6.ポカポカを求めて
もうすぐお昼になる手前の時間に家を出ました。
普段外出する際は自転車を使うのがほとんどでしたが、今日は珍しく徒歩での外出でした。
玄関の扉を開けて外に出ると、強めの風に当たりました。私の家の玄関前の道は風の通り道。風が他の道よりも強く、そして冷たいです。おまけにその道は日陰になっている時間が長く、日向になっている時間といえば朝方だけです。なので、私がその道を好むのは夏だけです。
風に吹かれながら、道を歩きます。歩いてすぐに交差点が現れます。同時に、日陰から出て、日向に入りました。すると、先程まで吹いていた風が止み、ポカポカとした陽光に照らされます。私はその陽気に和みながら歩きます。
外出した理由は散歩でした。特に理由はなく、強いて言うなら、ただ日向ぼっこをしたかっただけでした。
ある程度道を進んでいくと、川が現れます。川を挟むように道が伸びています。この道には沢山の植物が生えていて、その緑色の中に咲く花はとても目立っていました。
私は花を見ながら川に沿って歩きました。
すると、独特な羽音が聞こえてきました。私はその音のする方を見ると、そこには一本の花が生えていました。そこに一匹の虫が花の周囲を飛び回っているのが見えました。黄色い体をしていたので、蜜蜂だと思いましたが、虫の知識には疎いので、本当かどうかは分かりませんでした。でも、その虫は花に止まっては飛び、また止まっては飛び、花の蜜を探しているようにも見えました。私は花の蜜を探して飛び回っている虫を少しだけ観察して再び歩き始めました。
再び川に沿って歩いていると、今度は川の中を泳いでいた亀を見つけました。その亀が泳ぐ先には、川から上がることができるスペースがあり、そこには沢山の亀達が日向ぼっこしていました。そこへ泳いでいた亀がやってきました。亀はゆっくりとそのスペースに入ると、他の亀と同じく日向ぼっこを始めました。
日向ぼっこをしている亀達を眺めていると、突然亀達が次々と川の中へ飛び込んで行きました。私が眺めていたからでしょうか。なんだか亀達の日向ぼっこを邪魔してしまったような気がして、少し申し訳ないと思いました。私は小さな声で謝ると、再び歩き始めました。
ある程度進んだところで、道が行き止まりになりました。私は満足して、来た道を辿り、家へ帰りました。
今日はポカポカとした良い天気でした。最高のお散歩日和とは正に今日のことを言うだろうと実感しました。
「たまにはこういうのも良いなぁ」
家に帰ると、そう呟きました。