私のありがとうはどこですか(後編)
「ねぇ、カタミミくんは大丈夫?」
「んまんま
ナーガ君いるから大丈夫さ
まっくろくろすけさんだからきっと今頃二人でほっかほかになってるよ」
チビのじゃ足りないかと少女はふてくされて言う
「ねぇ、ありがとうってどういうもの?」
「んーとね、優しくしてくれた人に送る一番素敵なほめ言葉だよ」
「じゃあ、ナーガくんはすっごく優しいんだ」
「んだんだ
そーなのだ!」
「じゃあ、ごめんなさいってなーに?
えっと…ナーガくんが嫌いだからできればごめんなさいに会わせたくないの」
「そーさな…
自分を傷つけて相手にその傷をみせることかな?」
「じゃあ、ナーガくんはカタミミくんに傷ついて欲しくないんだ」
「んまんま
そーなのま」
「おいおい、ごめんなさいは普通に使う時があるだろう?
チビが誤解したらどうするんだ」
ぎゅっぎゅっと音を立てて、黒づくめの女性は二人に近づく
その後ろには獣人の子もいる
「えへへ、やっぱおら説明へっただ~」
「じゃあ、ナーガくん
どういうものなの?」
「自分が悪いことしたら言う言葉だよ
カタミミくんは悪いことをしてないのにごめんなさいって言ったから怒っちゃったんだ」
「じゃあ、カタミミくんはいい子なんだね」
「…あぁ、とてもいい子だよ」
「さぁさ、そろそろ出発進行だべだべ!
おら荷物持ってて動き遅いからカタミミくんと一緒に後ろについていくさ」
「あぁ、そのほうが何かあったら逃げやすいし、そうするか」
そういうと黒づくめの女性は少女と手をつなぎ、雪に飲まれていく
「おらたちもいくべさ、えぇっと」
「カース…私の名前はカースです」
「んだべか!おらはミーミル
気軽にミルって呼んでケロ」
「はい!」
前の方ではさっそく何やら話し込んでいる
きっと少女が質問しては黒づくめの女性が親身に教えているのだろう
「しーろいあまーいまんまろー♪」
「…あの一つ聞いていいですか」
「むむ?なにさなにさ」
「あの小さな女の子は何者なんですか?
自分なりの名前つけたり、言葉が少しおかしかったり
なんていうか…その、あまり常識がなさそうだなって」
「あはは!そうだわそうだわ
はじめあった時なんかおら、急にデッカ君って言われたんだも
びっくりしたべ」
「あ、べ、別に悪い子じゃないと思うんです!
優しい子だし、悪気もないし…すごく温かみのある子だとは思うんですけど」
「うんうん、そうさな
カイによるときおんしょーしつってやつらしい
それで何も覚えていないみたいで」
「気温?…あぁ!記憶消失ですか?」
「多分、そんな感じ!
一人でいるところをおらが拾ったんだ」
「…もしかして彼女って家族いないんですか?」
「多分そうだな
あの寒空の中一人木の上いたんだわ」
「この雪の降る地に木が?
驚きました、もうここらにある木は全て枯れ果てたと思っていました」
「そこの一本の木以外だと離れた小さな村の跡地に何本かあるんだぞう
葉っぱはとっくに散っとるみたいじゃが
あ、ちなみにそこにカイがおるんじゃ
わしがこれを言うたのは二人だけの内緒だよ
こっそり言ったらカイが怒るんよ」
「二人だけの秘密、ですね?」
「押し花栞万♪
嘘ついたら捨ててやる♪
花とった♪」
独特な旅人の歌声に合わせて二人は親指と人差し指をいたちごっこのように交互に添えて、繋いだ手をブンブン振る
この歌は町の子供たちがする約束ごとの歌だ
「おーい、なんの約束事をしてるのかわからんが、おふたりさんそろそろ町だ
声をおとしてくれよ」
「くれくれよん」
口元に指で作ったバッテンを掲げる前方の二人
「っ…先生、どうしても考えを変える気はないですか?」
「ないね」
短いが、そこに強い意志を感じる
晴れていく空
よくなる視界
そして
目の前に広がる
大きくそびえたつ町
「これが町だよ、チビ」
「たかーい」
「っ…。」
「…大丈夫だよ、カタミミ君」
町のてっぺんは太陽からの光を浴びてキラキラと輝いていた
まるで天に近いものが一番美しく素晴らしいものであるかのように




