魔法学校の先生のお仕事
「はーいここ、この魔法の術式は·····」
『せんせー、トイレ!』
「勝手に行ってこーい、んでここが魔力の属性変換で火属性を指定してる部分で·····」
今日の私は、魔法学校の先生だ。
実は私、めっちゃ副業をしている。
私はSランク冒険者で時々依頼をこなしてたり、実家のある『フシ町』の町長家の娘だから町政関係の仕事をしてたり、この国の国教のサークレット教の聖女に無理矢理させられて働いてたり、夫の実家の魔道具と錬金術のお店の助っ人、キノコ神拳道場の師範、鉱山の町であるフシ町の鉱山のバイト、日本の超能力者機関の特殊部隊、宇宙生命体連合のこの星の代表者(仮)、隣の星の惑星サイトーシスの再生計画の担当者、家庭菜園の管理、趣味の魔道具やら武器やら機械やらの制作、宝石やジュエリーの制作とか、その他色々な仕事を受け持っている。
訳分からないと思うけど、全て私が昔に大暴れした結果こうなってるから自業自得だと思ってくれたらそれで十分だ。
ちなみに魔法学校の先生になったのは半分自業自得というか、校長の策略だ。
「で、えーと、コンロの魔道具の着火をコントロールする際に特に注意すべき所は?この問題を····· ·····ぐっすり快眠してるルナさん、答えてください」
「はひぇ、·····よく寝てた、お母さんおはよ」
「·····」
「·····確か、魔石の魔力量でほのおの強さが変わって安定しないから、一旦それを均一に整える術式を刻まないと危ない、·····だっけ」
「·····正解、そうです、魔石は物によって魔力量や出力が安定しないので、魔導回路で制御して一定の出力にしてからうんぬんかんぬん」
その校長の策略というのが、私の子供達を人質にしてきて脅されたからだ。
·····って言うとマグヴェル魔法学校一の問題児だった私が数百発は食らった、魔王をも一撃で沈める鉄拳のゲンコツを喰らいかねないから真面目に言う。
学校一の問題児で過去最高の天才だった私が教員になれたのは、この学校の校長が日本人だったからだ。
学校長はサトミ・ド・ウィザール、本名は加藤 郷美。
日本人の異世界転移者で3600年前にこの世界に仲間と共に召喚された伝説の勇者の1人だ。
ちなみに私の義姉でエビちゃんを前世の頃に殺した犯人ね?
つまり魔王を倒して世界を救った英雄だ。
ただし、1人だけ日本に帰れず3600年間帰る方法を探し続けた結果、世界最強の魔法使いで世界最高の魔法の研究者になったバケモンだ。
おっと閑話休題
で、娘を人質にされたっていうのは言葉の綾というか嘘で、私があんまりにも子供のことが心配過ぎたから下手な事やらかす前に教員にさせられたってだけだ。
元々私はアカシックレコードのお陰でめちゃくちゃ頭が良いから何とか教員になれて、そして今は次女のルナの居る教室で魔道具の授業をしてるという訳だ。
「はーいでは次は、·····何だっけド忘れしたわ」
『『あははははっ』』
·····ちなみに先生といっても非常勤だから授業とかあんまりしないし、そもそもあんまり得意じゃないけどね。
だって今日は魔道具関係の先生が生徒のイタズラ魔法で失神してピンチヒッターしに来ただけだし。
◇
魔法学校の先生
そう言われて思い浮かぶイメージは、十中八九はハリー○ポッターの先生方のような、厳かでちょっと不思議な感じで、魔法使いのローブを羽織ってとんがり帽子を被ってると思う。
でも実際はそうじゃなくて·····
「·····採点が終わらん」
「だよなー、アタシは部活の顧問だけやってるから楽でホント良かったぜ」
日本の学校とあんまり変わらない。
職員室にいる時は基本的にテストとか宿題の採点ばっかりやってる。
別に怪しい大釜で魔法薬とか作らないし、変な魔法生物に餌とかあげてないし、水晶玉で占いとかやってない。
「んー、数が多い、多すぎる····· 宿題減らしてよ·····」
「なんか生徒みてぇな事言ってるぞー」
「まさか先生になっても宿題減らして欲しいって、生徒の頃と全くおなじこと言う羽目になるなんて思わないでしょ普通は·····」
採点。
とにかく採点とかばっかりやってる。
まぁ、私が特に非常勤だからほかの先生の採点を手伝ってるってのも多い理由だし、採点がない日とかは隣の私がこの学校の生徒だった頃に所属していた魔動車部の先輩で現顧問のサンドラ先輩の手伝いとか、校長の話し相手とかしてるけど。
ちなみに彼女もこの魔法学校の卒業生だ。
「っと、これで最後!·····うお100点だ」
「おー珍しいな100点なんて、アタシは取ったことないぜ?アッハッハッ!!まぁ何はともあれお疲れ、紅茶いるか?」
「あっ助かります」
そんなこんなで話してるうちに、私はようやく採点を終えた。
「·····相変わらず後輩ちゃんの採点は早ぇなァ、1枚何秒だ?」
「0.3秒くらいかなぁ、もっと効率化したら0.1秒はいけるんだけど時々ミスするからこのくらいですね」
·····まぁ、めちゃくちゃ量が多い採点でも、超高度な演算装置のアカシックレコードと私の身体能力を利用すれば、500枚ある宿題も数分で採点が終わるんだけどね!
やっぱり私って天才☆
「ほれ紅茶入れてきたぞー」
「あっども·····」
なんて自画自賛しながら、私は職員室で魔法学校の先生らしくお紅茶を嗜んだのだった。
「·····雑に淹れすぎ」
「だって淹れ方知らねぇし!アッハッハッ!!」
ちなみに紅茶はカップの中に直で茶葉が入っててそこに直接熱湯をブチ混んだひでぇ紅茶だった。
·····そういやこの人、魔動車以外の事はとことん不器用だったの忘れてたわ。
そんなひでぇ紅茶を飲みながら、私は日本とあんまり変わらない魔法学校の職員室でのんひりティータイムを嗜んだのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
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「·····サンドラ先輩、何回紅茶はコーヒーと同じ淹れ方したらダメって言えばわかるんです?」
名前:アニー・サンドラ
職業:マグウェル魔法学校の先生(部活の顧問、研究専門)
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「ん?初めて聞いたぜ?(※このやりとりするの11回目)」