逆さまの窓
親戚の家から帰る道に
少し気になる場所がある
お墓のすぐ横に建っている古いアパートだ。
そこは
とある宗教の人たちが住んでいる
という話もあるし
近くのお寺が持っているアパートだ
という話もある。
でも、本当のところは誰も知らない。
ただそのアパートと墓地の
ちょうど間を通るようにして
一本の細い道がある。
帰り道は、いつもそこを通る
その日も同じだった。
ただ、その日は朝からとにかく忙しく
親戚の家を出る頃には外も真っ暗で
私自身も、もう限界だった。
だから運転は旦那に任せて
私は助手席のシートを
マックスまで倒して横になっていた。
車があの道に差しかかったとき
ふと、視線を感じた。
何となく気になって
アパートの窓の方を見ると
そこに、オカッパ頭が見えた。
小さな影が、窓のところに浮かんでいる。
〘眠れなくて、外でも見ているのかな
目の前お墓なのに怖くないのかしら〙
そのときは、ただそれくらいに思った。
部屋の明かりは、たぶん豆電球で
オレンジ色のぼんやりした光の中に
オカッパ頭の影が浮かんでいる。
でも――
すぐに違和感に気づいた。
それは、後頭部だった
しかも…
逆さまだった。
まるで天井に張りついて
窓の外を覗き込んでいるみたいに。
車はそのまま進み
アパートはすぐに視界から消えた。
あれは何だったんだろう
人だったのか
それとも――別の何かだったのか。
ただ、家に帰ってから
ふと思い出して背筋が寒くなった。
あのとき私は、確かに
視線を感じて窓を見た。
でも、見えたのは
逆さまの後頭部だった…




