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従者のお仕事  作者: 那智
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隣国のお姫様(1)


あれから早いものでおじさまに拾われてから一年が経った。

今の俺はこの国の大臣だったおじさまの付き人としてお城で働いている。

城勤めなんてずいぶん出世したなあ、なんて思いながら仕立ての良い服に袖を通し、伸びた髪の毛を三つ編みに結ぶ。それから短いネクタイを締めると最後に鏡で身だしなみチェック。

うん、たぶん変なところはないはず。

毎朝めんどくさいが嘗められないためには必要なことである。そのおかげでめっちゃ器用になった。主に三つ編みで。

・・・森で暮らしてた時はこんな服着ることになるとは思わなかったけど人間慣れるもので今ではそれなりに着こなせてるんじゃないかなと思っている。文明開化である。


軽く朝食を済ませ仕事場に向かえばすでにかりかりとペンを動かす音が聞こえる。

ドアを開ければそこにはトルリトリス大臣、バロン・イェルリの姿があった。眉間のしわを見る感じまた面倒事を押し付けられたんだろうか。

よくそういう顔をしているのを見るから心配だよ。少しでもお手伝いできてるならいいんだけど。


「おじさま、おはようございます」

「おはようシグリッド。 今日も元気そうでなによりだ」

「昨日はお休みをもらいましたから体調はバッチリですよ。 それで今日のお仕事はどうしましょ? また書類整理でもやりましょうか?」


現在の俺の主な仕事は言うなれば大臣補佐ってところだろう。肩書きだけ見れば立派だがやってることは雑用である。

例を出すなら書類をまとめたり簡単なお使いをしたりなんかしてる。あ、あと計算とかならできるからそっちの手伝いも。

いつもならここで「なら頼むぞ」もしくは「いやこっちの仕事を頼む」なんて言われるのだけど今日は違った。


「いや、そのことだがなシグリッド。 お前には今日から別の仕事を任せることになった」

「別の・・・ですか? ただでさえ俺のお仕事内容ふわっとしているのにそれとは別件で?」

「そうなるな。 と、いうよりも今回かなり特殊でな。 頭の痛いものだ」


そう言っておじさまは一枚の紙を手渡してした。


「なになに・・・『任命状 バロン・イェルリ配下 シグリッド。 上記の者をエストリア王女 フィオラ・リリエホルム・エストリアの従者に任ず』。 なんですかこれ? 俺はおじさまの使用人なのになぜに命令を? 王さまのサインまであるし・・・」

「それがまかり通るのが今のこの国というわけだ」


本来ならば俺がこの命令に従う必要はなかったりする。というのも先ほど城勤めと言ったが厳密には少し違うからだ。


通常使用人は名目上王に雇われていることになっている。だから王は彼らに対しての命令権を持つわけだ。

だが俺はおじさまことバロン・イェルリに直接雇われている個人的な使用人である。そのため俺に対する命令権はおじさましか持っていない。

まあ城で働いている以上雑用やらを任されることはあるのだがそれでも限度はあり、雇用主を通さず勝手に命令されることは基本的にない。ましてや勝手に配置変えとかもってのほかだ。


「というか俺がお姫様の従者って・・・なに考えてるんですかこれ命令した人」

「考えずとも大方ただの嫌がせだな」

「どっちに対してのです?」

「そりゃあ両方だろうよ」


そりゃまた熱心なことで。面倒事に巻き込まれて悲しみしかない。

おじさまはなにかあるたびにこういう嫌がらせを受けているらしい。ほとんどはスルー安定らしいが。

そんで今回はその矛先をエストリア王女にも向けた、と。

誰が主犯かは知らないけれども王族相手にケンカ売るとかすごい度胸だと思う。まあこの国の貴族のほとんどって他国を下に見まくっているから驚くことではないけど。


「それでだな、今回はあえてやつらの思惑に乗る」

「それはなぜに・・・あっ、防波堤? 姫様に直接ちょっかい出されるのを防ぐ感じですか?」

「話が早くて助かる。 そうだ、やつらは認めようとせんが近頃エストリアの国力は右肩上がりだ。 もう少しすればトルリトリスに並ぶ国力を得るだろう。 ああ、これはまだ誰にも言うなよ?」


なんかさらりと機密情報言われた気がする。まあスルーで。


「えっと、つまるところ俺はどうすれば?」

「難しいことは考えんでいい。 お前は真っ当に仕事に励め。 裏の事はワシの仕事だからな」

「まーその辺のことは俺じゃ対処できませんからね・・・。 それじゃお姫様のことは任せてくださいおじさま」

「頼んだぞ。 ああ、その前に何人かに声をかけておけよ。 必要になるかも知れんからな」

「あー、わかりました。それじゃ行ってきます」




それからお姫様の部屋の前に着いたのはおおよそ一時間くらい後のことである。


「よーし・・・大丈夫大丈夫。 だよね? たぶん。 おそらく。 これでもある程度は礼儀作法できてるはずだし」


完璧と言えないのは悲しいところである。今までは農村出身だってことを考慮されて甘めに見られてたから・・・その弊害だねこれは。

それはともかくさっさと顔合わせしちゃおう。そうしなきゃなんも仕事できないし。

そういうわけでノックする。


「はーい。 入っていいわ」

「失礼します。 この度姫様の従者に任命されたため挨拶に来ました」


扉を開けるとまごうことなき美少女がいた。

明るい茶髪にパッチリした蒼い瞳。着ているドレスは一見地味で財を凝らしたものではないが刺繍とかデザインを見る感じめちゃくちゃ凝ってる。それなのにまったく違和感なく着こなしている。というかそういう服を着ているのが自然って感じだ。

くっ、まぶしい・・・語彙力が残念なせいでうまく表せないけど高貴ってこういうことをいうんだなあ。


「話は聞いてるわ、あなたがそうなのね。 はじめまして、私はフィオラ・リリエホルム・エストリア。これからよろしくね」


そしてこの笑顔。いやほんとまぶしい。

話をどこで区切るかでめっちゃ悩みます。

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