同姓同盟
ある日、私は菓子折を持ってとある人物を訪ねに·····というより謝罪に来ていた。
いや、私は悪くない·····訳じゃないんだけど、つい先日ソフィ・シュテインを名乗る人物から要約すると『お前のせいで迷惑してる』との手紙が届いたからだ。
普通なら嫌がらせの類だと思ったんだけど、心当たりしか無かったからこうして出向いてるって訳だ。
まぁ、罠とかの可能性があるから分身を送ってるけどね。
「ええと····· 住所的にはここで合ってるはず」
そんで手紙の住所によると、日本の九州は熊本にあたる土地にあるヴェアラ町のここのはずなんだけど·····
「うーん、普通·····よりは上の一般人の家って感じかなぁ、町外れだから大きい気がするけど」
うん、なんかコメントしずらい普通の民家だった。
とりあえず魔力の気配からして中に人が居るのはわかったし、手紙に書かれた文字から伝わる魔力と中にいる人の魔力が似てるからここで間違いないだろう。
·····まぁ、割と怒気混じりで分かりにくかったから確証はないけどね。
うん、相当怒ってたっぽいし。
だから挨拶するのめっちゃ怖いんだけど、ここまで来たから私は覚悟を決めて挨拶することにした。
「はぁ····· 覚悟しないとなぁ、よし!どうせ死んでも生き返るしやるか!!」
コンコンッ
「ノックしてもしもぉーし?誰かいますかー?居なかったら返事してくださーい」
『今行きます、お待ちください』
「うん居ないね、帰ろ」
返事があったからどうやら誰もいないらしい。
というわけで帰る事に
ガチャッ
「お待たせしました、すみません仕事中で汚れ·····」
「えっ居たの!?って、うわぁっ!!?!?」
「え?うわぁぁッ!!?!?!?」
「「血塗れの賢者姫!!?」」
私の視線の先には、文字通り全身血まみれになった1人の少女、たぶんもう1人のソフィ・シュテイン居た。
そして暫定ソフィ・シュテインのから見ると、2つ名としての『血まみれのソフィ』が居た。
それに両者ともに驚き全く同じ反応をしたのだった。
「·····あっ、ソフィ・シュテインッ!!許さないわ!!死になさいっ!!」
ズガスッ!
「ぱっピッぷッぺポェッ!!?!?」
私は脳天にソフィ・シュテインと確定した少女のナタを食らって珍妙な断末魔を上げた。
◇
その後、頭に鉈が刺さったままで血塗れだけどソフィ・シュテインと話を始めていた。
「·····あの、私屠殺をやってるのでわかるのですが、何故それで死なないんです?」
「へぇ、屠殺?じゃなくて、私この程度じゃ死なないんで、あと丁度脳みその隙間に刺さってますし」
ちなみに私は右脳と左脳を独立して動かせるから、ちょうど真ん中で切られたら平気なのよね。
まぁどこ切られても平気だけどさ。
「いででっ!ふんぬっ!!」
ズボッ
「ふぅ、おっとナタ返しますね」
「え、えぇ····· 助かるわ、大切な仕事道具だし」
大切な仕事道具でSランク冒険者の頭カチ割らないで?
って言いたかったけど今度は首切られそうだから黙っておくことにした。
「それで、えーっと····· 私何しに来たんだっけ」
「·····」
「あーまってまって、流石の私でも脳みそ切られたらちょっと記憶飛んじゃうのよ、いま再生中だから待って」
血塗れの賢者姫の通り血まみれになった私は、魔法で頭の傷を治しながら同時にすっ飛んだ記憶も復元した。
そんで思い出した、謝りに来たんだったわ。
「あっこれ菓子折です····· すみません私の2つ名がご迷惑をお掛けして·····」
「·····まぁいいわ、謝罪の手紙が来る事くらいを想定してたから本人が来るなんて私も予想外よ」
「手紙出すより直接来る方が早いので」
ちなみに手紙を出すと日本で言う山梨〜熊本間で通常便で数週間〜1ヶ月前後掛かる。
だけど私は転移魔法が気軽に使えるし、高速移動の手段も沢山あるから送り返すより自分で行く方が早いって訳ね。
「·····ところで、なんで私に間違われるんですか?私と結構見た目違いますし、名前もちょっと違いますよね?」
「そうね、私も貴女の事始めてみたけど結構違うわ」
そんで本題なんだけど、このもう1人の『ソフィ・シュテイン』さんは実は正確には名前はちょっと違う。
この物語は私が異世界語····· 『統一人類語』から日本語に翻訳してて、2人の名前は日本語表記では同じなんだけどこっちの世界だと発音とか文字が若干違う。
2人の発音を英語に直すと私が『Sophy Stein』で、もう1人の方は『Sophie Steyn』みたいな違いがある。
発音的にはソフィェ・ステウィンって感じかな?
