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十九。

 怪しい者を追っておおよそ二時間、森の大きさとあの人達の体力に感心した。

 私疲れた。ベッド入って寝たい。

 こっそり動かなきゃいけないから余計に疲れた。


「ぅ…」

 体も泥まみれになったよ。

 今日が今までで一番つらい仕事かも。

 もう少しだけ我慢しよ。『みんな』のところについたから。


 森を抜け出してすぐ、小さな城のように見えるところが現れた。

 人より高く、石で作られた壁が立ってて、門みたいなところには警備みたいな人達が立っている。


 見慣れた物でも門を通る為には何かが必要みたいで、五人組が門の中に入るまで十分以上かかった。じゃあ私は通れないだろう。


 じゃあどうしよう。

 ここまで来て、城っぽいのがいたって事で終わらすのは嫌だな。

 中に入ってあの人達の仲間を見てみたいな。

 森に金品を置いて行った理由が知りたいな。

 裏切者って言葉の意味が知りたいな。


 あの壁そんなに高くないから上手くやれば飛び越えるんじゃないかな。

 でも飛び超えたらすぐ見つかれちゃうだろう。

 こっそり上って行くのはどうかな。頑張れば行けそうだけど。


 あー無理だ。体が重くて上れない。

 疲れた事もあって、今すぐ壁を超えるのは無理っぽい。

 こういう時に誰かが手伝ってくれないかな。

 前に見た神様とかがぱっと出て来て、魔法とかで中に入れてくれないかな。出来ればばれないように中に入りたい。


 そんな願いを込めて、その場に座り込む。

 まずは休憩。


 近くにあった大きな石の上に座って、尻尾についた泥を落とす。

 尻尾がこんなに汚れたのはいつぶりなんだろう。

 全く大変な仕事だ。髪の毛もばさばさになってる。


「ん」

 どこからか不思議な風が吹いた。

 炎の匂いを纏った、乾いた風。


 この前に見た神様が頭の中に思い浮かぶのと同時に、匂いがした。

 神様の匂い。

「……来た」

「なんでわかるのですか」

「うふふ、なんでだろうね」


 隣を向くと、先日姿を現した神様が立っていた。

 飾りが多い服を纏い、角が生えた美形の人。


 風に飾りが揺られ、音がする。


「座る?」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 近付くと匂いが一層強くなる。


 今日は隠れたりしなかったね。

 がたがたもしない。


「ヤノさんだったよね、こんにちは」

「はい」

「今日はどの御用で?」

「紬様が助けてって願ったので来ましたよ。うち、神様なので」


 神様の願いを叶える神様なのかな、ヤノさんって。

 あっちにも昔はこういう神いたね。


「私もだよ」

「にしては相当人間っぽく見えますが」

「体が人間だからね」

「どういう意味ですか」


 緊張が解れたのか、声が崩れた。

 前は無理矢理引っ張り出したせいで怯えただけで、元々今みたいな雰囲気の子なんじゃないかな。


「ちょっと前に人の子で生まれてみたって事」

「なぜそのような事を」

「暇だったからね」


 これ聞いたらみんな同じ反応するんだから。

 なんで神様は人間になるのを変な事って思うんだろう。


「とにかく、手伝ってあげましょう。あなた勇者なので」

「あ、そうだった」


 そういえば勇者だった私。

 魔王倒してって理由で呼ばれたのに、なんで私城で住んでるのかな。


「勇者は神様の力を背負わなくちゃ」

「えー、なんか貰えるの?」

「あげますよ。なにが欲しい?」


 これが神様の加護って事なのかな。

 こういうのって異世界来る前に貰うんじゃないの?


「じゃあ私魔法使いたい!」

「紬様って神様なんでしょう?なら使えるんじゃないですか」

「そうなの?」

「奇跡を起こす時の感覚て、世界に命令すれば使えますよ。神様なら」

「説明が雑だな」


 そんな簡単に出来るもんなのかな魔法って。

 神様は特別なのかな。

 まぁやってみればわかるよね。


「わぁ」

「ほら、使えますじゃん」

「ほいっ」

「顔に水を投げないでください」


 ヤノの顔に投げた水滴が、すぐ燃えてしまった。

 神様ってすごいなやっぱり。


「じゃあなに貰えばいいの?」

「頑丈な体はどうですか?」

「神様に戻ったら頑丈になるよ」

「じゃあ武器とか」

「お?」


 神様が直々与えた、勇者の武器。

 いいなそれ。めっちゃ欲しい。


「どんな武器がお望みですか?」

「んー…決めて」

「では、好きに作ってあげますよ」


 好きに作るってなんだか不安だな。

 まぁいいか。

 神様の品ならどんなもんでも使えるだろう。


「おぉ」

 ヤノが立ち上がり、自分の背丈くらいの炎を呼び出した。

 炎の中から武器の形が見える。


 作るって言ったの、本当だったんだ。

 他の神様だったら適当に人から貰った物に自分の力を込めるだけなのに。私も誰かに物をあげる時はそうだったし。

 やっぱ魔法がある世界は違うんだね。


 焚火を眺めるような気持ちで、ヤノが作った火を眺めて数秒。

「出来ました。剣ですよ」

 突然と炎が消えた。

 代わりに、その場に大きな剣が一つ刺さっている。


 その剣はとても長くて、私とほぼ同じ高さを持っていた。

 こんなもん使えないじゃないか。

「長いな」

「紬様の戦う姿を想像しながら作りました」

「あら、ありがとー」


 でも私の為に作ったって言ったんだから、いらないって言うのあれだし。

 まぁ神様の品物だから、性能は確かだろう。

 使いながら慣れるしかないか。


「使ってみますか?」

「そうしよっかな」

「では、お手合わせの相手を呼びますので。少々お待ちください」


 ヤノが消えた。知り合いでも呼んで来るのかな。

 どんな人を呼んで来るのかな。こんな長い剣なんだから人じゃないのを呼んで来るのかも知れない。

 知り合いの神様が出るのかも知れない。

 誰が来てもすぐ始めるように、ちょっと体を動かしてみるか。


 真っ直ぐに刺さった剣を引き抜き、軽く振ってみる。

「うわっ」

 見た目と違って、切っ先が相当重い。少しでも気を抜いたら振り回されそうだ。

 私が戦う姿はこんなに危うく見えたのか。

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