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出発
「…どんな子がいるかな?」
「分かんないけど、楽しみだね。」
小雨が降っている。少し肌寒い。
「ねぇヨウくんはさ、市役所に行くの緊張した?」
「えー?そりゃまぁ緊張したよ。」
「最近は可愛いデザインもいっぱいあるよね!ヨウくんたちどんなだったの?」
「俺は雑誌に付いてたピンクのシンプルなやつだったな。」
後部座席に座る私たちが『ヨウくん』と呼ぶその運転手は、うちの5人兄弟の長男。
私とは7つ離れていて、私たちが小さい頃からよく面倒を見てくれていたらしく、優しくて面白い自慢の兄。新婚だ。
そんな兄に婚姻届提出の時の話を聞いているのは私『ミユ』と、2つ下の妹『ヒナ』
3人が乗った車は地元から1時間半程走って県外に来ていた。
車内での他愛もない会話。
パラパラと降る雨の音。
今日は新しい家族を迎えに行く日だ。
「ここかな、っと。着いたぞー。」