を開ける。



そこには、母と祖母と父がいた

祖父は客間で寝てしまったらしく

その場にはいなかった。



そして――

白髪で、目が虚ろな女性に

二人の女性が寄り添うようにして座っていた

あの娘さんたちだった。



姉が先に声をかけた。

「こんにちは。ご無沙汰してます」



母たちが

「おかえり」と言いながら

座るよう促す。



当時、二十歳くらいに見えた娘さんが

私たちを見て言った。

「久しぶりだね。二人とも大きくなったね」



姉と同い年だった娘さんも、静かに言った。

「久しぶり」



私は慌てて頭を下げた。

「こんにちは。お久しぶりです」



その瞬間だった。

それまで虚ろだった女性が

突然、こちらを振り向いた。



バッ、と顔を上げ

その目が、まっすぐ私を見た



そしてぽつりと言った。


「……そっか」


「優しすぎるんだね…」



さらに続けて


「でも……

 どうしようもない」


それだけ言うと

女性の視線はまた空中へ戻っていった。



それが

私があの女性に会った最後だった。



それから数カ月後――

女性が亡くなったと、母から聞いた。



娘さん二人のその後については

母は何も教えてくれなかった。



ただ――

あのときのことを思い出す。



虚ろだったはずの女性の目が

ほんの一瞬だけ

はっきりと私を見ていた。



あのとき、女性の目には……



私の後ろにいた

**『あの女性』**が

視えていたのかもしれない。

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