登校、暗示
次の日、通学SPと称される警護人つきの集団登校をしている道路に教授はいた。
通学路に佇む全身黒の見た目50代の男。
明らかに不審者である。
「お早うございます。すみませんが、今生徒が登校してますので…」
SPが駆け寄ると教授の目が銀色に光った。
「私はお宅の小学校に在籍しております不動君の保護者のものです」
「貴方は保護者の者ですね」
「結城が忘れ物をしたのでそれを届けに来ました」
「忘れ物を届けてあげて下さい」
教授を知らない小学生の、警戒をはらんだお早うございますの声に軽く答えつつ、教授は不動の元へと急いだ。
「あ、教授じゃん」教授を知る小学生が騒ぐ前に、教授は手を横にふった。
超能力認知過小。
視覚でとらえても路傍の石の様に認知されない。
「不動結城くん」教授は不動にだけ超能力を弱めて声をかけた。
「え?教授?」困惑する不動の体表を包む生体エネルギーの頭部に向かって教授が生体エネルギーを発して干渉した。
『学校の裏山にある廃屋。その建物から通じる秘密基地で君を待つ』
不動の頭のなかに直接言葉を叩き込むと共に、場所を誘導する。
テレパシーと洗脳の2つを行った。
「分かったよ、教授」
半分眠った様なとろんとした目の不動の言葉を聞いた教授は、すまないと独り言を呟くと、さらに超能力を使いつつ、その場を急いで去った。
結局、集団登校は集団五分遅刻になり、SPが叱責を受けたが、教授の超能力が効いたのか、何故遅刻したかは誰も覚えてはいなかった。