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この場を借りてお礼を申し上げます。
自身の作品に沢山のpvありがとうございました!
某所ではデイリー1位も獲らせて頂きました!
一重に皆様のお陰です。
有り難くて嬉しくて細やかですが続編を載せていこうかと思っております。
楽しんで頂ければ幸いです。
「父上!」
乱暴に開けた扉から怒りを露わに入室する。
周りの者への配慮など今はどうでもよかった。
机の周りに控えていた数人の侍従達が驚き慌てて頭を下げながら場を空けてくれるが、それも無視し書類処理をしている父親の机に思い切り音を立てて両手をつく。
「……もっと静かに入って来るものだぞ」
サインする書類から顔を上げずに荒々しい息子の態度への注意をする。
「それは失礼致しました」
詫びの言葉も敢えてゆっくり言っただけで謝るつもりは現時点では毛頭ない。
注意をされたとて収まるものでもない。
執務机に両手をついたまま父親を見下ろす。
しかし父親は仕事を優先させ息子を見ようともしない。
「……お話があります」
書類から目を離さず、一向に止めない職務に忠実な父親に痺れを切らし息子の方から中断を催促する。
が変わらず「何だ」と素っ気なく返答される。
「!」
読んでいた書類を息子に取られやっと息子を見る。
見上げた息子は書類に目を通し「却下」と書類を侍従に渡しながら、「残りは私もお手伝い致します」と笑顔を向けて来た。
ようやく息を吐き、椅子の背に体を預け息子に今一度問う。
「どうした」
「……ご自分の方がよくご存じでは?」
片眉を上げ優雅に微笑んで凄んでいる息子の名はフォールブラッデイ・フォン・ウォル・エクール・カルディア。
幼い時はまるで天使の様だったが、成長した今では研いだばかりの剣の刃の様に銀の輝きを様々な角度で見せる鋭利な鋼のそれだ。
「何を私が知っていると?」
「……キャデルのことです」
あぁ、と席を立つと侍従の一人に休息を言い、あとは下がるよう言い渡す。
フォールは長椅子へ移動する父親の後を静かについて行く。
「キャデルの何だ?」
「何だとは。キャデルを婚約させるとか」
「何だ、その話か」
「ずっとその話です」
「で?」
「?」
義妹のキャデルから婚約の話を聞いて状況を確認しようと怒りに任せて父親のところへ押しかけたが、向かいに座る父親の様子はどうにも自分が思った通りにならない。
「義妹の婚約の何が悪い?」
いいか、悪いかで聞かれればいいと答える。
しかし相手が自分ではないのだ。
では答えは否だ。
大体、父上はさっきのキャデルを見てないのか?
直接彼女に話をしたなら、あんな顔をいたのに気付かないわけがない。
自分と話をしたキャデルは、いつものように話しているつもりだったろうが、今にも泣きそうな精一杯の虚勢を張っていたではないか。
「婚約は悪くありません。相手が悪い」
「何を言う。大臣たちが一生懸命見つけてきた中から選んだ相手だぞ」
「選んであいつですか」
「そうだ。厳正に王妃が選んだんだぞ」
「義母上が?」
まさか義母までこの婚約に同意とは驚いた。
フォールが黙ったのをいいことに父親がとんでもないことを続ける。
「そうとも。大臣たちが持って来た婚約者候補の紙を床に並べてな、王妃が国宝である王妃の錫杖をコロコロ~っとだな」
「?!」
「決め方は確かに古式ものだが伝統的ではある。何せ王妃の錫杖にある宝玉は鳩の心臓と言って」
「……知っております」
鳩の心臓とは大人の男のこぶし程ある大きなルビーで、その色は濃い深紅で昔から愛を語る例えにこの国ではされる。
その宝石に縁組を決めさせたと父親は言う。
だが、ただのペン転がしだ。
そんなもので婚約は決められていいものではない。
ここまで穏便にキャデルの婚約を破棄できればいいと思ってきたがそうも言ってはいられなくなった。
「父上」
「何だ」
「キャデルの婚約の破棄を希望します」
「……何だと?」
「代わりに私がキャデルを娶ります」
「何?」
「ご承諾を」
言いたいことを言った満面の笑みを机を挟んだ父親に向ける。
勿論、父から諾と言われるまで何を言われようがここを動くつもりはない。
フォールは長期戦になることを予想して椅子に深く座り直した。
お読み頂きありがとうございます。
また続きでお会いできますよう。
掲載は不定期となりますので余裕がございましたらブクマ登録をして頂けたらお届け出来ると思いますので宜しくお願い致します。。。
今後とも宜しくお願い致します。