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月光の歌  作者: サンジン
虚空月 篇
12/39

sonata その1。

誰もいない公園。そこで黒い髪の真っ白なワンピースを着た少女は、月の光の下で歌を歌う。

その歌を聞く者はいない。

あるとすれば、少女が持ってきたぼろぬいぐるみだけ。

『今日もきれいな月ですね』

そう思いながら歌を歌う。

まるで誰かを待ち焦がれるような、恋しいような、歌を、


──私は待っています。


月光の下で

白夜の下で


ずっと…ずっと…


だからどうか私を捨てないでください。

だからどうか私のこと覚えてください。


私を見つけて。


どうか罪だけの私を──

存在が罪である私を──


殺して。

救って。


私は待っています。


『誰も私を探せないように、祈っています』

少女は誰も探さない公園で、誰も自分を発見しないことを祈って一人で歌を歌う。

誰かを待ちながら、同時に、待ち焦がれる歌を歌いながら、誰も自分を、存在自体が原罪である自分を見つけることができないように祈りながら──、

「忘れられるなら真っ白に、真っ白に忘れたいです」


──少女はそうつぶやく。





つぶれて廃墟に近い教会の裏庭。

喪服を着ている黒髪の青年はそこの木に綱を吊るす。

首をつるためだ。

迷うことなく首を吊るす青年。軈て呼吸が荒くなる時──

どん!

「………ちくしょう」

綱は切れ、青年は自分の黒い瞳を細く開け、上を見上げた。

木の枝には依然として綱がかかっているものの、まるで鋭い刃物で切られた断面が見える。

枝に縛られたまま、むなしくぶら下がっている綱を見て、青年は地面が崩れ落ちながらため息をつく。

彼はここにいない『だれか』に声をかけるように、静かに口を開く。

「やっぱり、簡単には死なせてくれないな……『お前たち』は」

鋭い切断面で切り取られ、自分の首を巻いた綱を見ながら、青年はそうつぶやいた。

もう自殺はあきらめたらしく、青年は体に土ぼこりを払い、しばらく歩いた。

「……」

名前もほとんど消された墓碑。それが誰の墓なのかは誰にも知らない。

この墓碑をせつなく眺める青年を除けば、

「───」

しばらくしてから、青年はその墓碑に向かって口を開く。

まるで墓参りのような報告よりも、対話に近い言葉を口にする。

「───」

しかし青年のその声は届かない。

決して届かない。

むしろあの時の、


──おね…がい


「くっ!」

青年は頭痛に悩まされたらしく、苦しい表情で自分の頭を抱える。

自分の頭を抱えながら、まるで頭の中にうじ虫がうごめいて蛇がはって行くようなおぞましい気持ちと苦しみを感じながら思い出す。


──私を、…殺して


その言葉に剣を持った彼。

救われたような、微笑みを見せた少女。

「まっ黒に、…忘れたと思ったのに」


青年は苦痛の中で静かにつぶやく。

0楽章の《虚空の月》編をまた見て来たら理解しやすいと思います。

(* ̄▽ ̄)d

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