私の前前前世は?
「ねぇねぇねぇねぇねぇお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんっ!!」
「はいはいはいはいはい、なになになに?」
ある日の昼下がり、ディメンションルームのソファでくつろいでいると妹のイデアが部屋に飛び込んできた。
「最近占いにハマってるんだけど!お姉ちゃんも占わせてっ!」
「え、まぁいいけど·····」
「やった!じゃあいまから準備するね!!」
そう言うと、イデアは持ってきたポーチを漁り始め、中からタロットみたいなカードを取り出した。
「へぇ、水晶玉で占うとかじゃないんだ」
「·····お姉ちゃんさ、下手に水晶玉なんて出したら『質が悪い』とか『どこ産の水晶玉?』とか『偽物だよ、それ』って茶々入れてくるじゃん」
「いや、·····言うわ」
「でしょ?ほら座って座って、占うから!」
「最初から座ってるんだけど·····まぁいいや」
なんか非常に不服だけど、私はイデアの指示に従ってディメンションルームのリビングのソファに腰かけた。
「そんじゃ始めるよ〜、ふんぬぬぬ·····」
そう言うとイデアはテーブルにぶちまけたカードをわしゃわしゃし始め、集中してなんかし始めた。
ちなみに魔力的な云々は全く見えないから、たぶんあっち(日本)由来の占いだろう。
「·····ところでなんの占い?」
「前世占い!みんなの前世を見て回ってるんだ、ちなみに私は亡国のお姫様だったんだ!生きてる間は栄華を誇るすんごいお姫様だったんだけどね、それはもう悲劇的な最後を迎えたんだ、でっ!タキくんはね·····」
「イデア」
「なんとビックリ!イケメン舞台俳優だったんだって!だからあんなカッコよく見えるんだなぁって納得しちゃった!!」
「イデアッ!!!」
「ひゃっ!?なに?お姉ちゃんどうかしたの?私なんか琴線に触れた?」
「あのさ、·····『琴線に触れる』の使い方間違ってるのこれ以上ツッコミ入れないけど、さっきから前世って言ってるけどさ?」
「どうしたの?」
「·····え、マジで気がついてない?」
「うん、どうしたの?」
私は本気でイデアの頭を心配し始めた。
一応学年一位の頭の良さを誇るのは知ってるけど、歳が離れてても私の妹というだけあってこの子にもポンコツな所があるのよね。
「·····千葉県市川市出身で東京のIT系ブラック企業に勤めてたけど、帰り道にトラックに撥ねられて下着屋にホールインワンして異世界転移する前の校長先生の居る更衣室に偶然入って股間蹴られて死んだアホだーれだ」
「え?そんなの前世のお姉ちゃ····· ん····· あっ!」
やっと気がついたか。
判断が遅い!
