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月光の歌  作者: サンジン
虚空月 篇
30/39

4楽章。怪物を哀れむ歌。3


12月29日。23時13分。

玄の部屋でレイラと玄は食事をしながら話し合っていた。

メニューはベーコンエッグ。

真夜中よりは朝食の感じが濃い食べ物だ。


「俺たちに残された時間はあと2日か」

「正確には48時間46分です」

「29日をほとんど投げ捨てたのは、まあ、俺のせいだけど」


そのように自分を責める玄だが、さっきのような暗さは感じられない。

レイラのおかげでぬぐい去ったようで、彼の瞳には迷いはない。


「まず、現在の俺たちの状況を整理しよう」

「はい、マスター」


そう言って、玄はレイラが持ってきた資料を壁につけて、口を開く。


「まず、48時間後。ミツキの処刑を担当するのは──」

断頭台(カダルーソ)のマスターに処刑依頼が来ていないので、おそらく()()を使うと思います」

「だろうよ。ミツキの処刑を肯定するはずがない俺に任せるわけがないから」


レイラが言った『あれ』に玄も肯定を見せた。

彼らにとって処刑に何を使うかというよりは、現在のアルセナルの動きが重要だった。


「話すから思い出すけど、ペプは何とも言わないのが?理性的に動く彼奴(あやつ)の性格上、ミツキの処刑は冷静に考えてみると()()()()()()()()な動きだろう?」

「はい、アルセナルも現在この状況はあまりいいと思いません」


レイラの言葉に玄は「だろうよ」と肯定を見せた。

間もなく、レイラは状況を整理する。


「正直、今回のこと。つまり、皇帝がルナ姫をディーンガルシア公爵に任せた8年前のこと。この時点で皇帝はプエルタ側から何を言われても反論することはできません。ルナ姫にそのような意志がなかったとしても、結果的には2度の女王侵攻を(ゆる)した。それによってプエルタ王国が相当な被害を受けたのは、避けられない真実ですから」

「その通りだ。内側でプエルタ王国を壊すと言ったのと変わらないからな」

「しかし国王の対処はあまりにもひどすぎます」

「処刑。…か?」


淡々とした表情で語った玄を見て、レイラはうなずいた。

ただ現在の状況に感情的にならず、冷静にどうしてそのような結論に到達したのかを考える人の言葉だ。

玄は冷静に状況を分析し続ける。


「少し冷静に考えれば分かる。正直、国民にとっては処刑しようという言葉が出るのは、それほどおかしくはない。でもそれは()()()()()の口に絶対に出てはいけない言葉だ」


一個人ではなく一国の代表者である国王の言葉はその国の言葉。国民1人が言うこととはその重さから違う。

そのため、国の代表者はむやみに他国に敵対的な言葉を口にしてはならない。

いくらそう思っても決して!


「はい。ルナ姫を処罰するとしたら、それはゲート帝国がしなければならない問題。プエルタ王国がとるべきものは、ルナ姫を帝国に送還し、彼女による被害を帝国に請求すること程度です」

「しかし国王はそうしなかった。むしろ、この事実を国民に知らせ、国民の嫌悪感情をあおっている。その状態でこの処刑に反対する国民はいないだろう」


実際にミツキの処刑の知らせが玄の耳に入ったと同時に国民の耳にも入ったのだろう。

そしてこの素早い動きに玄は違和感を感じる。


「逮捕して2日後に処刑は普通はありえない。いくら王命といえども。それはこの国の断頭台(カダルーソ)として動いた俺の仕事だったからよく分かる」


それではどうしてそんな行動を取ったのか。

彼は自分に質問した。

すべてのことには理由が存在する。すると、国王がそのように行動した理由も確実に存在する。


「プエルタ王国は共和制ではない。国民の感情をここまで煽る必要はない。そうだとしたら…」


瞬間、玄はさっきレイラの言葉を思い出した。


「レイラ。現在アルセナルはこの状況はあまりいいと思わない。と言っだな?」

「はい」

「それでは現在のアルセナルの動きは分かるが? たとえば()()()()()とか」

「……! 少しまってください」


レイラも、玄の言葉の真意に気付いたのか、端末機を取り出してしばらく部屋の外に出て、どこかに連絡を取った。

すぐに、また戻ってきたレイラは口を開く。


「現在ペプ·アルセナルは掃除者(リムピアドル)を率いて暴動を起こしている国民を押さえています」

「確定だな」


正解に到達した玄は口もとを上げた。

アルセナルの人々はカダルーソというデペンサが最も恐ろしい瞬間は暴走する時だと思うが、ずっと彼の管理者(メネアドール)を務めてきたレイラが思うのは違う。

彼が無敵であり、最強の座にいるのは黒血(こくけつ)の無慈悲な力ではなく、それを使う理性。


「国王の目的はミツキを処刑することじゃない」


つまり、冷静になった彼の姿だ。


「戦争を起こすことだ」


──冷静なとき、考えることをやめないとき、彼はすぐに問題の根幹に到達する。

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