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六。

「ここが普段から集まって会議などを行う場所です。王も、民も…ここに立って言葉を交え、願いを叶える為に争ったりします」

「ほぇー」

 ただただ広い、音楽のライブとかも出来そうなくらい高くて遠いところからそんな説明をしてくれた。

 ここに多くの思い出が残っているみたいで、楽しさが直接伝わってくる。


 ここの人もまた、自分の好きを語る時が一番楽しいのだろうか。

 そういうところは世界がどう変わったって同じみたいだ。


「今は父上の状態が良くないので、私が代わりに皆と会話を交えています」

「痛いの?お父さん」

 さっきも亡くなればとか言ってたし。


「数か月前に、魔王の手下に狙われて…」

 あら。

「それを機にもう仕事なんかやりたくないって部屋に引きこもっちゃいました」

 あらぁ。

 予想外の展開。


「健康に問題とかは…?」

「ありませんね。仕事に励んでいた時より元気なのかも」

 いいのか王様。こんな年の娘もいるのに部屋に引きこもっちゃって。

 王様ならこの子以外にもたくさん子供作ってると思うけど、大丈夫なのかな。

 長女って言ってたし他の子はまだ未成年ってことじゃん。

 まぁ、ぱっと見大丈夫そうだし。いいのか。


「それより勇者様、これを」

 リルが空に向かって手を伸ばしてから、指をぎゅっと握りしめた。

「え」

 何もなかったその手には、いつの間にか盃が握られていた。


 白ワインに似た飲み物で満たされている、盃。

 どうして急に。

 城がぱっと現れたのと同じやつなのか。


「飲んでください」

「飲むの?」

「はい。どうぞ」

 盃を差し出して、飲めって。

 この国には何も言わず客に酒を飲ませるの文化でもあるのか。


「んっ…」

 匂いも、味も、普通の白ワインだ。

 少し甘めの、魚とよく合うワイン。

 これはいい酒みたいだ。王様が飲むやつだったりするのだろうか。


「飲んだ」

「見ましたよ」

「え、それだけ?」

「はい。では勇者様の部屋に案内します」

 なんで飲ませたの。


「このお酒に特別な意味とかあるの?」

「特別な意味はあります」

 あるんだ。


 そんなもんがあったら飲ませる前にそれを教えて欲しいんだよな。

「どういう意味なの?」

「結婚みたいな意味です」

「?」

 どゆこと。

 私、知らないうちに結婚しちゃったってこと?


「結婚ってあれでしょ?好きな人同士が一生を共にしますって約束する儀式の事」

「はい」

「私、リルと結婚したの?」

「そうなりますね」

 うーん、これは嘘だ。

 よかった。


 それにしてもこの子、さっきからだんだん私に対する尊敬の心とかが薄くなってるな。

「変なこと言わないで」

「ごめんなさい。勇者様の反応が可愛くて」

「私をなんだと思うの」

「魔王から世界を救う勇者様だと思います」

「全然そんなふうに思ってないじゃん」

「あら、わかるんですね」

 私のことペットみたいに思ってるんじゃない?


 勇者様として呼ばれたのに。

「実はここ、王が騎士の就任式を行う時も使う場所なので。私からの盃を受けた勇者様はこれから騎士様にもなれたって事です」

「見た人が誰もいないのに?」

「大丈夫です。私がそうすると決めたので」

 なんてわがままなお姫様。もうすぐ王様になれるからこそ出来るわがままなのだろう。

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