体力テストに参加させられて
ある日、私はフシ町の治療院主催のイベントに参加していた。
「本日は当院主催の健康体力テストにお集まり頂きありがとうございます、ではこれから本日のスケジュールをお伝えしますので聞いていてください!」
「なーんで私、これ参加させられてるんだ·····」
「ワシもじゃ」
それはフシ町の治療院が主催している健康診断の体力テストだ。
ただ、なんで私とエビちゃんが参加させられてるかがイマイチよく分からない。
だって私はSランク冒険者(世界ランク9位)でエビちゃんはAランクだけど実質Sランクくらいの実力はある魔王だし。
で、その事はフシ町人には周知の事実で皆知ってるから、体力テストの結果なんて火を見るより明らかなのに参加させられていた。
「皆さんあまり体力テストにご興味が無いようですが、とても重要なため今後も参加して頂けるとありがたいです!」
「·····ん?でもなんか冒険者とかが大半のような気がするんだけど」
「本当に来て欲しいのはご老人じゃろうな····· もしや」
「そして本日はなんと、Sランク冒険者と準Sランク冒険者のお2人も参加されます!滅多に無い世界最高峰の実力を見れるチャンスですので最後までご参加下さいね!」
どうやら私たちが参加させられたのは、単なる客集めのためだったようだ。
で、本当は体力テストと健康診断をしたい老人を集めたかったけど、体力自慢の冒険者とか傭兵が大量に集まってしまったようだ。
まぁ自業自得じゃないかな、私たちを利用しようとしたんだし。
ただ、人が多いのに釣られて目的の世代の人も沢山来てるから結果オーライなのかもしれないのがちょっと悔しかった。
◇
で、私たちは体力テストの結果は何となくわかるから、それ以外でちょっとだけ遊んでみることにした。
それは『私たち以外で誰が1番いい結果を残せるか』を予想する遊びだ。
「エビちゃんは誰がいい結果残すと思う?」
「難しいのぅ····· やはり無難じゃがフシ町とマグウェル街を拠点にしておる····· Aランク冒険者のユンユンホッホじゃったか、あやつかのぅ」
「うわ出た、あの実力はあるのに名前が難しくて誰にも覚えられてないあの人、なんだっけ名前····· ユックリシテイッテネだっけ」
\俺の名前はユングフラウヨッホだ!!何回言えば分かるんだ!/
あっ本人からツッコミ入った。
そうそう、Aランク冒険者のユングフラウヨッホさんは危険な魔物の多いフシ盆地で普通に討伐を出来るくらいの実力者だ。
ちなみに金髪碧眼のいかにもって感じのイケメンね。
で、彼らはパーティ全員で中級ドラゴンを倒した事と上位の地龍型ドラゴンを撃退できるくらい強かったはず。
これは確かに無難だけどいい感じの人だ。
「私は····· おっ、アレにしよ」
「どれじゃ?」
「弟子のマリナちゃんとソニア」
「2人は卑怯じゃろ」
「まぁまぁ、2人とも私が面倒見てるんだから気になるじゃん?」
で、私が選んだのはフシ町を統治する貴族で私の母方の祖父母であるシュテイン侯爵家····· の暗部に所属していて、元は孤児で超特異体質のソニアと、言わずもがなの弟子のマリナちゃんの2人だ。
2人とも実力はかなりのモノで、ソニアは今年で·····18くらい?で、マリナちゃんは12歳とかなり若いけれど相当に強い。
暗部所属のソニアに関してはユングフラウヨッホさんと戦っていい戦いが出来るくらいだし、暗殺をやらせたら右に出る者は居ない程だ。
で、そのソニアの能力は私たちが魔無しと呼んでいる『ありとあらゆる魔法や魔力を寄せ付けず弾き返す力』がある。
これが厄介で、少しでも魔力を含む物質も弾いてしまうため基本的に全ての物に魔力の宿るこの世界の物質は彼女に触れられないのだ。
·····まぁ、魔無しはそれ故に短命で彼女も死にかけてたんだけど、私が手を加えてオンオフや指向性を切り替えられるようにしてあるんだけど。
で、彼女は素の力もかなりあるから、期待して彼女を候補に選んだのだ。