「(눈_눈)」
「あっ、えっと〜····· えへへ、そうだったお姉ちゃん転生してるから前世ハッキリわかるんだった」
「というか私神様でそっち系の事担当してるから前世とか前前前世ももっと前も把握してるんだけど」
「チッ、つまんないの·····」
「お?なに?反抗期?」
「そんなんじゃないけど、今ここでキレてもいいんだよ?お姉ちゃん?」
·····そもそも私、全員の前世というか浄化される前の魂の所有者も一応把握してるから、イデアの想い人のタキス君の前世も把握してるんだけどなぁ。
言わぬが花って知ってるから言うつもりないけどね。
「·····ちぇ、やっぱお姉ちゃんのこと占ったらロクでも無いことになるって思ってた、はぁ····· マリアでも占ってこよっと、どうせお姉ちゃんと同じキノコだろうけど」
「イデア?私の自業自得とはいえ精神が図太すぎて柱みたいになってる私でも普通に傷付く事もあるからね?というか私の前世キノコじゃないし」
私に指摘されたイデアは、つまらなそうにタロット?を片付けはじめ·····
「あっ」
「い?」
「うーん·····」
と言った後、イデアの動きが止まった。
「エビ」
「のじゃ」
「いやそっちのエビじゃなくて」
\呼び捨てにするなのじゃ!!!/
「あっエビおねーちゃんごめーんっ!!えーっと····· なんか、『エビとかタニシとかカエルオタマジャクシその他数千匹』って結果出たんだけど」
「ッは?なにその、すんごい具体的で局所的な結果·····」
と言った所で、私の脳裏にあることが過ぎった。
「·····イデア」
「なに?不満言われてもなんか出てたんだから仕方ないじゃん」
「そうじゃなくて····· たぶん当たってるのよそれ」
「え?」
言ってなかった、というより言う気が無かったんだけど、実は私の前世の前世の前世、つまり3回前の前世もハッキリとわかっている。
というか暇な時にホモ・サピエンスが誕生した時まで前世を遡って見た事あるから全部把握してるんだけどね。
「藤石賢人の頃の私の前前世さ·····」
ただ私は一瞬、こんなひでぇのを子供に言っていいかちょっと迷ったけど言うことにした。
何せ沢山ある前世の中でも、割と上位に入る酷い人生だったのだから。
「·····日本のとある地方の集落の村娘だったんだけどさ、ある時大干ばつが起きて村のため池が干上がりかけてその時生け贄にされたのよ」
「で、具体的に言うと半分首なし村娘にされてため池に投げ込まれたんだけど、そのあと干ばつは収まらないわ投げ込まれた私が恨みを持ちながら水中生物、エビとか水生昆虫に食われながら腐敗して、結局ため池が腐敗して汚染されて飲んだ住人たちが死んで集落が全滅ってオチだったのよ」
だから、イデアの占いはあながち間違ってないんだけど、うん、なんというか·····
うん、普通の前世占いじゃこんな結果出るわけないよね、夢もクソも無いし。
「う、うわぁ····· 夢が無さすぎる····· もっとこう、なんかないの、実はお姫様的な」
「無い、あの時代にそんなどんでん返し的なの無い」
「ええぇ·····」
「·····不満そうだからいい感じで〆るけど、私の····· 前前前前前前前世くらいはたしか古代エジプトのファラオに仕える最側近の高官だったはずだよ、今はミイラになってエジプトの博物館に陳列されてるね、この前会いに行ったけど元気そうだったわ」
まぁミイラだからカッサカサだけどね!おまけに死んでるしと、私は余計な事を付け足した。
「·····つまんないの」
「いやめちゃくちゃロマンあるでしょ、ミイラだよミイラ、盗掘されないで副葬品も沢山見つかった価値ある発見だよ?浪漫だよねぇ、エジプトの発掘品って」
「もーお姉ちゃん!!私はさ!もっとこう、お姫様とか王子様ってかんじのを求めてて、こんなエビとかカニとかファラオは求めてないのっー!!」
「め、めんどくせー·····」
「もーいいっ!お姉ちゃんそこに正座!いい前世が出るまで占い続ける!!!」
「い、いや、そう言われても私の前世、藤石賢人で確定してるから·····」
まって?そもそもいい前世が出るまで占うって、それもう占いっていうかいい設定出るまで引くリセマラガチャじゃない?
「四の五の言わない!!!変な死に方したアホなんて無視して新しい前世作るよ!!!」
「あたらしいぜんせ」
私はなんかもう面倒になったから、諦めていい前世が出るまでイデアに付き合って上げることにしたのだった。
私っていいお姉ちゃんでしょ?
名前:ソフィ・シュテイン
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「で?マンモスに乗りながらアステカ文明とモンゴル帝国に宣戦布告して世界征服を企てた傾国のエジプトの女神って何?」
名前:イデア・シュテイン
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「おっかしいなぁ、なんでこんな結果でてきたんだろ····· も、もう1回!もう1回だけ!!·····ダメ?」




