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一週間ソルジャー、グリーティング

ソードとステルスは第三倉庫とは別の、どこか放棄された工場の様な作業場に来ていた。


「さて、色々面倒なことは教授がやるとして」

ステルスはソードの黒髪を軽くポンと叩いた。

「お前、いやソードには超能力を理解して、手足より使えるようになってもらう。教授が言うには手術は完璧だったらしいから遠慮なくいくぞ。」

ニッと笑ったステルスは、中学生の年相応だった。


ソードは緊張していた。遠慮なく、とはどの程度だろう?


ステルスが少し間をおいてから喋りだした。

「まず、超能力な。超能力を理解するには生体エネルギーを学校の保健体育なんかより、しっかり知らないといけない。教科書では生体エネルギーと超能力については、理由があって適当に書いて誤魔化してるしな。


超能力の源になる生体エネルギーは、大脳、まあ要するに脳ミソの中で発生して、それが体内にすぐに流れて、最後は身体の表面へと満遍なく放出されて覆うものだ。言葉だと分かりにくいから、金色の眼で俺をみてみろ。」

ソードは眼をサイコビジョンにかえた。風景が白黒になり、ステルスの生体エネルギーだけが輝いて見える。

「生体エネルギーは、生きている間身体から熱が出てるのと同じように、ずっと放出されている。

それだけじゃなくて、これが自分の身体だと思ったものも覆ってしまうから、例えば足で不自由してる子供が車椅子に座ってる間、生体エネルギーが車椅子ごと子供を包んでたりする。

俺は髪の毛から服から靴の裏まで満遍なく覆われているだろ。」

ステルスが片方の靴を脱ぐ。脱いだ靴は生体エネルギーの輝きが薄くなり消えた。

「俺が靴を脱いだら靴には残存エネルギーが少し残って消えた。超能力を使ったり、強いエネルギーは長く残るから、それを残留思念とか残留エネルギーとか言ってるけど、強いエネルギーが流れた後が見えるだけで意思はない。

生体エネルギー自体はただのエネルギーだ。

教授によると昔、攻撃的な意思を持った生体エネルギーを残留させて、超能力地雷みたいなことをする実験があったらしいが、

エネルギーに意思を持たせ続けるなんて出来なくて、残らず消えてしまうから失敗したらしい。」

喋りながら上を向いたり横を向いたりしている。ステルスの中で知識をまとめながら話しているようだった。


「生体エネルギーは、中学生になって思春期のホルモンバランスとやらが変わったり、生体エネルギーを出す所が弱くなって操作不能になったりもあって、年取ると薄い膜だけになる。

『火事場のくそ力』みたいな状況になった時とかに、物を持ち上げる時全身の生体エネルギーが手に集中して、ちょっぴり助けになることもあるらしいが、

普通はどんなに気合いを入れて人や物に触れても超能力は発揮されない。

小学校ではまだ『閾値』なんて言葉は習ってないよな?」

ソードは首を横にふった。

「生体エネルギーが超能力が起きる程度の大きさで物にあたれば、物が動いたり壊れたり宙を飛んだりできる。つまり、ある程度の大きさの生体エネルギーがいるんだ。

んで、超能力になるほどの生体エネルギーを身体から出せるのが小学生の子供の内だけ、ということなんだが…。」

分かるかな?とステルスが聞くと、ソードは分かります、と言わず、聞いてますと答えた。

「正直な奴だな。俺も説明は苦手だからな。」ステルスは苦笑いしたあと、急に真面目な顔になった。


「こっからが本番で、俺達が戦うのはひもでも生体エネルギーの薄い大人でもない。分厚い生体エネルギーと殺意を持った偽天使だ。だから、強い生体エネルギーを持ったもの同士の話をする。」

「生体エネルギーと生体エネルギーがぶつかったら、強い生体エネルギーの流れが相手のエネルギーの流れをぶち破りながら、最後は相手の皮膚とか表面に届く。そうすると生体エネルギーを通して超能力が使える。教授は特殊だけど、俺達の場合はサイコキネシスだ。」

「つまりエネルギー対エネルギーになって、最後にエネルギーが相手の身体に届いたらそいつの負け、て事になる。勿論相討ちもありうる。輪っかを壊して天使も死んだが自分も死んだ、なんて仲間も、見てきた。」

「それなら、」ソードは怯えた。

「それならどうやって戦うの?」

「本能で天使と戦ってみせた奴がビビるなよ」

ステルスが笑う。

「あれはいきなりだったから…」

「その『いきなり』であの防御が出来たから、お前は天才なんだ、ソード。防御出来ないでマジで死んだかと思った。死んでたら俺は一生、偽天使の隙をうかがってた自分を責めてただろうな。」

ステルスは少しだけ目を伏せた。


「ソード、お前は、俺達が基本戦術にしている『槍と盾』の盾を不完全でもとっさにやってみせたんだ。原理は単純だ。だが、やるとなると度胸がいるし難しい。じゃあ、話はここまでにして、実践訓練といくか!」


訓練が始まった。

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