ただ普通に喋るとたしかにソフィ・シュテインって聞こえるし似てるのよね。
「·····まぁ、容姿うんぬんというより、ソレのせいだと思いますけどね」
「そうね·····」
じゃあなんで彼女が『血塗れの賢者姫』と間違われてるかというと、その見た目のせいだ。
うん、エプロンがめちゃくちゃ血塗れだし血まみれのナタ持ってるし。
「今日の夕飯の鶏を〆てただけよ、普段はもっと血塗れになるわ」
「何となくわかるけど、お仕事は何を?」
「実家の牧場で屠殺と食肉加工をしてるわ、あとギルドの魔物解体の手伝いも」
「なるほど····· だから『血塗れ』と·····」
「不名誉だけれど、そうね·····」
そんで何故私と間違われるか大体分かったところで、判明した情報を元にちょいと現状を整理することにした。
彼女の名はソフィ・シュテイン。
見た目は私と違い金髪で、特別美人という訳でもなく容姿も特筆すべき所のない一般人という感じだ。
家柄は苗字があるのから分かる通りそこそこ良くて、貴族や騎士団更には王族にまで御用達の名馬を育てていて、他にも牛や豚などを出荷する牧場を経営してる家系らしい。
本家は阿蘇カルデラと同じ火山の中にあるらしいけど、彼女は牧場には携わらないで別の仕事をしている。
それが屠殺や食肉の加工だ。
元々そういう仕事をしてる家に生まれ育った事もあり、ノウハウを活かして町外れの食肉加工場やギルドの魔物解体場で働いてた。
·····で、ギルドで解体をしていて血で汚れながら時折冒険者の対応をしていると『ギルドに出入りする血まみれのソフィ・シュテイン』が居ると噂になり始めた。
そう、この国最強の冒険者『血塗れの賢者姫』と偶然の一致をしてしまったという訳だ。
で、ここまではまだいい。
まぁ私もあの2つ名は好きじゃないから文句言いたいんだけど、問題は2つ名より『ソフィ・シュテイン』自身の方だ。
私は昔っからトラブルを起こしまくる体質だし、噂が尾ヒレも背鰭も付けて泳ぎ回っていた。
月を爆撃してクレーターを作ったとか、山脈に穴をブチ抜いてトンネルを作ったとか、戦争を仕掛けてきた隣国を単身で壊滅させただとか·····
で、武勇伝はまだいいんだけど
『大規模依頼で単身で飛び出し、他の人が到着した頃には血塗れで魔物の山を作ってた』
やら
『気に入らない貴族や犯罪者を笑顔で殴り続けて、死にかけても回復魔法で治して殴り続けていた』
とか
『魔動車で通ったあとは轢き潰された魔物のひき肉まみれになる』
だとか·····
うん、全部尾ヒレも無い事実なんだけど、風評被害が酷い噂が私には沢山ある。
そんなウワサを真に受けた人が勘違いして、こっちのソフィ・シュテインが被害を被ってるという訳だ。
「·····という訳なのは理解しました、本当に申し訳ないです」
「貴女は悪くないわ、·····いえ少し悪いけれど同姓同名なら仕方ない事よ」
「ありがとうございます、そう言って貰えると助かります」
仕方ない事と割り切って許してくれたのは助かった。
·····いや、出会い頭に頭も割り切ってきたけど、別に致命傷くらいだしいいや。
「あっそうだ」
「どうかしたの?」
「私に連絡できる魔導具を渡しておくので、もし厄介事に····· 私関係で何かトラブルが起きたらこれを使って呼び出してください、すぐ駆けつけるので」
「·····なるほど、貴女なりのお詫びという事ね」
「ですです、·····ホントに申し訳ないです、今後は大人しく普通に活動するよう努力はしてみますので」
「えぇ、助かるわ」
「それでは、またどこかで····· いや今回の件みたいなトラブルでは会いたくないですけど、今度はお肉でも買いに来るのでよろしくです」
「わかったわ、また会いましょう?歓迎するわ」
「·····歓迎のナタはやめてくださいね?」
「·····ごめんなさい」
「んふふ、別に構わないですよ?そんじゃまた〜」
今更何とかしようとした所で無駄な気もするけど、私はちょっと反省して大人しく活動する事にしたのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
コメント
「·····あれ、この魔導具、もしかしてSランク冒険者を直に呼び出せる魔導具なのかしら?と、とんでもない物を貰ってしまったわね」
名前:ソフィ・シュテイン
コメント
「え?今更?·····というかあの人、私が油断してたとはいえSランク冒険者の頭をカチ割れる実力があるあたり、めちゃくちゃ強いんじゃ?」




