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残された希望

 ゴゴゴゴゴゴ。


 ダークキングとmirikoworldの戦士達の戦いは続く。が、空を飛べるダークキングに対して、戦士達は圧倒的に不利だった。こちらも、フェアとリィが空を飛べるが、スピードはダークキングの方が上。それに、体格差もある。戦士達は防戦一方となっていた。


 ハアハア……。


 もう、大分長い間戦っているような気がする。疲れが見え始めていた。

 ダークキングは余裕の表情だ。汗もかいていない。


「さぁ、最後の時だな」


 ダークキングが近づいてくる。


(もう手はないのでしょうか。私達には、どうする事もできないのでしょうか……)


 サイーダも半分諦め顔で下を向いている。


「うっ、うっ……」


 美理子達も悔しさで泣きそうになっていた。


 ザッ、ザッ、ザッ。


 ダークキングの足音が聞こえる。

 このまま殺されるのを待つしかないのか。


(お母様……)


 サイーダが母にすがる思いで、懐の石を取り出した。


(お母様、私達には、どうすることもできないのですか? このまま殺されるのを、待つだけの運命なのですか? 教えて下さい。お母様……)


 サイーダの心の叫びに答えるかのように、手の中の石が光り出した。

 サイーダの視界がぼやけて、光の中に吸い込まれていく。


(サイーダ……)


 光だけの世界に、ミーアノーアの声が響く。


「お母様!」


 サイーダが母の元へ近づいた。


 物心ついた時、自分の側にいたのは水仙人だけだった。その頃から、もう、自分の親はいないのだと気がついていた。

 ミーアノーアとダークキングの決戦から、およそ二百年経っていた時だったか。mirikoworldは戦いの傷が癒え、荒れ果てた大地には自然が戻ってきていた。新しく生まれた命もある。

 サイーダは水仙人に育てられながらこの大地を見守り、女王の力に目覚め、人々と協力して村を作った。再生していく大地。生活も豊かになっていく。サイーダはいつか黒魔族が復活することを予言し、水仙人と共に再び眠りにつくことを決める。それは体を休める為と力を温存する為であった。すでに女王としてサイーダを称えていた人々はそれを受け入れ、彼女達が起きる時まで代々その事を伝えていくことを決意し、神殿を作った。その神殿の中でサイーダと水仙人は眠りについた。大切な女王様が眠る場所として、神殿の周囲は人が集まり、やがて街ができた。それが、聖地ミリルークである。


 サイーダと水仙人は四百年の眠りの後目覚め、それから先はmirikoworldの全ての生き物と共に大地を発展させた。たくさんの生死も見てきた。その度に、命の尊さを知り、慈しみ、愛した。

 だから、大切なものがあるから、今ここでダークキングに殺される訳にはいかない。それが本音だった。


 母ミーアノーアの幻がサイーダを抱きしめる。


「お母様……」


 感激のあまり泣いてしまうサイーダ。


「泣かないでサイーダ。あなたにはまだやることがあるでしょう」

「お母様」


 ミーアノーアの優しい声がサイーダの心に響いてくる。


「あなたには、ここにいる勇者達と共に、平和な世界を作るという使命があります。まず、ファイヤーストーンの欠片を五つ全て空に掲げ、元の姿へと戻すのです。その時こそ、離れていた二つの大地が一つになる時なのです」

「二つの、大地!?」

「そうです。元々、mirikoworldとブラックグラウンドは、一つの大きな大地でした。ダークキング達黒魔族も、元はmirikoworldで生きていた正しい者達。それが、魔空間の邪悪な光を浴びて魔族となってしまいました。そして、その大きな大地も衝撃のあまり、二つに別れてしまったのです」

「そんな事が……」

「一千年前のあの戦いの時、わたしはダークキングの魂をしばらく眠りにつかせることに成功しました。しかし、闇の力はmirikoworld全土に広がりつつあったのです。そこで、わたしと生き残った者達は、命を捨てる覚悟でファイヤーストーンに願いを込め、闇を光に変えました。わたしは、力尽きてしまったけれど、あなたに魔法をかけていたの。時が来たら、目覚めるようにと」

「そうだったのですか……」


 サイーダにとってそれは、初めて聞く事実だった。

 何故水仙人は教えてくれなかったのだろう。

 いや、教える間もなく、彼女自身がさらわれてしまったから。

 少し別のことを考えていたサイーダに、ミーアノーアが釘を刺す。


「サイーダ、ちゃんと聞いていますか?」

「あ、はい。ごめんなさい」


 ボーッとしていたことを指摘され、素直に謝るサイーダ。


「いいえ、いいのよ」


 ミーアノーアはそんなに怒っていない。

 困惑する娘の気持ちも分かる。

 彼女は丁寧に、話を続けた。


「いいですか、サイーダ。美衣子と美理子に、ファイヤーストーンを甦らせるのです。ファイヤーストーンには、闇を光に変える力があります。その力が復活すれば、この世界の闇は消え、優しい光の世界へと変わるでしょう。みんなと力を合わせて、最後まで希望を捨てないで。わたしの最愛の娘、サイーダ」

「お母様!」


 ミーアノーアの魂が、光の中に消えていく。

 サイーダの目に、元の城の景色が映った。

 ハッとサイーダはすぐ何かに気付く。

 ダークキングが邪悪な気で作られた剣を構え、すぐ側まで来ていた。


「まずはお前だ! 女王サイーダ!」


 サイーダの頭上に、ダークキングの剣が降り下ろされる。


 ダッ。


 素早く剣をかわし、両手に気を溜めてダークキングにぶつけた。


 ポロッ。


 サイーダの気がぶつかった瞬間、ダークキングの懐から何かが落ちた。


「あれは……!」


 ダルが持っていた、ファイヤーストーンの残りの欠片二つだ。

 サイーダはその欠片を拾おうとする。

 が、ダークキングの方が早かった。

 サッと欠片を懐に隠し、空に舞い上がる。


「お前達の目的は分かっている。ファイヤーストーンを復活させて、このわしを封じ込めようというのだろう。だが、そんなことはさせない。この世界は、わしの物だ!」

「サイーダ様!」


 美理子がサイーダの側に来る。

 ただならぬ様子に、何かを感じたのだろう。

 サイーダが美理子に話しかける。


「美理子、そしてみーこ。私は先ほどまで、母ミーアノーアの魂と話をしていました。ファイヤーストーンには、闇を光に変える効果があるそうです。その五つの欠片を全て集め、空に掲げて下さい。そうする事で、ファイヤーストーンが復活します。そして、離れていた二つの大地、ブラックグラウンドとmirikoworldを一つにするのです」

「mirikoworldとブラックグラウンドを一つにする。そうか。それが本当の平和になるんだ!」

「そうです。私達に残された希望は、それしかありません。あなた方二人に託します。どうか、この世界に光を……」

「分かりました。やってみます」


 美理子は美衣子と顔を見合せ頷いた。そして、ダークキングを見上げる。


 ダークキングが、微かに口角を上げ、笑う。


「ダークキング、わたし達は諦めない。必ず、ファイヤーストーンを復活させ、世界に光を照らしてみせる!」

「やれるのか。お前達に」

「やれるさ。俺達がフォローする」

「僕もやるよ。みーこ!」

「そうね。頑張りましょう」


 ジース、パンパン、アヤが続く。


「フッ、面白い」


 宙に浮いたままのダークキングが、気を溜める。


「ダークネスパワー!」


 無数の黒い気の攻撃が降ってくる。


「いきますよ。みなさん!」


 サイーダを先頭に、戦士達も反撃を開始した。





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