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婚約者をないがしろにする人はいりません  作者: にいるず
本編

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3/16

婚約破棄です

 昨日の王家主催のパーティーで、ナリスの父もとうとうカリロンを見限った。


 今まで心配そうにしていたものの表だったことは何もしていなかった。いくら何でも政略結婚である限り、ナリスにひどい扱いをしないだろうと思っていた。しかし婚約者である今でさえ、この調子だ。もし正妻になって侯爵家に入ったものなら、どんな扱いになるかわかったものではない。いったん結婚したら、いくら実家とはいえあまり口出しできなくなってしまう。

 今までのカリロンの行いと昨日の様子を見て、はっきりと決別することにしたようだ。


 朝食のあと、ナリスは父の書斎に呼ばれた。中に入ると、父だけでなく兄もいた。


「ナリス、今まで大変な思いをさせてすまなかったね。私もここまでカリロンが馬鹿だとは思わなかったよ。サクストン侯爵も馬鹿なことをしたものだ。ナリスにひどい扱いをするのは、我らレリフォル公爵家をないがしろにしたのと同じだ。婚約破棄を申し出るつもりだよ、ナリス。すべてが終わるまで、領地にある公爵邸に行っているといい」


「そうだよ、ナリス。パメラもずいぶんナリスのことを心配していてね。何も心配しなくていいよ。領地でゆっくりと静養でもしてくればいい。なんならずっといてもいいんだよ。もう結婚なんてしなくていいんだから。私が責任もって面倒見るよ。パメラだって賛成してくれている。修道院なんて考えないでおくれよ」


 ナリスは目を見張った。すべてばれていたに違いない。兄の言葉がうれしかった。自分は婚約者には恵まれなかったけれど、こんなにいい家族に恵まれて幸せだ。


 ナリスはその日から、王都から離れた領地に向かった。レリフォル家の領地は広大だ。その地位にふさわしく土地も肥沃で作物もよく獲れる。しかも主要な産業まであり、領民たちは豊かに暮らしている。

 

 ナリスは今までの疲れもあってか、ここに来てさっそく寝込んでしまった。体調も良くなった時には、王都を離れて一週間以上たっていた。ここにいると、なかなか王都の噂は入ってこない。父も兄も王都で忙しくしているようだ。ここにはナリスの母も来ている。ナリスが心配だということで、一緒に来ることにしたのだ。


「ナリス、体はどう?」


 朝食の時、母が聞いてきた。ナリスが倒れて、母は慌てたものの主治医に見てもらうと、心労だといわれた。ナリスは、母や屋敷の皆の献身的な看護と婚約というストレスがなくなり、やっと元気を取り戻した。


「もうだいぶ調子を取り戻しましたわ。お母様ありがとうございます」


 ナリスがそう答える。ナリスの言葉通り、ナリスの顔色はとてもよくなっている。王都にいたころは、どんどん顔色が悪くなってきていた。


「お母様、婚約破棄の件どうなりましたの」


「ああ、あれね。円満にできたようよ。ナリス安心して」


「そうですか。じゃあやっぱりカリロン様の次の婚約相手は、子爵令嬢のライザさんになりましたの?」


「どうかしらね~」


 母は、そこまで知らないのか教えてくれなかった。まあナリスも別にカリロンに執着があるわけでもない。もう自分にかかわらなかったら、正直どうでもいいのだ。そのあとは、今日のナリスの予定について母が聞きたがったので、ナリスが話したりしてカリロンの話題はもう出なかった。

 

 ナリスは調子が良くなってきたので、今日はこの屋敷のそばの町にある学校へ向かうことにした。昔からこの屋敷に来れば、慰問という形で母とよく行っていたのだが、今日は一人で向かう。

 ナリスは、前からそこの子供たちにレース編みやマナーの勉強を教えているのだ。


 この公爵領では、独自に学校を作って運営している。領地が豊かなのは、領民のおかげという先代からの教えで、今では子供たちの教育に力を入れているのだ。灌漑事業など一区切りしたのも大きい。

 

 ここでは王都に負けないほどの細分化されたコースがある。領内を警護するための人材となるものを作るコースや商売をするために必要な知識を得るためのコース、レースや特産品などを作る職人を作るためのコース、王都で公爵家に仕えるためのマナーなどを学ぶコースなど子供たちの特性に合ったコースがいろいろあるのだ。だから親が職人でも、子供は商売のコースに入ったりと、子供が自分の意思で選ぶことができる。

 そのためいい人材が育ち、それがまた公爵領を盛り立てる原動力となっているのだ。


 ナリスが学校へ行くと、ちょうど休み時間でナリスを見つけた子供たちが、わらわらと集まってきた。


「先生、今日教えてくれるレースどんなもの?」


「先生、今日はマナーよね。先生の教えてくれるマナー好き!」


 子供たちはナリスのことを先生と呼んでくれる。ここでは、貴族も庶民もないのだ。あるのは生徒と先生という関係だけ。それが余計ナリスの心を癒してくれる。

 

 ナリスが、レースの授業をしていた時だ。教室に慌てて入ってきたものがいた。


「先生、すみません。お客様がいらしております」


 ナリスが何事かとそちらを見ると、そう言ってきた者の後ろに、歩いてくる人がいた。ここではめったに見ないきらびやかな衣装を身にまとっている。


「ジョイナス王子!」

 

 ナリスは思わず声をあげてしまった。

 


 

 


 


 

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