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私の「 」はどこですか  作者: 仮のkari
7/7

私の階級はどこですか(前編)

「イチチチ...久しいね、ミーミル

見ないうちにまた大きくなったんじゃないのかい?」


「そうべか?」


「魚眼レンズ越しだからなんとなくだけどね

ま、僕と背比べしたら分かることさ」


ちょいと待ちなと言う声が壁の向こうからして、続いて歯車と歯車がかみ合う音が響く


ギギ...グァー...ガッガッガッ


金属と金属がぶつかり合いクセのある力強い機械音を放つ


「さぁさようこそ、我らがヒエラルキー世界へ」


聞いたことのない単語に少女が疑問を持つことは当然であった


「ヒエラルキー?」


ガシャン

壁に一つの穴が出来上がる


「上と下の関係

右と左との手の取り合い」


無機質は動きを止める


「でも、結局信じれるのは自分だけの世界さ」


風が隙間を通り、静かな悲鳴をあげる


「イチチチチ...やっぱり大きくなったね

4cmは大きくなった、間違いない」


「あんださばー!

のっぽさんの出来上がりだべな~」


「...。」


「おっと君が高い声の持ち主かい?」


「イタチ君...。」


「うん?」


「ナーガ君が教えてくれたの

イタチっていう子のこと」


「...ほう

それで僕がイタチ君と?」


「うん」


帽子を深く被った少年が旅人の方を向く


「あはは~チビの洗礼にあっただな~」


「イタチ君か...イチチチチ!それも悪くない

今度から名乗らせてもらうよ、チビ」


「?今まで名乗る言葉がなかったの?」


「そうだね

ストリートチルドレンに名前なんてないのさ」


「どうして名前がないの?」


「親がいなくてね」


「チビも親はいないよ?」


「んー...そうだね」


「...イタチ君もごめんなさいに会ったの?」


少女が帽子の少年の顔を覗き込む


「辛そうだよ?」


「...ま、そこらはおいおい話すさ

とりあえずは僕の住まいにおいでよ」


帽子の少年が風で服をたなびかせながら二人に背を向ける


「チビ、イタチ君の嫌いになっちゃったかな...?」


「だいじぇーぶ

ちょっと違うこと考えてるだけだば」


「うーん...頑張れーしたら元気になるかな?」


「うーん

うーーん

うーーーん

こういう時は自分で頑張れーするのが一番なんだば」


「自分で?」


「そうだば

イタチ君のは人じゃなくて自分で解決せにゃいかんもんだばな」


「...じゃあチビはどうしたらいいんだろ?」


「そっと見守るんじゃ

後ろからジーっとな」


「ジリジリー...」


「...見守るのは分かったけど、僕から離れて迷子にならないでくれよ?」


帽子の少年と少し離れたところでジリジリー...と言う旅人と少女


そして彼らの前に立ち塞がる町

平原の中ウェディングケーキのようにいくつかの層で別れており、最下層から煙が立ちこめている


「僕らストリートチルドレンは基本的に獣人の民と一緒に暮らしているんだ」


辺りの平原は嫌な匂いが漂い、町の塔から汚物が垂れ流されている


「この辺は元々美しい草原だったが今じゃ見る影もない

木一本すら見えない掃き溜めと化したのさ」


帽子の少年は足下に咲いた花を見つめる

毒に浮かされたようなグロテスクな青緑

美しい見た目はそこになかった


「町が全てを壊したのさ

人と獣人の交遊も、緑も、人にとって当たり前にあったもの全てを」


町は今なお様々のものを排泄していた


「何よりも大きなものは人情

獣人と戯れる遊び心も、緑を慈しむ心も...全部だ

人として最も優れた部分を打ち壊した」


町の排泄物の中に油、洗剤の混ざった水、死体

大地が汚染されるのも当然のことだった


「町で住んでいるやつらは気づいちゃいないのさ

草原が汚れることも、自分たちが汚していることも」


「...イタチ君はマチ君が嫌いなの?」


「嫌いさ...何もかも」


「ん~...じゃあ好きなものは?」


「んん?」


「デッカ君がね言ってたの

嫌いなもののことばっか考えてもいい気分にならないって

だから好きなこと話そっかなって」


そう言って旅人を指さす少女


「そうさな~」


お腹を鳴らす旅人


「あはは~恥ずかしか~

なんなら好きなご飯の話しゃんせ?」


「しゃんせしゃんせ」


「...そうだな」


帽子の少年が沈黙し、数刻経ってから口を開く


「サンドイッチかな」


「サンドイッチ?」


「あぁ...それを草原で皆と食べながら空を見上げる時間は何よりも素敵な時間だったさ」


「...イタチ君はソウ君のこと大好きなんだね

お目目キラキラしてる」


「ソウ君...あぁ、そうだな」


少女の作る言葉を理解した帽子の少年が大きく頷く


「町が嫌いなのも全部草原が好きだからさ」


「んー...?

好きになるのに嫌いなものができちゃうの?」


「あぁ」


「どっちも好きになることはできないの?」


「...そうなれたらどれだけいいかな」


「じゃあチビがしてあげる!」


「どういうことだい?」


少女が旅人の手を取る


「チビね、皆の手を取り合ってギュッてするの

マチ君も他のマチ君とも!」


少女はあいた手で帽子の少年と手を取り合う


「マチ君とイタチ君がそのまま無理ならチビが間に入ってあげる!」


「...驚いたな、これは」


「チビはすごいんだわ

あの大雪の中をこの薄っぺらい服でも平気だったし、高いところから降りても怪我一つせんかったんやわ」


旅人が誇らしげに胸を張る


「きっとチビならいけると思うだばな」


「...そうだね」


「できる?

チビならできる?」


「あぁ、できるさ」


「わほほーい!」


少女が町の方へ駆けていく


「彼女は不思議な魅力があるな」


「チビはええ子じゃ」


「間違いないね」


少女が楽しそうに辺りをクルクルと回る


「彼女は光になるかもしれない」


周りは黒ずんだ空気だったが


「僕らの無念を、暗雲を晴らす太陽とね」


彼女の楽しげな様子に


「ん~チビは太陽と言うよりも近くにあるカンテラの光みたいじゃと思うけんな~?」


周りが明るく栄える

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