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第一章 5

 背筋に、凍てつく感覚が這い寄る。それと同時に、足元を、漆黒の『何か』一面を覆い尽くした。

 直後。

途轍もない重圧が、頭上から体の芯を突き抜けていった。否、突き抜け続けていた。

「何・・・これ・・・?」

 尋常でない圧力が加わり続ける中、私の視界に映る風景は黒――――という言葉では形容し難たい、言うなれば『闇』が、風景を塗り替えていった。

ルシアを中心に広がりを続ける『闇』は、建物を呑み込む。と、次の瞬間には、建物は『闇』に押しつぶされる様に倒壊した。

「私の前に平伏せ、愚民ども!貴様らなんぞがこの私に敵うはずが無いのだよ!」

「こんなの――――!」

高笑い混じりに、ご満悦の表情を浮かべるルシアに言い返そうと口を開くが、ルシアが一瞥した直後、今までの数倍の圧力が加わった。

文字通り、地面に押し付けられる。内臓が締め付けられるのを感じる。立っていられなくなり、膝が屈した。堰を切った様に、体が地面に縫い止められる。ルシアはそれを愉悦の表情を浮かべて眺めているのが分かった。

ルシアは片手を掲げると、振り下ろす。

それに同期してか、空から自動車でも降ってきた如くの衝撃が全身を貫いた。耐えかねた地面に無数の亀裂が走り、体は半ば地面に埋まっていた。

「くッッッっっっ!!!」

 全身に力を加え、地面を押して立ち上がろうとするが、その掌は地面へとめり込んで、体を押し上げることは出来ない。

辛うじて動かせる首を回して、ルシアへと向ける。

「しぶといね~。他の『代理人』はこの段階で大抵、気を失ってしまうんだけどね」

 その言葉に背筋が凍る。ルシアは何と言ったか?『この段階で』と言わなかった?

私の心中を表情から察したのか、ルシアは猟奇的に微笑む。

「これは、ただの『下準備』だよ。これからがショータイムだ」

 街全てを呑み込んで、あらゆるものを押しつぶして、なお『下準備』。

彼の、この力はどこから来ているのか。同じ『代理人』であるはずなのに、圧倒的な差が開いていた。圧倒的優勢を誇っていたにも関わらず、その盤面を覆された。

歯噛みをするが、それで趨勢は変わらない。

「さあ!そろそろだ!」

 ルシアの高らかに宣言する声を遠くに感じた。遠のく意識を繋ぎ止めるのに必死だった。


ゴバッッッッッッッッっっっっっ!!!


そんな中、不意に、地面から引き剥がされる。

勿論、加わり続ける圧力は依然として消えていない。

何かに吹き飛ばされたのだと認識できたのは、地面を二、三転し、体が止まった時だった。

首を回して、先程まで自分が横たわっていた場所に目を向けると、そこには・・・、

「影・・・?」

 初見は人間に見えた。

だが、違う。そう本能が告げていた。

『それ』は真っ黒に覆い尽くされた人型の『何か』だ。

『それ』は一体だけでは無かった。

ルシアが最初に現れた時同様、十数体を侍らせていた。

『それ』は、虚ろに揺らぎながら、確かにそこに存在していた。

「これでもまだ生きているんだな。君は、他の誰とも違うらしいな」

 上から目線の感心だった。だが、それでも、私には抵抗する力は残っていなかった。

「だが、それもここまでだ」

 言うや否や、侍らせていた影が一斉に襲い来る。思わず、目を固く閉ざす。


そして、

怒涛の暴力の嵐が、吹き荒れ――――。



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