淡く切ない恋心の始まり
おもむろに飛び出したものの。飛び出したものの、だ。
「・・・。」
ただ虚しさと怒りと悲しみが渦を巻いてどうしたらいいのかわからない。
でも他に帰る“場所”なんて 私にはない。
来た道を何度も何度も通ってはまた同じ思考に陥る。
「帰りたくない。」「帰る場所なんてない。」endless repeat。
結局元来た道を戻り、とてつもなく重い足を一歩ずつ前に前に
だしながら階段を上っていく。
帰るしかない選択に突然悔し涙がこぼれた。
帰るしかないから帰る-----.
だけどもう彼氏に心は全く向いていなかった。
仕事に行き、帰る時間をずらし、敢えて仕事を作り、
他愛無い残業の時間の間だけが心がほんのり和らいだ。
そんなある日、一通のメールが届く-----------------.
珍しく定時に会社をでた私はここの所調子が悪い歯の治療に
通い詰めていた。間をあけながらもなんとか。
あれ以来、彼氏の事をやんわりと避ける生活は続いていたものの
今のわたしじゃどうする事も出来ず、ただひたすらお金を貯める事に精神を向けていた。
さよならを告げれるように------.
歯医者の順番待ちの間に彼が好きだと聞いた漫画を手に取る。
だんだん惹かれてるのは分かっていた。今はただ知らないふりを
していなきゃいけない。ただの仲のいい同僚でいる事に必死だった。
彼とは同僚同士の3人での飲み会以来、仕事内容も含めてメールのやりとりを
するようになっていった。
仕事内容だったり、他愛無い会話だったり。
仕事の為じゃなく、彼との時間が欲しくて残業するようになっていった。
「今日はメール来ないのかな。」
マメな方じゃないのか返事が無くなると3.4日来ないなんて
当たり前だった。そのたびに切なさで埋もれそうだった。
「はああぁああぁああ。」
息を吐くような溜息をしたとき。
「♪~」
ランプが光った。
「今晩予定ありますか?」
そのメールを開いた途端、心が飛び跳ねた。
にやにやどころじゃない。周りから見たらただの変質者並みのにやけ方。
「歯医者が終わればとくに予定はないですよ!」
心とはウラハラに文章はきっと淡々と届いていたんだろうなあ。
もうそこからにやけた顔は戻らない。
いっそのこと歯医者明日にずらしてやろうかと思ったぐらい。
その後の返信で
「良かったら晩飯一緒に食べませんか?」
まさかのお誘い。いや、明らかお誘いの雰囲気は読めていたけど(笑)
早々と歯医者を終わらせて待ち合わせ場所へ走っていく。
「プライベートで会うのいつぶりだろう。」
1度彼と二人でご飯は行った。
その時は本当にただの同僚さんでおたがいカラオケが好きってことで
意気投合して。彼が見つけてくれたお店にご飯を食べに行って
その後はお決まりのカラオケ。採点ゲームしてただただ盛り上がって
楽しかったね、また行きましょう!って感じのノリだった。
あの時はあの事件の後でほとんどご飯が食べれなかったけ。
気遣ってくれた彼は全てシェアで食べたなあ。
とてもやさしくてその時の心にとてつもなく染み渡っていった。
それ以来のごはんのお誘い。そして急なお誘いで心が今にも
パンクしそうだった。
もうこの時から私は彼に恋をしてたんだ。
彼との時間が宝石みたいにキラキラ輝いてた。
前に待ち合わせした場所へ急いで駆けていく。
「何食べます?」
会えたことにわたしはただただうれしかった----------------。