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世界線越のスペクルム  作者: EME(R15)
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第9話 最終作戦会議

『どうして…私なの…?』


それは俺がリンに告白した時に言われた言葉だ。


『え…。』


『あ!ごめん!嫌とかじゃなくて!…えっと、すごく嬉しくて、純粋に思ったの。

なんで私なんかを好きになってくれたんだろうって。』


『リンは…1人でいる時、よくつまんなそうな顔してるよな。

でも俺がちょけたりしたら笑顔になってくれて…。それが嬉しいし、それに……リンの笑顔、すげぇ可愛いから…。それで…。』


『ふ…あはは!ありがとう、ユイト!』


『おい、笑うな!』


『だって、ユイト耳まで真っ赤だし、私のこと可愛いってなんか照れるし!』


『…本当にそう思ってんだから、しょうがないだろ…。』


『そっか…。

…“幸も不幸も平等”って本当だったんだね。私には不幸ばっかりだと思ってた。

こんな幸せなことが、私の人生でもあるんだね。すごく嬉しい…。

ユイト、私のこと好きになってくれて本当にありがとう。』


そう言って幸せそうに微笑んだリンの姿を、俺はきっと一生忘れないだろう。


そうだ。元の世界線に戻らなくては。

リンには俺がいないと。俺は…リンの笑顔を守るって、誓ったんだ…!


「…マツリ、蝶子に伝えてくれ。

俺も今夜のパーツ工場襲撃作戦に参加する。」


「!…ユイト、いいの?」


マツリは驚いた顔でそう言った。そりゃ驚くよな、直前まで落ち込んでたのにいきなり強気に俺もやるって言いだしたら。


「…ああ。うじうじ言ってても仕方ないし。

俺は絶対に元の世界線に帰る。その為に必要なことだからな…。」


本当は怖い。納得も出来ていない。本心ではまだ、どうして俺がって思っている。

でもやるしかない。俺とリンの未来の為に。俺はまだ諦めない…!


-------------------------------------


夕方。


俺は最終作戦会議に参加する為、マツリと一緒に、昨日ブランチをしたレストランに来た。

俺たちが到着した時には、他のメンバーはもう揃っており、皆透明のタブレットを片手に席についていた。


俺たちに気付いたエリさんがその場で深く頭を下げた。


「ユイトさん、本当にありがとうございます。…よろしくお願いします。」


「…。」


お礼を言われたが、返事をする気にはなれなかった。

正直まだエリさんが怖い。それに俺は自分の為に決断した。だからエリさんに感謝されたくない。


「集まったね。…では、今夜決行するパーツ工場襲撃作戦の最終会議を始めます。」


場の空気を裂くように、蝶子が真剣な声でそう宣言した。


「まず今回の目標から。

今回の目標は、キャンセラーパーツ工場内にあるパーツ保管スペースから、パーツを持ってくること。

現地に向かう実働部隊は、回収役の私と見張り役のナナカ、GT、そしてユイトです。」


名前を呼ばれてドキリとした。俺…本当にこれからパーツ工場とやらに行くんだな。


「次に作戦の流れを説明します。

まずは徒歩で大黒埠頭の倉庫に向かい、そこに格納してある水上バイクを使って、有明のパーツ工場へ海路で向かいます。


現地に着いたら最初にユイトのキャンセラーを完成させます。あとパーツ1つ差し込むだけで完成するところまで組み立ててあるから。

その後私以外の3人には倉庫の各入口にて、対"ドッペルゲンガー"特殊部隊・日本支部に気付かれていないか見張って貰います。

その間に私が必要パーツを回収し、撤退します。それで完了となります。


倉庫上空ドローンの操作、全体への指示、周波数の監視は全てヒナノさんにお願いします。

倉庫内のマップ等はすでに皆のタブレットに転送済です。

それから盗聴等の危険を踏まえ、作戦中は必ず認識名称で呼び合うように。

以上です。何か質問は?」


蝶子が説明し終わり、質問の有無を聞いて来た。

本当のことを言うと俺が何をすればいいのかイマイチ掴めていない。

それにまず…


「あのさ…認識名称って何?」


俺は小さな声でそう蝶子に尋ねた。

話の流れからして皆理解してるっぽいから、なんか聞くのが恥ずかしいが…。

今聞いておかないと後々ヤバイことになりそうだ。


「あ!それ私から説明していい~?」


隣にいたマツリが手を挙げそう言った。


「認識名称っていうのは、本名とは別に政府から振られる番号のこと!

"ドッペルゲンガー病"防止の一環として、名前が他人に知られないように政府が取り入れた政策だよ。

ほら、同姓同名の人物って高確率で"ドッペルゲンガー"だから。並行世界の来訪者達に狙われにくくする為にね。

そして私の認識名称はQT-6!」


そういうことだったのか。マイナンバーが名前になってるみたいな感じか。


「なるほど。で、ヒナノさんはHHと。ジーティーはGT?」


「俺はGTが認識名称だ。本名はゴウタってんだ。

俺とヒナノ、エリさんの認識名称は政府に決められたものじゃなくて、自分たちで決めたフェイクだ。」


「蝶子とナナカは?」


「私たちは…そのままでいいわ。第一級指名手配犯だから、隠しても意味ないもの。」


そう言い蝶子がなぜか髪をかき上げる。


「いや第一級指名手配犯こそ、認識名称使って隠せよ。」


つい冷静な突っ込みを入れてしまった。


「あはは!ナイス突っ込み!そうだよ決めよう!蝶子はCBなんてどう?」


CB?なんでCBなんだ?

俺の不思議そうな顔を見て、マツリがにやりと笑い言う。


「Cool BeautyからとってCB!我ながらいいセンス!」


こいつ…。絶対マツリの認識名称キューティーからとってるだろ。普通自分でキューティーってつけるか?

俺の冷ややかな視線に気付いたのか、マツリがムッとして言った。


「ユイト!言っておきますけど、私のはちゃんと政府から支給された認識名称ですから!

だから逆に私の認識名称は外では言わないでよね!!」


「おい嘘つくな。」


「本当ですー!嘘じゃないですー!!」


マツリがそう言いどさくさに紛れ俺をくすぐって来る。


「えいっ!えいっ!どうだユイト、参ったか!」


「おい!やめろ、マツリ!!あははは!」


その様子を見ていた蝶子が少しムッとした表情になる。

そして少し機嫌が悪そうな声で言った。


「マツリが言っていることは本当よ。QT-6は政府に支給された認識名称。

だからマツリだけは認識名称で呼ばないで。」


「あ…そうなのか。」


蝶子の少し冷たさを感じる声色に、いままでの明るい空気が消える。


俺はふと疑問に思った。

蝶子達は並行世界の来訪者達だから、認識名称は政府から貰えないはずだ。

なんでマツリだけ政府から支給されているんだ?


俺の怪訝な表情に気付いたのか、蝶子が言う。


「マツリは…スパイなの。」


「えっ…」


え…ええええええ!?

このマツリが…スパイ!?成り立つのか?スパイって敵陣に紛れ込んで情報収集する奴だよな?

こんな奴がスパイとしてやっていけるのか…?

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