1、【少女と妖】
1、【少女と妖】
人は常に自分の幸せを勝ち取るために、残酷な手を考える。それは動物も同じことだ。だから、『弱肉強食』という言葉が生まれるのだ。
私の学校は集団グループが多く、入学した際にすぐにグループに入らなければ、多くの人たちと交流が出来ず、ストレスが溜まる。ここは都会。私の家は普通のごくありふれた家庭だった。今までは。私の父は会社の長にそそのかされて道を誤った。そして家の環境が悪くなった。それから都会にいることが出来なくなり、私たちは田舎に引っ越した。そこは何の特徴もなくつまらない所。
直感でそう思った。でも違ったようだ。
この場所には14の神社があり、その多くが今は使えなくなっていた。しかし7番目の神社には、《タタラカミ》という神が祀られており、どんな難しい願いでも叶えてくれるというこの場所にしか知られていない言い伝えがあった。そして私はつまらないことと分かっていても、その場所に行こうと思いそこに行った。今思えば安らぎが欲しかったのだろう。
「はー神社ってこんなに迫力あったんだ。知らなかった。まあ興味なかったし、どうでもいいことだろうけど。」
賽銭箱の横に立ち、五円玉を入れた。上にあった鈴の清々しい音が鳴り、心を癒した。
パン、パン。手を叩く音とともに、私は無意識に口に出してこう願った。
「どうか私に憑き物をください。」
私はそれだけ言い残し、その場を去った。しかしこれは私の哀れな行いだったようだ。私は心を落ち着かせるため、あまり前を見ていなかった。神社の階段を踏み外しそのまま転げ落ちた。不思議と痛みはなかった。
「あーあやっぱり神様は救ってくれないか。分かってたけどね。」
気がつくとそこは病院だった。
「先生葉羅ちゃん起きました。」
「おお、起きたか。私が分かるかい。」
そのまま長々と意味のわからないことを聞かされ、そして私は実感した。今までの自分と今の自分に変化があることを。
幸か不幸か私は頭は打ったが命に至るような怪我ではなく、事故が起きた10日後に私は目が覚めたと医師にきかされた。あそこから落ちて死んでいないことにも驚いたが、もっと驚くことが起こっていた。まず父が家を出て行ったこと、そして私の目の前に《憑き物がいたこと》。
私は神社で願ったことが本当に起きるとは思っていなかった。そしてその姿を見て絶句した。
「貴方は誰?何故ここにいるの?」
憑き物はこう言った。
「君に呼ばれたから。だから僕は君に憑く事にした。これから宜しく。『不幸な少女。』」
それから1ヶ月が過ぎた。何故私の願いが叶ったのかはわからない。まず知らなくていい事だ。この1ヶ月の中で分かったことがある。
まずこの憑き物の名が事故があった神社に祀られていた【タタラカミ】だという事だ。
そもそも何故この場所に14もの神社があったのか。そこからおかしかった。此処は昔妖が多く住んでいた妖横丁?みたいな感じだった。しかしあまりに妖が多くなったため、人々が14もの神社を建て、妖の力を封じたそうだ。そして私は今新しく入った中学校で学問を学んでいるわけだ。
「葉羅さん、この問題答えてくれる?」
「ハイ。」
まあ私が過ごすことといったら、平凡に終わる日々を過ごす。なのにそれは、絶対に出来なくなった。
「葉羅、そこの問題間違っているよ。君はつくづく馬鹿だねえ。」
こいつのせいで。この五月蝿い奴が【タタラカミ】、通称【タタラ】だ。こいつの特徴といったら、現代のような格好をしていながら全くこの世界のことを知らない【変人】だということだ。
それから私は自分でも分からないが、自分を鍛えるためにあることをするようになった。