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完全魔術主義世界のオワコン剣士  作者: さいだー


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ロウエ

「ロウエ!ちょっとロウエ!こんなところで寝ていたら風邪を引くわよ。起きなさい!」


 心地よい風が通り抜ける草原で、目を閉じていた僕を揺さぶり起こそうとする不届き物が居た。

 もちろん眠ってなんかいなかったし、こんな事をしてくる不届き物はそう多くない。だから、すぐにその人物の姿を想像することができた。


 マリエス。僕より一つ年上のお節介焼きだ。

 その姿を目蓋の裏で感じながら、目をゆっくりと開く。


「こんなことで風邪はひかないよ。それになんのつもり?僕は少し休憩していただけなんだけど」


 目を開いて最初に飛び込んで来たのは風になびいたサラサラのダークブロンド、法衣姿の少女。

 人差し指を立てて少しムッとした表情を浮かべた幼馴染の姿だった。


「あのね、あたしはロウエの事を思って言ってあげてるの。風邪をひかない絶対の保証なんてないし、もし風邪を引いたりしてもまだあたしには治してあげられないの。わかる?」


『もし風邪を引く事があればシフィエスさんに治療をお願いするよ』とでも言いたいところだが、そんな事を言ったら負けず嫌いなマリエスは途端に泣き出してしまうだろう。

 だからその言葉はのみ込んで「わかった」とだけ返事をして上半身を起こした。


「本当にわかってる?」


「うん。わかってるよ」


 この世界では彼女は《《年上》》だ。

 しかし、ニホンで暮らしていた頃の記憶を持つ僕は彼女の倍以上の時間を生きている事になる。だから、僕が大人になる必要がある。


「それにロウエ?今時剣術の練習をしたってなんにもならないわよ。これからは魔法よ。魔術よ!将来を考えるなら断然ね」


 マリエスは僕の横に転がる木刀を眺めながらそう言った。


 そんな事は僕にだってわかっている。

 この世界に産まれて七年、見聞きしてきて嫌と言うほど脳に刻まれていた。将来目指すなら魔法師一択。


 魔法師とそれ以外の職業では、大きな隔たりがあると言って良い。しかも、そのさらに上の階級、魔術師にまでなれば、さまざまな恩恵に預かれるとも魔術師様であるシフィエスさんが言ってたしな。


「いいんだ。僕は父さんの跡を継ぐつもりだから」


「あっ!またそんな事を言って。ただ苦手だから魔法から逃げたいだけじゃない!」


「そうかもね」


 言うと同時に木刀を掴み取ると、僕は走り出した。

 魔法が苦手なのかどうかは正直わからない。試した事もないし。


 でも今はこれで良かった。健康体で自由に走り回り、体を動かせる。

 嫌と言うほど汗をかいて、母さんの魔法で冷たい水を浴びる。

 怒る幼馴染を尻目に逃げ回って、捕まって怒られる。


 今となっては本当にあったものなのかどうか定かではない前世の記憶の《《俺》》ができなかった事を、今世の僕は心から楽しんでいた。


「ちょっとロウエ待ちなさい!」


「アハハハハ。待たないよ」


 どれくらいそうしていたか?走り回って先にへたりこんだのはマリエスだった。


「ロウエのバカ。もう疲れた。もう歩けない」


 女の子座りでペタリと座り、今にも泣き出しそうな雰囲気だ。


「まったく、しょうがないな」


 僕はマリエスに歩み寄ると手を差しのべた。

 だけどマリエスが僕の手を取ることはない。代わりにボソリとこう言ったのだ。


「おんぶ」


 念のためもう一度言っておくが、この世界では彼女の方が年上だ。

 しかし、無下に断れば今にでも泣き出してしまうだろう。そうなったら父さん母さんにめちゃくちゃ怒られるだろうな……


「わかったよ」


 マリエスに背を向けてしゃがみこみ受け入れる体勢をとる。


「ふふふ。かかったわねロウエ!捕まえたわ!」


 僕の背中に飛び乗るような形になったマリエスを支えきれずに僕はそのまま転倒した。そして、そのまま僕とマリエスはゴロゴロと緩やかな坂を転がった。

 何回転かして止まったところで自然と僕らは空を見上げていた。なにかおかしくて、僕とマリエスは言葉も交わさずに笑いあった。


「まったくひきょうだよ。嘘泣きなんて」


「ひっかかる方が悪いのよ」


 ニシシとマリエスは口角を上げて笑った。年相応のあどけない表情だ。


「次はひっかからないからね。じゃあ、僕は剣術の練習に戻るよ」



「あっ!忘れてた!お使いに行かなくちゃ行けないの」


「お使い?」


「そうなの。先生からドリミー草を摘んでくるように頼まれたのよ」


 先生_____シフィエスさんか。この村で唯一の魔術師。そして、マリエスの魔法の先生でもある。


「……まさか僕も?」


「うん。もちろん。あの辺りには弱いけど獣も出るわ?男の子ならとうぜん守ってくれるわよね?」


 シフィエスさんに頼まれているのなら、僕に拒否権はない。


「……わかった」


「なんか乗り気じゃないわね?」

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