表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/24

突入!暗黒の城

 決戦の時は、音も立てず静かに流れていた。

 美衣子達は、ダルに奪われたファイヤーストーンの欠片二つを取り戻すため、再び暗黒の城を目指していた。

 この戦いが最後になって欲しい。誰もがそう願っていた。彼女達にとってこの戦いは長く苦しい道だった。だが、楽しいこともあった。


 仲間と信じあい、共に協力して一緒に歩いてきた。この道は、決して苦しいことばかりではなかった。それが平和へと繋がる道ならば、決して諦めない。それが、美衣子達の信じる道。

 そのためには、ダークキングを倒し、この地上を愛の世界へと変えなければ。

 みんなの思いは同じ。

 彼女達の顔は希望に満ち溢れていた。


「さぁ、行きましょう!」


 城の入り口の大きな扉の前に、戦士達は立つ。

 中ではダークキング以下、ブラックグラウンド全土から集まった黒魔族が勢揃いしていた。


「来たか。ここがお前達の死に場所と知らずに」


 今、決戦の火蓋は、切って落とされようとしていた。


 ギギギギ……。


 城の大きな扉を開けると、待ち構えていた吸血コウモリのドラキュロスの群れが襲ってきた。


「さっそく出てきたな」


 ジースが横に飛び、素早く10匹ぐらい切り落とした。


「キキーッ」


 ドラキュロスの群れは数を増やし迫って来る。だが、美衣子達の前ではその牙も役に立たない。


 ビュッ。


 うさちゃんの投げるナイフは、見事にドラキュロスに命中していく。


「これで半分は片付けたな。さぁ、後は一気にいくぞ!」

「うん!」


 ジースがみんなをまとめる。


「ファイヤー!」


 美衣子の魔法でドラキュロスの群れは全滅した。

 そこから長い通路を真っ直ぐ歩くと、下へと続く階段があった。

 迷うことなく、その階段を降り始める。

 しばらく行くと広い部屋に出た。

 部屋の中央に行く。

 突然、目の前の壁が壊れて、二頭のスモークタイガーが飛び出して来る。


「ガルルルル……!」


 鋭い眼光で美衣子達を睨むスモークタイガー。

 このモンスターは白い色をした虎で、体から煙を出すことで、相手の視界を奪うことができる。


「そのスモークタイガーは朝から何も食べさせていない。餌を欲しがっている」


 室内に響く男の声。


「誰!?」


 思わず叫ぶ美理子。だが相手は姿を見せず、聞こえるのは声だけだ。


「わたしを倒す前に、まずわたしのペットのそのスモークタイガーを倒すことだ。さあ行けお前達」

「ガルルルル……!」


 スモークタイガーが、牙を剥き出して飛びかかって来る。その大きな体型のわりに、動きは素早い。


「くっ」


 アヤが剣で切ろうとするが、その剣は空を切った。


「スーパーウインド!」


 小人達が空から強力な風を起こすが、それも効かない。

 スモークタイガーの目は、獲物を狙うそれと化していた。

 彼らの目には、美衣子達はただの美味しそうな餌として捉えられている。


「ガウッ」


 お腹をすかせたスモークタイガーのスピードが増し、美理子に迫る。


「ウォーターフラッシュ!」


 美理子の持つ魔法の杖から水が勢いよく飛び出す。

 その水に足を取られたスモークタイガーは、滑って転んでしまった。


「今よ!」

「うん!」


 美理子の叫びに答える美衣子。


「はあああああっ……!」


 美衣子が両手に気を集中し、炎の形を作っていく。


「フレィムガン!」


 彼女の両手から作られた無数の炎の玉が、狙いを定め飛んでいく。


 ビシュッ。シュッ。シュッ。


 起き上がろうとしていたスモークタイガーに、フレィムガンは命中した。


「ガウウウ……」


 スモークタイガーは足にフレィムガンを当てられたが起き上がった。

 そのまま高くジャンプして、アヤに飛びかかる。


 ガキッ。


 自分に噛みつこうとしていたスモークタイガーの牙を、アヤが剣で受け止めている。

 だが、力の方はスモークタイガーが上だ。

