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『日常の中の怪異』 ― 私が体験してきた不思議な話 ―  作者: かゆると


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16/39

持っていくからね

次の話に入る前に、少し補足しておきたい。



次からしばらく続く話を友人にすると

最後に必ずこう聞かれる。

「霊が見えるの?」



答えはいつも同じだった。

『見えるというより…

 普通の人だと思ったら

 あ、幽霊でしたかって感じ<だった>かな』



テレビや映画のように

ホラー全開の姿で現れるわけではなく

普通の人と何ら変わらず、そこに“いた”



『あ、この人は霊だ!』と思ったことは

一度もなかった。



例えば、こんなことがあった。



友人たちとショッピングモールを

歩いていたときのことだ。



目の前から一人の女性が歩いてきた

四十代後半くらいで緑のトレーナーに

青の濃いめのジーンズを履いている。



女性は目線を外さず

私に向かって歩きながら頭を下げてきた。



〘ん?知ってる人かな?〙



そう思い、すれ違いざまに

「こんにちは」と声をかけ

頭を下げてそのまま歩き去った。



後ろを歩いていた友人が

少し戸惑った顔で聞いてきた。

「ねぇ、さっき誰に挨拶してたの?」



私は答えた。

「え?ああ、目の前から歩いてきた人が

 頭を下げたから、知り合いかなーって。

 アタシにじゃなかったのかな(笑)」



友人は不思議そうに首を傾げた。

「急に一人で挨拶したから、

 え?って思ったけど…

 私が見てなかっただけかな」



十代の頃には

こんなやり取りを何度も経験したものだ。



しかし二十代に入り

子どもを産んでからというもの

まったくそういうことは起こらなくなった。



私は思う。

おそらく、子どもを産む日の朝に見た夢が

関係しているのだろうと。



明るい日差しの照りつける白い部屋の中で

私は誰かと談笑している

妙に懐かしく、優しい気持ちだった。



その人は

いつの間にか目の前に現れた、

マグカップの中身を

飲み干すと笑顔でこう言った。

「私が持っていくからね」



そして、優しく私の頭を撫でた

目覚めたとき、胸に残ったのは

不思議な懐かしさと、なぜか切ない寂しさだった。



でも、顔を見て名前を呼んでいたはずなのに

起きると顔も名前も思い出せなかった。



そしてその日のうちに陣痛が始まり

息子が生まれた。

慌ただしい日々が過ぎていく中で

この夢のことはすっかり忘れていた。



しかし、先に書いたような『出来事』が

起こらなくなったと気付いた時

ふいに思い出したのだ。



ただ、不思議な体験自体は不本意ながらも

今も完全に消えたわけではない



でも…

{普通の人と霊とを区別できない}

そんなことはなくなった。



あの夢の女性――

<おばちゃん>が持っていってくれたおかげで

私は安心して日常を過ごせるのだと思っている。


挿絵(By みてみん)

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