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黒魔族五人衆、登場!

 人間界での、黒魔族と戦士達の欠片を巡る戦いは、一進一退の展開を見せていた。美衣子達は、黒魔族が一般の人達を傷つけないように気を付けながら、個々に欠片を探していた。

 水仙人の話しによると、自分たちが人間界へ降りた時に、ファイヤーストーンの欠片らしき光が二つ飛んだという。ということは、欠片が二つ、人間界にあるということか。


 ある日ジースは、森の中で黒魔族のモンスターに襲われている子どもを見かける。急いで駆けつけ、子どもを逃がす。

 敵はジースより一回り大きい、竜の姿をしていた。竜が口から火を吐く。ジースは後ろに飛んで避けた。稲妻の剣を構え切りつけるが、鱗は硬く、切れない。

 ところで、ジースの稲妻の剣、ここ人間界では法に違反して持てないことになっている。ではどうしているかというと、サイーダの魔法で小さくして懐に隠しているのだ。そして、必要な時に大きくなる。要するに、パンパンのドラムセットと同じやり方だ。

 戦いの物音を聞いて、近くにいた美衣子、美理子、うさちゃん、ジェルとマーキスが走って来た。

 それに気付いた竜のモンスターが名乗りをあげる。


「仲間が来たようだな。じゃあ俺は名乗らせてもらう。俺は黒魔族五人衆の一人、飛龍(ひりゅう)だ!」

「黒魔族五人衆!?」

「その通り。俺達黒魔族五人衆は、黒魔族の中でも、特に優れたモンスターや人間を選んで結成された、いわば、幹部というものだな。ダル様に仇なす者は、俺達が許さない! さぁ、俺の力、受けてみるがいい!」


 飛龍はさらに大きな炎を口から吐いた。ジースの剣がそれを受けとめる。

 それを見て飛龍はニヤリと笑った。


「馬鹿め。俺の炎は何でも溶かす毒の炎。ほら見てみろ。お前の自慢の武器が溶け始めているぞ」

「何っ!?」


 ジースの顔色が変わった。稲妻の剣が、刃の方から徐々に溶け始めていく。


「ジース、手を離して!」

「無駄だよ」


 炎は刃を渡り柄を握るジースの手に燃え移る。そのスピードは、異常に速い。


「俺は自分の炎を自在にコントロールできる。さぁジース、毒の炎はどうだ?」

「うわあああああっ!」


 ジースの全身に炎が回りだす。稲妻の剣は、完全に溶けてしまった。


「ジース!」


 美衣子の魔法は使えない。小人達が風を送れば、ジースを包む炎は勢いを増す。ならば、


「アイソトニック・ブリザード!」


 吹雪混じりの風。これなら冷気が混じっている。狙い通り、ジースの炎は消えた。

 気を失い倒れた彼をうさちゃんが安全なところで介抱する。

 続けて攻撃。


「ライディンスピリッツ!」


 飛龍の頭上から巨大な雷が直撃する。

 美衣子の、新たな魔法だ。


「ウォーターフラッシュ!」

「スーパーウインド!」


 美理子と小人達も援護する。

 彼女達の息のあった攻撃に、さすがの飛龍も押され気味だ。

 しかし致命傷は与えられない。あの硬い鱗が邪魔をしている。


(何とか、あの鱗を切れれば……)


 うさちゃんの手当てで気が付いたジースだが、稲妻の剣を失った彼に成す術はない。

 その時ーー、


 ピカッ!


 一条の光が空から落ちたと思ったら、急に眩しさを感じ、一同は目を閉じた。やがて目を開けると、ジースの足元に一本の剣が刺さっていた。


「これは?」


 稲妻の剣より少し大きいが、軽く持ちやすい。電気のように、刃に光が走っているのが分かる。飛龍は、背中にゾクッとしたものを感じた。ジースはその剣を構え、飛龍に向ける。

 後ろに、美衣子と美理子とジェルとマーキス。前にジースとうさちゃん。飛龍に逃げ場はなかった。


「フッ」


 毒の炎をジースにめがけて吹く。ジースは剣をひと振り。炎は、飛龍に逆戻りした。


「ギャアアアアアッ!」


 自分の炎で苦しむ飛龍。

 その不思議な剣の感覚に、ジースは驚いていた。

 稲妻の剣より、はるかに丈夫だ。

 一振りで、飛龍の炎を相手に返すなんて。


(なんて剣だ……)


