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月光の歌  作者: サンジン
虚空月 篇
15/39

2楽章。小さな月と黒い断頭台。3



レポソに出ているカダルゾは、あまりいい気分ではなかった。


「あんたかそんなに怒っているなんて、意外ね。 顔に絆創膏を貼っているのも」


マチルダはそう言い、カダルゾに近づく。

いつものカダルーゾなら無視したはずだが、昨日のことのため、カダルゾは小さなため息をつきながら口を開く。


「昨日女の子に話しかけたが、速攻に逃げた。」

「もしもし、そこ警察ですか?」

「おい」

「いや、だって……外で、それもクリスマスイブにお宅のような全体的に暗い男に声をかけられると、普通の女の子だったら逃げるわよ。絶対」

「……」


すぐに警察に通報しようとするマチルダの行動に、カダルソは「相談するのではなかった」と心の中で叫んだ。

しかし、マチルダのその言葉に否定できないことも事実だ。


──相手が本当に普通な女の子なら。


その黒い髪の少女は異常だ。

歌の実力以前にあの時、あの少女を守った白い影。


『見た目は少し違っていたけど、そのけはいは紛れもない【白夜の魔女】だった。』


いや、今思えば、その白い影は、リビドの一種かも知れない。

彼の「漆黒のリビド」もまた、公式には「デストルド」として登録された力。『純白のリビド』があってもおかしくない。


『そういえば、ゲート帝国の【不死大帝】のリビドは白だと聞いた気がする…』


瞬間、そう考えたが、彼はすぐ首を横に振った。

600年以上生きた「不死大帝」の実子がいれば、それはそれなりの大事件だ。

「不死大帝」の「不死の血」を受けた「アンクラウンズ=無冠」という存在があるが、それも親族とはない。ドラクールに例えると、眷属のような概念。


『やっぱりなぞだ。「白夜の魔女」』

「どうしたの? 黒兄ちゃん?複雑な顔をして…」


ナオミがカダルーゾを呼びながら近づいてくるが、マチルダがナオミを抱きしめて言う。


「ナオミ。この変態に近づくな。何されるかわからない。」

「そう?黒兄ちゃんなら、どんな目にあってもかまわないよ」

「あんた何言ってるの? 怖いこと言うな。」


マチルダは本気でナオミのことが心配だという表情でそう言った。

そういえば「あの少女」の外見は、ちょうどナオミと同年代の女の子だった。

まあ、ナオミが小さすぎるだけだが。14歳らしくなく


「あのさ、ナオミ」


だからカダルーゾは14歳の女の子(外見12歳)のナオミの意見を聞いて、


「お前ぐらいの女の子と親しくなるにはどうしたらいいの?」


──後にそれを後悔する。


「私くらいの、女の子…ねぇ、へえ~ うん~」

「お宅、まだあきらめてないの? まじひく…」


ナオミがごみを見る表情でカダルゾをにらむ。

いつも彼によくなつくナオミが明白に敵対すると,心が痛かった。いっそのことマチルダのように普段と同じ反応なら馴染みがあるが、ナオミがこのような嫌悪に近い反応を見せれば、いくらカダルーゾでも心が折れる。


「それより親しくなりたいという女の子。 …小さいみたいね。」

「まあ、ひとまず小さいけど。」

「誰が小さいというんだ!! 私は小さくない! 同年輩たちと比べると3cmしか違わない!」

「???ナオミ?」

「ああ、やっちゃった」


そのように怒るナオミの姿に彼は驚愕し、マチルダはため息をついた。

どうやら、直美に「小さい」という言葉は禁句だったらしい。


「待て、誤解するな。分かった。全部言うよ。」


そのように、カダルソは昨日のことをすべて打ち明けた。

もちろん少女が使った白い影は秘密に。


「なるほど。なるほど。最初からそう言えよ。黒兄ちゃん」

「え?今のでわかるの?」

「お姉ちゃん鈍い。」

「え?」


ナオミはマチルダに目を細めながらそう言った。

このような部分はマチルダよりはナオミの方がもっと繊細なようだ。


「黒兄ちゃんはその女の子と話したいんだよね? 同じ共通点を持つ人として」。

「……そう」

『姉とオーナーには申し訳ないが、黒兄ちゃんにもいろいろ貸しがありますからね。こういうのは公平でなければ』

「何か言った?」

「いや、何も~」


ナオミはきれいな微笑みを見せながらそう言った。


「私も特に忠告はない。ただ、その子が逃げたのは、黒兄ちゃんが怖い人だと思っていたからじゃないかな?」

『正確には、俺に正体をバレたからだと思うが…』


しかし、彼は静かにナオミの話に耳を傾けた。


「だから黒いお兄さんが、危ない人じゃないことだけ、伝えればいいんじゃないかな?」

「親近感を与えろという意味か?」

「そう。直接会っていないからわからないけど、でも、黒いお兄さんの話を聞いてみたら、歌が好きなら、音楽関係のほうがいいんじゃないかな?」

「なるほど。参考になった。ありがとう。」


彼はそう言って、ナオミの頭をなでてあげる。そんな彼の行動にナオミの耳まで赤くなったが、彼の死角だっだから彼には見えない。

ナオミは慌てて身をよじって赤くなった自分の顔を隠す。


「そ、そんな見え透いた点稼ぎにだまされるナオミじゃないんですよ!私に求愛したいならまずオーナーとお姉ちゃんから攻略して──」

「何と言うの?ナオミ頭痛い?」


もしやナオミが熱が出ていないか、ナオミの額に手を上げるマチルだ。

すぐに、「クッ…」と歯を食いしばるナオミ。


「こ、これで勝ったと思うな!!」”

「あいつは何と戦っているんだ」

「知らないわ。いつものような暴走だろう」


カダルーゾとマチルダは急いで外に出るナオミの後ろ姿を見た。


「マスター。いま、ナオミが顔を赤らめて走り出したのですが、何かあったのですか?」


しばらく外に出てきたレイラは少し驚いた表情で入ってきてそう言ったが、カダルーゾとマチルダは二人とも首を横に振った。


「それよりどうしたんか。お前が私に店を任せるなんて。」

「あ、少し『やるべき事』があったので…」


レイラが言った『やるべき事』とはレポソのオーナーとしての仕事ではなく、カダルーソの管理者であるメネアドルの人間としての仕事。


「そうか?無理はするな」

「はい。」


それにすぐ気づいたカダルーゾはそれ以上聞かなかった。


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