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「ルーヴェリア様、聞きました?」
と、俺の乳母兄弟であり、一緒に騎士になった部下がそう聞いてくる。何がだと問えば。
「クラムトの所の領主の娘…貴方が未練がましく見送った女性ですが」
「お前、いつまでそのネタを引っ張るんだ」
「さぁ。いつまででしょうね。で、その女性ですが…まあ、よくない噂というか、話が出てますが、どうします?」
「…なんだその噂というのは」
にやにやするんじゃない。聞きたいから早く言え。そうせっつけば、どうやらひったくりにあった。という話が出たまではいいが、そこからは…暴力を振るわれ顔が見られない程になってしまった、という話にころがり…あっという間に、強姦された、という話にまでなっているのだとか。
「な…私が助けたのだから、私が身の潔白を、」
「貴方が言ったとしてもどうしようもないでしょう」
「調書もある!なぜそんな事になるのだ!」
「それがお貴族様、というものですよ」
どういうことだと目で示せば、やれやれ。とため息をつかれた。
「まったく、貴方は本当にそういう事、気にしませんからね。いいですか。貴方が助けたんですよ。貴方が」
「?それが何かあるのか?」
「大ありです。いいですか。今王様の子で、一番嫁ぎやすいの、貴方なんですよ。おわかりになります?」
「ん?まあ、魔力がないからな。それでも高魔力持ちが生まれる可能性もあるが?」
「あのですね。そういう事ではないんですよ。王太子様は、上位貴族で、高魔力持ちでなければなりません。すでに何人か…えぇと6人でしたかね。候補というか…許嫁とされています」
「そうだな。それで?」
「おそらく、貴方の弟様であるスタンフォード様もそうでしょう」
「そうだな」
「そうすると、魔力を持たない貴族の女性達は、貴方であれば許嫁になれるかもしれないと思ってる訳です。そこで、ジョセフィーヌ嬢を貴方が助けたら、どういう思惑が沸くと思いますか?」
「わからんな」
あ、おい。盛大にため息をつくな。
「一番簡単なものとしては、貴方の第1妃になるのでは。という考え」
「…そう簡単な話ではないだろう」
助けただけで妃になれるとでも思っているのか?そうしたら、騎士学校を卒業して配属されたここ半年ほどで、どれだけの妃ができていることやら。
あ。未婚の娘を助けたことはなかったか。
「…後はまあ、第1妃でなくとも妃になる可能性が強まると考えれば、ライバルを蹴落としたい者としては、妃になれないよう、清い身体ではないという事にしたいのでしょうよ」
「はあ?」
清い身体って…別に嫁ぐ為にそうである必要はないが。まあ…子供が他の男の種だったら困るだろうから、期間を置くとか、そういったことは必要ではあるが。
「噂だけとはいえ…ああなってしまえば、どこまで行くか。かわいそうに。修道院か、最悪好事家の妾腹になるしかないでしょうね」
「なっ…」
あんなに一生懸命領地の為、家族の為にと頑張っている娘に、なんという酷い事を…こうなったら…
「俺が責任を取る!」