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死神と呼ばれた少年と  作者: りん
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華耀国1

燈和の話に行く前に、背景的なものを・・・

アレーシア大陸は中央から北にかけてに雲を貫く程高い山、西側には海に続く大きな湖、そして南から東にかけて広大な森が広がっていた。

華耀国は300年をかけて東から北にかけて存在した小国を武力をもって制圧し、ようやく誕生した統一国である。

華耀国が国を広げていく時には必ず英雄がいた。突出した身体能力を有し、皆をまとめ、戦を次々に勝利に導く、正しく英雄としか言いようのない存在である。時代によって一人であったり、複数であったりしたが、他国と同じ小国であった華耀国を等しく圧倒的勝利に導いた。逆に英雄のいない時代では他国に押し返され、広げた国土を逆に削られることもあったが、決定的な敗北に至る前に再び英雄が現れては国土を徐々に広げていき、300年を経て、アレーシア大陸北東部を統一し、一つの大国を作り上げた。


しかし、北東部統一の数か月後、当代のたった一人の英雄が南の森を挟んだ向こう側の大国、シーファの暗殺者により殺害された。

突出した身体能力を持つ英雄をどうやって殺したのか。

調べようにも、華耀国にあるシーファの情報は、100年前の英雄が持ち帰ったものしかなかった。

理由は簡単である。大陸東の森、華耀国にとっては南の森が、一般人では越えられないからだ。

広大な上に湿気が多く火もつかない、肉食動物が闊歩する大陸東の森、通称魔の森は、華耀国の一般兵では往復どころか、通過してシーファにたどり着くことすら不可能だった。唯一魔の森を越えられる可能性が高かったのは英雄と呼ばれる存在だったが、戦乱の時代、目の前の戦争を捨ててわざわざ魔の森を超えた先の諜報に使うこともできなかった。

北東部統一がなり、ようやく魔の森の先にも目が行くようになった矢先に英雄が殺されたせいで、華耀国はシーファについて調査することが厳しくなった。


「いや、どう贔屓目にみても、『シーファについて調べられる前に英雄を殺害した』だろ」

豪奢な部屋の隅で、豪奢な衣装を適当に着崩した若い男が胡坐をかいて座っていた。

「知りたいのは動機ではなく方法だ。飛陽様がただやられるはずはないというのに、相手はご丁寧に書置きを残して行ったのだぞ」

その男の前で、こちらは豪奢な衣装をきっちりと着こなした同じく若い男が仁王立ちで睨みつけていた。

「あー、[シーファは不可侵、触れた王は首と胴が離れることになると心得よ]だっけ。我が国の英雄、飛陽様を殺してのその書置きじゃ、冗談じゃ済まないだろうねぇ」

笑さえ含んだその回答に、真面目な男は座っていた男の胸ぐらをつかんでつるし上げた。

「貴様、他人事ではないだろうが!」

「首と胴が離れる王は兄上であって俺じゃないし?」

「貴様、陛下が殺されてもいいというつもりか!!」

それとなく相手に自分が王弟だということを思い出させようとしたが、スルーを通り越して更なる暴言が返ってきた。これはあれだ。これ以上ふざけたら殴られるやつだ。

「頭に血ー上りすぎだろ。兄上は殺されないよ。シーファはまずほっとくってさ」

「な、に?」

吊るしていた手を放した。

「相手の言うとおり『不可侵』にしときゃ、とりあえず殺されないだろ。優先順位はまず国の安定、次いで魔の森の調査、シーファへの対策は最後だ」

「・・・だが、それでは陛下の身の安全は・・・」

「兄上だけじゃないぜ。兄上の子供も、俺もお前も、高位の王侯貴族も全員、シーファの刃が首に当てられてる状態だ。でもさ、それどうしようもないだろ」

英雄たる飛陽を殺した暗殺者は、捕まらなかったのだ。飛陽の遺体は、全身に細かな傷があり、戦闘をした跡が残っていた。そして、死因は首の血管を切られたことによる失血死。

英雄と戦闘を行い、最後に殺し、置手紙を残し、王城から逃げおおせた暗殺者。

誰がどうしたって、どうしようもないのは明白だった。

「代わりに、結構シャレにならないこと言ってた。英雄を作る、とかなんとか」

「英雄を、作る・・・」

英雄の存在は不安定なものだ。存在すること自体が運であり、さらに運よく軍に所属してくれればいいが、農民として暮らしていて見つけたころには老人であったり、最悪盗賊として国に仇をなす側になることさえあった。

ならば専用の施設を作り、子供の頃から訓練を施し、選別、洗練していけば、英雄並みか、それに近い能力を身に着けたものを安定的に軍に配備することができる。

「しかも、ガキに限定して施設に放り込んで隔離して育てりゃ、シーファの暗殺者が紛れ込む心配もない。実際使えるようになるのは20年後とかになっちまうけど、国内安定と並行すんなら、まあそんくらいゆったりやるのが最良なんじゃねぇの」

「そうか。・・・なぁ、彩悠」

「・・・なんだよ」

「お前は、自分の子を、その施設に入れられるか」

「ああ」

一瞬も迷わない、即答だった。

「わかった。なら、俺も支持しよう。・・・俺は、そんな隔離施設に自分の子を入れたくないがな」

「ああ、俺も、兄上も、自分の子を入れることになってる。うるさい連中を黙らせて、子供を多く集めるために、必要だからな」

「っ、陛下が・・・・・・そう、か」

こいつほんとに兄上大好きだな。

「言っとくがお前の子はいらねーぞ」

「・・・何」

「弱いとわかってるガキはいらねぇ」

目の前の男、蓮葉から右ストレートが、彩悠の左顔面に炸裂した。

あれ、背景が終わらない・・・

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