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「で?」
「いきなりですねぇ…今来たばかりですよ」
「で?」
「語彙」
「で?」
「で?」
「…死ぬか」
「………とりあえず今のところは何も。ただ、メイド一人、絞めました」
「で?」
「王太子様に言っておきましたので、何とかなるでしょうよ」
「で?」
「…ジョセフィーヌ嬢に私の妹を付けてあります」
「で?」
「…あんたに惚れたふうではなかったですね。がんばってください」
「あー…もう…」
「語彙なくなるのなんとかならないんですか。あんたが求めるものがなんなのか分からないでしょうに」
「…うるさい」
こいつに守られていると気が付いたのは、いつだったか。流石に幼少の頃は、乳母に守られていたようだが。だから、健康に育つことができた。それは…感謝している。しているが…それとこれとは別で。常にいるから気安いのか…わがままを聞いてくれる存在と思ってしまっているのか…だから、思考は放棄している。しても、問題ないからだ。
「なんだかこう、首の後ろがちりちりする女ばかりだし…駄目だな」
「今日貴方に猛烈アピールしていた家は、健全ですよ。心の内はわかりませんけれど」
「心の内が駄目なんだろうが。まだ来てない家の者は?」
「来てはいても、パーティーに参加していない者もいましたね。到着したばかりという人も。そこらへんは…どうしても遠い地域から、とか辺境伯あたりですか。辺境伯なら血を残してもよさそうですけどね。守りに必要でしょうし」
「…そういう、政略的なものは好かんな」
「まあでも、できますでしょう?よっぽど好みでないとかでなければ」
「そりゃあ、できるがな。性根によるな…」
「ちなみに一人、気に入った子できたんですけど…手、出していいですか」
「おまえな…」
「家柄的にもちょうどよいので。貴方にアピールするわけでもないようですし」
「兄に言え。俺にはどうにもできん」
「先ほど絞めたメイドをお届けに上がったときに言っておきました」
「おい…」
「貴方も特に気にしてなかった風でしたし…そもそも気が付いていたかどうか。壁と同化してましたからね、彼女」
「…同化って…」
「ふふふ…ヨさそうでしょう?うちの血を継ぐのに」
「…壊すなよ」
「本気のコは、壊しませんって。どうでもいい女は壊しますが」
…とすると、今までの女性は、すべてどうでもよかった、と…あれだけ熱を上げてた風なのに?解せぬ…
「あ。ご報告。ジョセフィーヌ嬢は、貴方を嫌ってはいませんでしたよ」
「っ、そういう事は先に言え!」
「好きか、と聞かれるとそうでもなさそうでしたので」
「うぐっ…」
「まあでも、この調子で王子様してればコロっといくんじゃないですか?」
「…なんだその王子様っていうのは」
「あんた、日頃バカっぽいですから」
「…不敬罪だぞ」
「今更ですね」
バカっぽいってなんだ。考えるのが嫌だから、放棄してるだけだろうに。何とかしてくれるこいつもいるしな。