 飛龍は炎の威力をコントロールし、火を消した。

 が、ジースが手にした新たな武器に、恐怖を感じていた。

 最強の自分の炎が、跳ね返されてしまうなんて。

 その心を見透かしたのか、ジースが叫んだ。


「この剣が何故俺のところに来たか知らないが、稲妻の剣を失った俺には救いの武器だ。さぁ、この剣で、お前を倒す!」

「や、止めろ!」


 ザッ。


 一閃。

 ジースの剣が飛龍の硬い鱗を切り裂いた。


「ギャアアアアアッ! 俺が、負けるなんて!」


 逃げる事はできなかった。硬い鱗も自慢だったが、それさえも敵わず、一瞬のうちに斬られた。

 彼は断末魔の叫びを上げながら血を吐いて倒れる。身体は黒い煙になり消えた。


「やったね。ジース!」

「ああ、みんなとこの剣のおかげだよ。ありがとう」

「それにしても、不思議な剣だよね」


 美衣子が剣を覗き込む。


「そうだな。後でサイーダ様にお聞きしてみることにするよ」


 和やかな雰囲気の中、飛龍に襲われていた子どもが現れた。


「あ、あの、ありがとうございました。これ、良かったら貰ってください」

「これは?」


 ジースが子どもから受け取ったもの。キラキラと太陽に反射している透明な欠片。


「もしかして……」

「この森の中で見つけたんです。きれいだったので記念にポケットに入れました。でも、お兄さんにあげます。ありがとうございました」


 子どもはペコッと一礼をして森の奥に消えた。


「ジース、それって……」

「ああ、ファイヤーストーンの欠片かも。そのペンダントと見比べてみよう」


 美衣子の胸のペンダントに近づけた途端、


 ピカッ。


「欠片が、共鳴してる」

「間違いないな。これはファイヤーストーンの欠片だ」

「じゃあ、これで三つ目だね」

「ああ。早くサイーダ様に報告に行こう」

「うん!」


 ジースは大切そうに欠片を懐にしまう。


「しかし、その剣といい欠片といい、今日はラッキーな日だね」

「きっと、ジースの運がいいのよ」

「ハハハハハハ……」


 楽しげな笑い声を響かせて、戦士達はアジトへと歩いて行った。



「ほう、お前さん方、珍しいものを持っておるな」


 美理子達がアジトの扉を開けると、ひょこっと水仙人が顔を出した。


「水仙人様、どうしてこちらに?」

「ご無沙汰しておるからのう。サイーダ様にご挨拶に伺ったのじゃよ」

「みなさん、お帰りなさい。さぁお疲れでしょう。中に入って、お休みなさい」


 ニコニコ顔のサイーダが出迎える。久しぶりに水仙人に会って嬉しかったのだろう。

 みんなが座ったところで、ジースが森での一連の出来事を話す。


「そうですか。欠片が一つ見つかったのですね。それは喜ばしいことです。それと、新しい剣が手に入ったのですね」

「はい。こちらです」


 ジースが剣をサイーダの前に取り出す。

 パンパン他、森に居なかったメンバーが覗き込む。


「ほう、やはりこれは珍しいものじゃ」


 剣を凝視していた水仙人が呟く。

 彼は何か知っているようだ。


「水仙人様、この剣をご存じで?」

「うむ。これは聖空間に伝わる四つの聖剣の内の一つ、雷光剣(らいこうけん)じゃ。雷光剣は、稲妻の剣など雷を操る剣の中では最高の力を持つ剣じゃ。聖剣は、それぞれ自分の意思を持ち、自分を一番上手く扱ってくれそうな者の下に飛んで行く。雷光剣は、自分の意思でジースを選んだのじゃな。しかし、空間を超えて、人間界まで飛んでくるとは驚きじゃ」

「自分の意思で、俺を……」

「そうじゃ。大切に使わねばなるまいぞ。ジースよ」

「はい!」

「それと、もう一つ気になることがある。黒魔族五人衆のことじゃ」


 一同、真剣な表情になる。


「彼らが現れたとなると、黒魔族は本格的に動き出したということじゃ。今まで以上に、厳しい戦いになるじゃろう。気を引き締めていかんとな」

「その通りです。ファイヤーストーンの欠片はあと二つ。厳しい戦いになると思いますが、どうか、みなさんの力をお貸しください」

「はい、サイーダ様!」


 サイーダのお言葉に、身を引き締める戦士達だった。


「それからもう一つ、あなた方にお知らせしたいことがあります。この水晶玉を見て下さい」


 サイーダが部屋の中央に水晶玉を置く。

 その中には黒魔族の城が映し出されていた。城の回りには魔界の植物が植えられており、モンスターもたくさんいる。入り口に四人ほどの魔兵士。見張りだろうか。

 城の中に場面は移る。黒い豪華な椅子に座っていたダルが数人の魔兵士を連れて歩き出した。着いた場所は地下室。そこには巨大な魔法陣が描かれていた。魔法陣から負のエネルギーが溢れている。ダルと魔兵士が何かを話しているが、内容は聞こえない。映像はそこで途切れた。


「この巨大な魔法陣から、黒魔族は何かを呼び出そうとしているらしいのです。まだはっきりとした情報は分かりませんが、どうやらそれは、魔空間に眠る恐ろしい生物かもしれません。そして、それが私たちの世界に影響を及ぼす可能性があります。ですから、私たちは黒魔族より早く、ファイヤーストーンの欠片を手に入れる必要があります。頑張りましょうね」