「ちなみにマリナちゃんは私が強制参加させた」
「じゃろうな」
「はぁ、せっかく休みなのに·····」
「いいじゃん、今度異世界のキノコ狩りに案内してあげるからさ?」
「まぁいいけど」
マリナちゃんは隣町に住んでる学生だけど、弟子の成長を見ておきたかったから参加させた。
ご褒美に日本のキノコ狩り連れて行ってあげると言ったらツンデレしながら渋々来てくれた良い子だ。
ちなみに弟子入りする前まではキノコ嫌いだったけど、色々やらせてたらいつの間にか克服して大好物がキノコになっている。
嬉しいよ私は、キノコ派が増えてくれて。
「んで意気込みは?」
「いや私、体力とかパワーは無いんだけど····· 技で何とかするタイプだし」
んでマリナちゃんは実は体力はそこまででもない、まぁ常人と比べると数十倍はあるんだけど筋力は平均より上くらいだ。
ただし技量がかなり高く、私が主にパワー型の神拳使いに対し彼女は独学の受け流し特化の神拳使いだ。
だから今回の体力測定ではあまり期待はできないだろう。
「さて、結果はどうなるんだろうねぇ」
「うむ、楽しみじゃのぅ」
いやお前らがブッチギリの1位と2位だろとユングフラウヨッホは思った。
ただやらない訳にはいかないから3位狙いを目指し複雑な心境で彼はこの体力テストに挑む事にしたのだった。
◇
という訳で、早速体力テストが始まって私たちは最初のテストに参加していた。
「握力テストかぁ·····」
「うむ·····」
んでまずは握力測定みたいなのだけれど、私たちの前に置かれた握力計を見て私たちは困惑していた。
「あの」
「普通のを使ったら壊すでしょう?それでお願いします」
「はぁい·····」
「じゃろうな」
それはただの鉄塊だった。
·····剣というにはあまりにも~っていう方じゃなくて、文字通りの鉄塊が置かれていた。
え、鉄の塊を握りつぶせと?
いやまぁ、普通の人間用のを使ったら間違いなく圧壊させちゃうんだけどさ、しかもこの世界の握力系は大雑把だけど最大1000kgまで計れる物もあるんだけどそれでも足りないし·····
そして隣のブースでは、その最大1000kgまで計測可能な握力計に力自慢の野郎どもが集まり握力を測定していた。
「まずは俺から行くぜ、ふんっ!!!!」
『『おおおおおっ!!!?』』
「ユングフラウヨッホさんの握力は····· 712kg!流石Aランク冒険者ですね」
「いや、まぁ鍛えてるからな」
「おー、凄いね」
「ゴリラより握力あるのぅ」
ちなみにゴリラの握力は500kgと言われているから、それを上回るのは流石は異世界人といったところだ。
んで続いて屈強な冒険者や鉱山夫たちが握力を測定していくが、流石にユングフラウヨッホさんを超える握力は出なかったものの、500kg越えの人はちらほら居た。
その平均は300kgくらいで、地球の人間の最大握力が190kgくらいと考えるとぶっ飛んだ記録だ。
「えーっと····· よいしょ!!」
「ソニアさんの記録は····· 351kgですね、では次のブースへ行ってください」
「あーちくしょー、最高記録でねぇ·····」
「次は私ね、おらぁっ!!」
「マリナさんの記録は237kgです、·····その年齢でこの数値ですか、凄いですね」
「とーぜんよ、師匠に鍛えてもらってるんだから!」
「流石にユン(略 越えは出ないかぁ」
「ユン(略 、あやつ一応じゃがAランクじゃからのぅ、安牌を選び過ぎたのじゃ」
ちなみに女性の握力の世界記録は87kgだ。
その数倍の記録を細く見えるソニアが出せるのはかなり異常と言えるが、この世界では常識の範疇だ。
この世界の人間は鍛え方次第で魔力を込めれば筋力を増幅できるからこそできる芸当だ。
「さてと、私たちもやりますか」
「うむ、さてどうなるじゃろうか」
んで次は私たちの番だ。
·····まぁ、もはや握力計じゃないから数値では見れないだろうけどね。
「ワシから行くぞ、むんっ!」
ゴバギャッ!!
