私のありがとうはどこですか(前編)
事情知ってる人に言っておきますが、すみませんでした
「クシャ、クシャ、クシャ」
「チビ、それは雪の踏む音かい」
「?うん、このキラキラに乗った時の声」
「じゃあオイラも!
クシャ、クシャ…」
「クシャ、クシャ…」
「「クシャ、クシャ…」」
二人の少女の声が三人だけの世界に広がる
と思われた
「ん?
!?誰かいるぞ!」
女性の言う通り、寒い空の下で何者かが倒れていた
「あれま?
こんなところで寝たら大変だよ~!」
すぐに旅人は倒れた人のもとへ駆け寄る
倒れている人からは
「!…獣人だね」
耳が生えていた
「それも草食のだ…肉食獣に襲われないために町で保護されている草食獣人がどうしてこんなところに…?」
「とにかく温めてあげよう!
すんごい冷え切ってるだべさ!」
そう言って旅人は焚き火の用意をし、自身の寝袋を荷物袋から引っ張りだす
「チビに手伝えることある?」
緊急事態となんとなく察知した少女が駆け寄る
「そんじゃ石をまるっと置いとくれ~」
「はいはいや~」
「ちょうどいいころ合いだしここでご飯にしよう」
「「はいはいや~」」
冷たいこの世界にパチパチ…と暖かい灯が照り映える
「二人は先に食べていてくれ私はこの子の看病をしておくから」
「かんびょう?」
「その人のために精一杯頑張ることだぜな」
「じゃあチビもかんびょうしたい!」
「ここはカイ…ナーガ君に任せよう
ナーガ君はすごい看病が上手なんだ」
「じゃあ、チビはどうしたらいいの?」
「うーん…
あっ!応援だべな応援だ!」
「おうえん?」
「頑張れ頑張れーって思いを伝えるやつなんだわ
これを聞いてたら元気になるんだわわ」
「チビ、やってみる!
頑張れー頑張れー」
「頑張れー頑張れー」
「「頑張れー頑張れー」」
そのエールが届いたのか倒れた獣人の少女は目を覚ます
「あ、あれ…?
ここは…私…」
「大丈夫か?」
「はい…
!えっ…あっ」
目の前にいる女性の姿に気づいた獣人の少女の様子はどこかおかしい
「…私が嫌ならはけるよ」
獣人の少女の様子に何かを察知した女性はその場に離れようとする
「ち、違うんです!カイ先生!
私…その…!
とにかく逃げてください!
町に行ってはダメです!!」
獣人の少女はさっきと打って変わって必死の形相で女性の服にしがみつき訴えかける
「…聞いてあげるから落ち着いてもう一回言って
後、先生は止めて
私は生徒も弟子もとる気はないから」
「す、すみません」
「二人とも、悪いが一旦休憩だ」
「旅は急ぐものじゃないからまったりのびだらと行けばいいさ、ほいさ」
「ほいさ、ほいさっさ」
「本当にすみません…すみません
…本当に。」
目に涙をためた獣人の子を慰めるためにほいさほいさと言いながら背中をさする
「言えるようになったら言って」
「…すみません…本当に
…もう大丈夫ですから」
意を決したように顔をあげる
「私はこの先にある町に住んでいる…いえ、住んでいたのですが
ここ最近カイ先せ…カイさんに対して批判ばっかり言ってる人が…カイさんのこと色々言ってて
…もし町の人たちに見つかったら、先生最悪死刑になります!
後生です!
先生、絶対に町に行かないでください!」
「…異端な芽は早めに摘んでおくってことか…馬鹿馬鹿しい」
黒づくめの女性はこぶしを握り締める
「ここにも警備をまわしているようですしここも危険です
早く逃げましょう!
私は足が遅いですが耳と目がよく利きます
私をお使いください、先生!」
「それはできない相談だ」
「な、どうして!?」
「この子達を町の中へ無事に送り届けるためにそういうことに詳しい知人のもとへ会いに行かなければならないんだ」
冷たい風が二人の間に吹き抜ける
「先生の命を危険にさらしてまですることなんですか!?」
「私はな、顔を合わせたこともない、勝手に慕ってくるやつの願いよりも長い付き合いのこいつらの頼みをきくタイプでな」
こいつらと言って旅人と少女を見つめる
「呆れたならさっさと家に帰ったほうがいいぞ
私と一緒にいてもいいことはない」
「…。」
「か、カイ!
オイラ一回会ったことあるし、オイラだけで行けるよ!
だからカイはあの隠れ場所に」
「ついこの間教えた梯子をはしのごっていうやつが行けるとは思えないな」
「ま、町に入らなくてもいいし!
そうだよ!そもそも町にはいる必要は」
「ミル」
旅人の言葉を黒づくめの女性は片手で制する
「警備の兵に会わないようにすればいいだけだ
…私が原因でチビちゃんが自分の殻に閉じこもったままになるくらいなら私は死を選ぶ」
死という言葉に旅人はビクンと体を震わせる
「…いいな」
彼女の言葉に意見を重ねるものは誰もいなかった