「オーッ!」


 戦士達が声をあげる。そんな中、水仙人は一人浮かない顔をしていた。


(あの魔法陣はもしかして、アレを呼び出すためか……。そうじゃとすると、この戦いは……)



 真っ暗な闇と共に悪夢がやって来たのは、その次の日だった。その瞬間、街にいた人々は、全てを覆い尽くすような妖しい光を放った霧に襲われ、みんな凍りついてしまった。やがてその霧の中から、何十人という魔兵士が飛び出して来た。

 彼らは街のちょうど中心に立つと手と手を繋ぎ、大きな円形の形に並んだ。すると、その中から、


 ゴゴゴゴゴゴ……。


 道路のアスファルトが割れ、空まで届くような巨大な搭が現れた。


 ビカッ。


 搭は妖しく光る。

 ダルの声が響きわたった。


「魔兵士達よ。その巨大な搭に、人間達の魂を封じ込めるのだ。そして、集められたその魂で、魔空間に眠る我らの神を復活させるのだ!」


 魔兵士達が凍りついた街の人々を搭に投げ込む。

 搭の中で人々は身体から魂を抜かれ、生ける屍と化した。


「mirikoworldの勇者達よ。もうすぐこのデスキャッスルに人間達の魂が集まる。その時こそ、お前達の負ける時だ。ハハハハハハ……」


 暗闇は、街から街へ広がっていく。

 アジトに集まった戦士達にも、焦りが広がっていた。

 サイーダが話し出す。


「黒魔族は、デスキャッスルという巨大な搭に、街の人々の魂を封じ込め始めています。その魂を犠牲にして、あの魔法陣から何かを復活させるつもりでしょう。何としても、デスキャッスルから人々の魂を救い出さなければ、手遅れになってしまいます!」

「はい、サイーダ様!」

「とにかく、現場へ向かいましょう」


 サイーダを先頭に戦士達は走った。


「ひ、ひどい……」


 現場に着いた戦士達は、あまりの惨状に息を飲んだ。

 建物は破壊され瓦礫の山と化し、道行く人々は凍らされ転がっていた。それを魔兵士達が一人づつ運んでいく。


「止めろ!」


 パンパンと妖精達が黒魔族に向かっていく。気付いた黒魔族は凍らされた人々を地に置き、振り向いた。

 他の魔兵士も駆けつける。


「光の演奏!」


 パンパンがドラムを叩き、妖精達がオカリナを吹く新技だ。もちろん妖精サイズのオカリナで、これは敵を眠らせる効果がある。


「ファンタジードリームス!」


 うさちゃんが見せる幻想の世界。

 ワンメー、カン、リースもあちこち動き回って頑張る。

 うさちゃん達が魔兵士をひきつけている間、サイーダ、美理子、美衣子、ジース、小人達はデスキャッスルを破壊しようと近づいていた。

 そばに来るとその大きさがよく分かる。

 黒くそびえる闇の搭。

 その間にも、街の人々が搭に吸収されていく。

 急がなくては。

 サイーダは両手を胸の前に構え、気を溜める。


「ハッ!」


 一気にそれを放った。

 美衣子達も続く。


「ウォーターフラッシュ!」

「エレクトロニックサンダー!」

「スーパーウインド!」

「雷光衝撃波!」


 しかしーー、


「バリアー?」


 各々放った技が全て跳ね返されてしまった。


「サイーダ様。あのバリアーを破るには、一点を集中して攻撃しましょうぞ」

「水仙人様!」


 美衣子が見つめる視点に水仙人がいた。

 彼も攻撃に加わる。


「ハアアアアアアッ!」


 戦士達の一点集中攻撃で、バリアーは崩れた。


「サイーダ様! 早くデスキャッスルを破壊しましょうぞ。黒魔族は多分、ダークキングを復活させるつもりですぞ」

「ダークキング?」

「そうですじゃ。奴は一千年前に、ミーアノーア様が封じられた黒魔族の神そのものですじゃ!」

「その通り」


 ダルの声が聞こえる。


「ダル!」

「サイーダよ。久しぶりだな。またこうしてお前と合間見えることができて嬉しく思うぞ。今、デスキャッスルにはたくさんの人間達の魂が集まっている。ダークキング様の復活も、もうすぐだ」

「そんな事はさせません!」

「そうか。では、こちらも刺客を送ろう。幻矢(げんや)! 龍妃(りゅうひ)!」

「ハッ!」


 デスキャッスルの上から二つの影が飛び降りた。


「俺は黒魔族五人衆の一人、幻矢!」

「同じく龍妃!」


 幻矢は、見た目は人間の男だった。髪は長く、顔立ちもいい。腰に弓矢を装備している。龍妃は、一目で分かる(ドラゴン)の女戦士だ。手には槍を持っている。胴から長く伸びる尾を引きずっていた。


「その二人を倒し、見事デスキャッスルを破壊して見せるがいい。では、また会おう。サイーダ」


 ダルの声が消える。

 美衣子達は、幻矢と龍妃に向きあった。












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