 腕に力が入らなくなり、手が下がっていくアヤ。


「アヤさん!」


 パンパンが横からスモークタイガーに体当たりして、アヤを救う。


「ガウッ」


 スモークタイガーがそのままの体勢で、パンパンの肩に噛みつく。


「うっ」


 パンパンの肩から赤い血が流れていく。

 その牙は食いついたまま離れない。


「くっ、このっ……!」


 パンパンはもう片方の手でベルトに挟んであったバチを取り出し、思いっきりスモークタイガーの顔を殴った。

 その勢いで後ろの壁に激突するスモークタイガー。

 パンパンは傷口に手をやったまま、その場で動かない。


「パンパン、大丈夫ですか?」


 サイーダがすぐに駆けつけ、その傷を癒してくれる。


「はい、大丈夫です」


 サイーダに支えられ、パンパンが立ち上がる。

 ちょうどその時、吹っ飛ばされたスモークタイガーも起き上がっていた。


「ガルルルル……!」


 二頭のスモークタイガーの眼光が激しく光る。


 かっ。


 スモークタイガーの体が、急に青白く光り出した。その光の中に包まれ、戦士達の視界は何も映らなくなった。まるで辺り一面に煙が充満しているように。


 ビュッ。


 スモークタイガーの牙が戦士達に攻撃をくわえる。しかし、美衣子達にはその姿は見えない。

 ハッと美理子が何かを思い出した。

 あの時と同じだ。暗黒姫と戦ったあの時と。

 美理子は決意の表情で叫んだ。


「みんな! スモークタイガーの気配だけに意識を集中して!」

「分かった!」


 美理子の言葉にみんなが頷く。


 ガサッ。


 ジースの後ろにスモークタイガーの邪悪な気配がする。


「でやーっ」


 ジースが雷光剣でスモークタイガーを切った。

 その瞬間、視界を覆っていた光が消え、血を流すスモークタイガーの姿が目に入った。


「ガルルルル……!」


 スモークタイガーは血を流しながらも反撃してくる。


「くっ」


 カンが飛びかかるも、スモークタイガーはサッと避けた。が、カンは諦めず、その尻尾を思いっきり噛んだ。


「ギャルルルルル」


 苦しそうなうめき声を上げて、スモークタイガーは倒れる。


「はっ!?」


 それを見たジースが何かに気が付く。


「みんな! 奴の弱点は尻尾だ。尻尾を狙え!」

「分かったわ!」


 もう一頭のスモークタイガーを見ながら美衣子が答える。


「行くわよ! フレィムガン!」


 美衣子が両手から放ったフレィムガンが、スモークタイガーの尻尾をめがけて飛ぶ。


「ギャルルルルル」


 最後の咆哮を発しながら、スモークタイガーは倒れた。


「やったぁ!」


 嬉しさを隠せず、仲間達と手を取り合って喜ぶ。

 と、ちょうどその時ーー、


「よく我がペット、スモークタイガーを倒した。それは褒めてやろう。しかし、このわたしは倒せるかな」


 つかつかと奥から誰かが歩みよる。


「お前は……!」

「ダル!」


 戦士達の顔色が変わる。

 ダルは漆黒の鎧を身に纏い、戦士達の前に歩み出た。


「サイーダよ。残り二つの欠片はわたしが持っている。手に入れるためには、わたしを倒すしかない。さぁ、どうする?」


 真剣な顔で、サイーダに問いかける。


「分かりました」


 サイーダが美衣子達に後ろに下がるように合図を送る。


「サイーダ様!?」


 驚く戦士達。

 サイーダはダルと一対一で戦おうというのか。


「私達は、決着をつけなければなりません。下がっていなさい。みーこ」

「しかし……」

「大丈夫です。この戦いは、私とダルの宿命の戦いです。あなた方は後ろで休んでいなさい。いいですね?」

「は、はい……」


 こんな真剣な表情の女王は初めてだ。

 今まで優しくて、いつも温かく、戦士達を見守ってくれた女性(ひと)ーー。

 こんな強い部分もあったとは。

 この時、美衣子達は、女王サイーダの本当の姿を知った。そして、本当の愛のあり方を。

 宿命の戦いが、今始まろうとしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