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フサギサマ  作者: kazuha
山縣健次郎の手記1
4/14

これからの話し

 ここまでが、俺が覚えてるあの日の出来事だ。

 20年。この話を書き留めるために隠れて情報を集めた年月だ。

 情報をまとめる前にこの20年で何が起こったのか軽くまとめよう。


 まず、川に落ちた俺は呆気なく村人に捕まり連れ戻された。彼の自己犠牲も水の泡だった。

 しかし俺はそのまま日常に戻された。目が覚めた朝では何もかも夢だと思いこんで重い足を学校に向けた。

 そこには彼の存在はなかった。物理的なものはもちろん、精神的にも……。そう、誰の記憶にも彼の存在はなかった。無いものにされていた。

 その事が理解できなかった俺は適応障害を起こし不登校になった。行けるわけが無い。そんなこと、できるわけがなった。

 そのオレの姿を見て気に病んだ母が、不登校になった3年後に自殺した。

 そんな俺を精神的に養える訳のない父は直ぐに俺を手放し、俺は村長の家に居候することになった。

 自室に籠ってばかりの俺に1番優しくしてくれたのが意外にも裕二さんだった。食事の世話、遅れた勉学の補助、精神的なフォロー、全てをこなした。

 そこから5年。村長が死んだ。遺書に記された次の村長には俺の名前が書かれていた。それはやはり意外な人間には違いなかった。

 そこから俺は村長として執務をする。最初はその情報量と仕事量にてんやわんわしていたが、慣れてしまえばなんて事ない。1日しっかりやればすぐに終わった。

 余裕のある時に、フサギサマの情報を集めようとした。

 しかし、それに関しては誰も教えてくれなかった。村長の特権を使ってもなお。

 そんなある日、嫁を娶った。それはお見合いで下界の人だった。所謂、政略結婚である。特段意中の人間がいた訳でもない。裕二さんの顔を立ててその提案を飲んだ。

 それでも俺はフサギサマの情報を得るためにこの村の資料を片っ端から調べた。

 そこで思い出したのだ。この村には書庫がある。そう、存在しないはずの書庫がどこかにあると彼は言ったのだ。

 存在しないと明記したのには理由がある。この村のある程度の家の機能は村長権限で把握出来ている。一般家庭には本棚程度。真っ先に思いついた学校の図書館にはあの時言っていた夢占いの本はなかった。我が家にある書類庫にもそんなものは存在しない。

 あの悪ガキはどこに忍び込んだのだろうか。

 ……そういえば、旧田中井宅にはまだ足を踏み入れていなかった。

 とある日に上の森でボヤ騒ぎがあったのだ。神主さんひとりでは対処できないらしく、裕二さんが特別に鳥居をくぐり消火にあたった。

 幸い大火事には繋がらなかったが、そこには2体の焼死体がいた。

 警察の見解と村の行方不明情報を照らし合わせて、それは田中井夫婦であることが判明した。理由は不明。挫傷などなく化学的検出もなにもなかったため事件性なしとされ、それはフサギサマの呪いとされた資料を読んだことを思い出した。

 それ以降あの家は空き家になっていた。ある程度片付けられたという話だが、行ってみる必要はあるだろう。

 夜があけたら行ってみよう。


 そう思ったら過去の記憶を書き留めたくなったのだ。

 こんな内容誰かに見られたら多分俺は粛清されるだろう。殺されるならまだ生易しいのかもな。

 もし、俺がなにかの理由で居なくなり、この手記を読んだ君に俺の意思を託そう。


 この村はおかしい。それは以下の理由だ。

 伝統であるフサギサマの情報は何一つない。

 不思議な死体が定期的に上がる。自分の母もそうだが、その死の理由がつかない。

 あの時にあった流行病はあの日以降消えた。そしてまたゆっくりと始まった。それに関して次の夏の祭りを特別なフサギ祭にしようという神主の指示があった。

 そして、いままだ田中井一郎が生きている。その記録が今日出てきた。それもこの村で。


 俺はこの謎を解き明かす必要がある。あの祭りを経験したものとして。そして、彼への懺悔を行いたい。いま彼はどこで何をしているのだろうか。

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