『『うおおおおおおおおおおっ!!!?!?!?』』
「わーお、鳴っちゃいけない音が鉄塊から鳴ってるぅ」
「ふむ、圧壊して割れたのぅ」
そしてエビちゃんが鉄塊を握り締めた数秒後、鉄塊が割れた。
たしか熱していない金属に高い圧力をかけると延びずに破断するはずだから、相当な力が込められているのが容易く想像できた。
現に驚いた顔をしているユン(略 さんが同じような鉄塊を握ってみているが、うんともすんとも言わず逆に手が痛くなったのかユン(略 さんが唸っていた。
推定握力は数万トンといったとこだろう。
ちなみにエビちゃんは硬度も強度も最強クラスの魔導金属アダマンタイトを握って変形させることができるから、鉄の塊くらい楽勝だろう。
「さて次はお主じゃが····· どうせアレやるんじゃろ?お主の暇つぶしの特技」
「アレやっちゃう?仕方ないなぁ·····」
んで次は私の番だけど·····
鉄塊ごときじゃ私の握力に耐えられないのよね、だから今回は自前で暇つぶしにいつもやっている遊びを披露しようと思う。
「石墨を取り出してっと····· はいちゅーもーく、今からこの石墨を握りつぶすんでよく見ててくださいねー、よいしょっ」
私は丁度握りやすいサイズに加工された石墨という炭素の塊を取り出すと、それを思いきり握り締めた。
するとピンポン玉くらいあったサイズのグラファイトを握っていたはずの私の手が、そのサイズより明らかに小さいサイズまで握られはじめた。
そしてあまりの握力に圧縮されたグラファイトは急激に発熱し、その光が私の手を貫通して見え私の手が赤く光り始めた。
「そろそろ冷却して····· よし完成っと」
「いつみても非常識じゃな」
「·····黄色い宝石になった?」
「あれってもしかして」
「ダイヤモンドか?」
「そう、ダイヤですよー」
そしてできたのは、炭素の結晶であるダイヤモンドだった。
私ならファンタジーの領域のはずの握力でダイヤを作るのできちゃうのよね、だって握力100トンは超えてるの間違いないし。
·····ちなみにもっと圧力掛けられるけど、前にやりすぎて核融合反応を起こしちゃったからこれ以上の圧力は掛けない事にしてる。
私って改めて思うとチートすぎるのよね。
「まぁこんなもんでしょ、さて次々っと」
「まぁいつもの事じゃな、暇があればそれやっとるからのぅ」
という訳で、握力も見せられたので私たちは次の測定へと向かう事にしたのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
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「ちなみに暇つぶしでダイヤ作ってるせいで、家に数ctのダイヤの原石めっちゃあるのよね、あまりにもありすぎるから質の悪いのは投げて攻撃する用に使ってるし」
名前:エビちゃん
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「流石にワシでもアレは無理じゃのう、熱すぎて途中で手を離さざるを得ないのじゃ····· あやつの凄いとところは握力もじゃが耐熱じゃろうな」
名前:ユングフラウヨッホ
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「最後のアレどうやってんだ····· 全く変化しないぞ??」
名前:ソニア
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「ソフィに勝てる訳ないよねぇ····· むりむり」
名前:マリナ・ピ・サークレット
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「キノコ神拳を使えば∞とか出せるんだけどなぁ、ちっ、師匠から今日は使うなって言われてるし仕方ないかぁ」




