第一章 7
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騒然雑多とした人ごみに。
ビルの側面につけられた大型スクリーンでは、突如発生した超局地的な自然災害の話で持ち切りだが、そのスクリーンを見上げるものはいない。
忙しなく過ぎ、右往左往している人ごみの中にいながらも、決して干渉されずに、泰然と佇む少年がいた。ジーンズにパーカーといったその服装は、この人ごみの中では埋没していきそうななものだが、それでも少年はどこに流されるでもなく、そこにいた。
少年は一人、大型スクリーンを見上げ、そこから吐き出される内容をいかにも愉快そうに眺めていた。すると、画面はヘリからのライブ中継へと切り替わり、アナウンサーの女性が街の被害状況を淡々と述べる。
「――――の街にて、きわめて局所的な地震、それに伴う巨大な地割れが確認されています。街は殆どの建物が全壊となっており、原形を留めている建物は見渡す限りには見当たりません。それでは、専門家方にも意見を聞いてみましょう――――」
中継が終わり、カメラはまたスタジオへと戻され、様々な専門家らしき人物がああだこうだと言い合い始める。
「・・・あの娘かな」
愉快そうに呟く少年の声は、やはり誰の意識にも上らなかった。