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ジョイナス王子の裏の顔  & ランダルから見た真実

 ジョイナスは、隣国の王女マリアと協力して自分のやるべき道を突き進んでいった。まずはナリスの婚約者であるカリロンのサクストン侯爵家をどうにかしなくてはいけない。ナリスに瑕疵がないように婚約破棄をする必要がある。

 サクストン侯爵家は、たたけば埃が出るわ出るわ。面白いほど証拠が出てきた。

 こうしてあの憎きカリロンを消すことに成功した。 

 

 まずカリロンの家であるサクストン侯爵家は、当主とその侯爵夫人は処刑された。悪行を行っただけでは、処刑はされなかったのだが、やはりというべきか初めの妻を二人して毒殺していたことが明るみに出たのだ。当時侯爵家に仕えていたメイドや執事の証言もあり、言い訳できないところまで追い詰められた。もちろん証言をした者たちも処刑は免れたにせよ、一生出られない場所に送られた。これから自分がやったことを一生悔いながら生きていくことになるのだろう。


 家が取り潰されたカリロンは、今や行方知れずだ。処刑は免れることとなったが。本人が、すべての犯罪にかかわっていなかったからだ。しかし侯爵である両親が処刑されてすぐ、行方が分からなくなった。噂では、侯爵家が犯した犯罪の被害にあった被害者や被害者家族に殺されたのではないかといわれている。まったくその通りなのだが。

 

 恋人だった子爵令嬢だったライザも、今度後妻として年の離れた貴族に嫁ぐらしい。やはりカリロンとともに行いが疑問視され、とてもライザを娶りたいという貴族が現れなかったのも大きい。中にはライザの見目の良さに惑わされた者もいたが、家族からの猛反対にあいすぐに別れる羽目になった。そんなライザを子爵家も持て余す様になり、いわくありげな貴族のもとに売られるようにして嫁ぐことになった。

 

 これもすべてジョイナスが裏で糸を引いている。サクストン侯爵家は、妻の侯爵夫人があまりに散財をしすぎたせいで、侯爵が悪に手を染めることになった。もとはといえば愛人だったカリロンの母親にそそのかされ、最初の妻を毒殺したことが悪に染まるもととなったのだが。証拠があれもこれも出てきた日には、ジョイナスは笑いが止まらなかった。

 

 「やはりカリロンをナリスの婚約者にしておいてよかった。うまくいったよ。ライザ・フュームとの出会いも私が仕組んだものだったが、こうもうまくいくとは思わなかった」


 


 自分の作戦が思いのほかうまくいったジョイナスが、ナリスの兄ランダルに嬉しそうに言った時には、ランダルは少しだけナリスを哀れに思った。こんな男に愛されてしまったナリスは、もう逃げられない。もし逃げようとしたものなら、ジョイナスはどんなことでもするだろう。自分でさえナリスの足かせに利用するに違いない。


 ナリスがカリロンと婚約したのも、ジョイナスからレリフォル公爵家に直々に指示があったからだ。ランダルも父親も、ジョイナスの指示に従っただけだ。ナリスがジョイナスを好きだったことも大きい。だがあの時にはこれほど、怖い男だとは思いもしなかった。

 途中ナリスがどんどん元気がなくなっていくのを見たランダルは、ジョイナスに言ったものだ。


 「ジョイナス王子、今のままではあまりに妹がかわいそうです。早く婚約破棄させるかカリロンに心変わりさせるようにしなくては。このままではナリスの心が心配です」


 「ではカリロンと婚約破棄させて、ほかの男をナリスに近づけるのか。それともライザを排除して、カリロンとの仲を修復させるつもりなのか!」


 そう言ったジョイナスの目がすごかった。あの目を見た時には、ランダルはあまりの恐怖に失神しそうになった。


 「いえっ、そういうわけでは...」


 「ナリスがカリロンに失望すればするほど、私が優しく見えるだろう?私だけがナリスの心の傷を癒せるなんて、なんて幸せなことだろう。そう思わないか、ランダル?」


 ランダルは「それは歪んでいます」とは言えなかった。いくら妹を愛しているとはいえ、自分の命が惜しい。自分だってパメラと幸せになりたいのだ。それにここまで愛されているのだ。ナリスは、きっと貴族のしがらみからも王妃になる重圧からも守ってもらえるだろう。ランダルは、それはそれで幸せなことだと思うことにした。

 

 ジョイナスに比べたら、パメラはわかりやすい。「パメラは苛烈な性格をしている」と父に暗に言われた時には、父はランダルがパメラを怖がったと誤解した。しかしそれは違ったのだ。ジョイナスに比べたら、パメラなんてかわいいものだ。私が『苛烈』という言葉を父に言われたときに思い出したのは、パメラではなくジョイナスの顔だった。

 思わず身震いしてしまったのも、そのせいだ。しかし父はジョイナスの本性を知らない。私も教えるつもりもない。ジョイナスはナリスにかかわらないことには、ひどく常識的であり賢王になる素質充分だからだ。


 何もできない兄だけど、ナリスがもしジョイナスに不満があるのなら愚痴ぐらいは聞いてやるつもりだ。すぐにジョイナスに報告するけれど。それもこれも自分の幸せのため、ひいては国民全ての幸せのためだ。

 

 ランダルは、ナリスの幸福を願った。それは、自分を含め国民皆が幸福になることなのだから。

 

本編終了。次回から番外編です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 三人称で語ってたのが途中ランダルの一人称になってます。
[一言] ジョイナス殿下はヤンデレだったんすね(笑) 裏で病んでるほど恐いモノはないww
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