ジース、アヤより
やあ、みーこ、ジースだよ。最初に君に出会ったのは、チルル村での道具屋だったよね。最初は、何故君が俺に話しかけたのか分からなかったよ。
俺、そんなに必死な顔してた? 確かに、アヤを奪われて焦っていたのは事実だよ。道具屋なんだし、普通は店の商品を見ているよね。でも、俺は店主と話していて、店にいた君達のことは眼中になかった。声、大きかった? 君に話しかけられた時、何この子って正直思ったよ。まさか聞き耳をたてられていたなんて思いもしなかったから。
アヤが黒魔族にさらわれた時、村の人を恨んだりした。何で助けてくれなかったんだって。誰のせいでもないのに、人を信じられなくなっていたんだ。でも、君の話を聞いて、間違っていると気付いた。君は人の心に寄り添える優しい子なんだって。そして、心の強さもある。一緒に旅をしていて分かったよ。きっと、大切に育てられたんだね。君は凄く頼りがいのある子だから、戦闘中でもドンドン前に出て行くよね。救世主の力を持つ者としての使命もあるのかな。
でもね、一つアドバイスをしておくと、女の子なんだし、もう少し誰かに頼ってもいいと思う。あと、人間界で、自分の生まれた時のことを聞いたときもそうだったけど、一人で抱え込む癖があるよね。それ、止めた方がいいよ。そう言う俺もかつてはそうだったけど、君や美理子達に会えて変われたんだ。
人は誰かといることで、強くなれるんだから。
それから、こんなこと書いていいのか、迷うな。
うーん、パンパンが、俺と君のこと、誤解しているみたいなんだ。本当に、何もないのにね。
どうやら、彼は君のことを好きらしいね。
君が彼のことを、どう思っているか分からないけど、彼は純粋だよ。そして一途。もし気があったら、付き合ってあげて欲しい。
実は俺知ってたんだ。彼が君と会うために、体を鍛えていたこと。最初君と同じ位の背丈だったよね。でも成長期を過ぎて、高くなり、筋肉もつきやすくなった。手足も長くなったよね。
俺とアヤの所にも、筋トレのやり方を教わりに来たんだ。彼は呑み込みが早いから、すぐに上達したよ。これでドラムも良い音で叩けると、凄く喜んでいた。俺達も嬉しかったよ。
だから、パンパンの気持ちに君が答えてくれるなら、俺達も嬉しい。が、君に無理強いはしたくない。少しづつでも、パンパンの魅力に気付いていってくれたら、それでいい。
俺達は、温かく見守るよ。
◇◇◇
みーこ、アヤよ。あなたと初めて会ったとき、わたしはあなた達の敵だった。ダルに操られてね。あの時のことを、今思いだしても怖いわ。ジースを殺すように命令を受けていたなんて……。頭の中は、もう完全に敵という認識しかなかった。自分は、黒魔族の戦士で、ダルの忠実な部下だという催眠を受けていたの。でもね、記憶が完全に消されていなくて良かった。ジースとの思い出があったから、あの指輪を見て、自分を取り戻すことができたの。
そして、もう一回洗脳されそうになった時、ジースやあなた達の必死な声が聞こえたから、わたしはわたしでいられた。ありがとう。あの時は、自分を刺すしかなかったわ。誰も、傷つけたくなかったの。もう、ここで死んだと思ったわ。でも、サイーダ様のお力で生きることができた。目を開けて、みんなの顔を見た時、涙が出てきたの。わたしは、ここにいていいんだって。迷惑をかけたのに、みんなの嬉しそうな顔を見たら、わたしも、みんなの為にできることをやりたいって思ったの。
あなたが人間界に帰った後、わたしはジースと一緒に故郷の村に帰ったわ。行方不明になったわたしを、村の人達は温かく迎えてくれた。そして三年間、村で静かに過ごしたの。でも、剣の修行はしてたわよ。いつまた、敵が現れるか分からないから。ジースは、無理をするなって言うんだけどね(笑)
あなた達のことも、ジースに詳しく教えてもらったの。黒魔族にさらわれる前から、こういう子達がいるって噂になっていたけど、あまりよく知らなかったから。けど、もし会えたら、ジースと一緒に仲間になろうかって話はしていたかな。
ジースは、あなた達と旅をして、楽しかったみたいね。人間界にも行ったし。みんなのこと、信頼してるのよ。羨ましくなるくらい。だからわたしも、あなた達と共に戦えて嬉しかった。話に聞いていた通りだったわ。仲間にしてくれてありがとう。改めて、お礼を言わせてもらうね。
もう、誰にも迷惑をかけたくない。もっと強くなって、今度はわたしがジースを守りたいって思っているの。今、幸せだから。それに彼、半年もわたしを探し続けてくれたの。だから、もうあんなことがないようにしなきゃね。
えっ、結婚? ううん、まだ。でも、いつか、ね。
それから、パンパンのことは聞いた? 彼、わたしとジースの所に、筋肉をつけたいって頼みに来たの。きっと、あなたを守る為ね。最初は腕立て伏せ、腹筋、背筋、そしてランニングと、徐々にメニューを増やしていったけど、彼、一生懸命だった。今じゃ、程よく筋肉が付いて、いい男になったでしょ。だから、彼の願いが叶うといいなぁって思っているの。あなたとは、きっといい関係が築けると思う。彼、悪い人じゃないでしょう。
余計なお世話かもしれないけど、応援しているよ。
けどね、最初わたし達に会いに来た時、彼ちょっと遠慮してたの。わたしとジースが静かに暮らしてたのに悪いなって思ったらしくて。わたしもジースも、そんなことなかったのにね。むしろ楽しかった。教えていくうちに、どんどんたくましくなる彼を見てたら。村の子供達にも、剣術を教えていた時期があったから、教えるのは苦じゃないの。それに、断れるわけないじゃない。あんなにキラキラして、誰かを守りたいと思ってる子の願いを。同じく人を好きになった者として、その気持ちは分かるから。
余談だけど、筋肉は無理をさせてはダメよ。ちゃんとストレッチして、伸ばしてあげないと。
変なところが、吊っちゃうかも(笑)




