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第一章 3

  3

「うっ・・・」

 私は、自分の呻き声で気を失っている事に気づいた。目を開けると、瞳孔に光が満たされ、頭に突き刺さり、思わず目を閉じる。しかも、耳にも外の喧騒が届き、耳も痛くなる。

ようやく慣れ初め、目を開けると、そこには、いつもと変わらない狭苦しい部屋に、妹が気持ちよさそうに寝息を立てている。

 その寝顔を、時を忘れて眺めていると、目眩に襲われる。


「そろそろ慣れてきましたか?」

「あ~、やっぱり夢とかにはならないんですね」

 

適当に答え、窓べりから外を見下ろす。今度は、耳を劈く様な喧騒がまたもや爆発する。

窓べりから眺めると、今までとに比類しない程遠くまで見通せる。

それが、神の加護、と言うやつなのだろう。

「もう大丈夫です」

「よろしかったのですか?『代理人』となった今、これまでの貴方の記憶は他の人間からは消え、同じ『代理人』以外の人間には認識される事も無くなります」

「それもさっき聞いた。覚悟くらいしてるわよ」

 そう。それが、この力の代償。

最短距離を進む権利を得たのだから、それ相応の犠牲は覚悟していた。だけど・・・、

「一つだけ暇乞いをさせてもらっても良い?」

 彼女は、無言で消える。好きにしろ、という事で良いのだろう。

最後の我儘。実際には、戦いが終わって生きていれば、元の生活に戻れるらしいが、望みは薄い。

だから、『当面の問題』くらいは解決させてもらう。

今日辺り、借金取りが迎えに来る予定だった。勿論、私を売春組織に売り飛ばす為に。その私は消えた。だが、借金が消えた訳ではないので、マリアを連れに来るだろう。

それをどうにかする。

 これで見納めになるであろう、この風景を少しでも目に焼き付ける。


・・・どれだけ経っただろうか。

私の目の前には、スーツを着崩した『いかにも』な大男が三人、床に転がっていた。彼らの持っていた携帯から、その大元への釘も刺しておいた。マリアも当然無事だ。その妹は目を白黒させ、


「・・・あなたは誰ですか?」

 

崩れそうになった。今まで築き上げてきた物が全部。

私は、下唇をきつく噛み締めると、妹に・・・『少女』に背を向ける。そして、窓ガラスの填められていない窓から飛び降りる。

都合三階程度の高さから地面に着地するが、通りを行き交う人々は気にも留めない。これが、今の私、『アドゥラ・モンドラーネ』という存在なのだろう。

 そのまま、道を歩く。もう振り返らない。また、『ここ』に戻ってくるまでは。

「では、契約も済んだことですので、詳細の説明をしてもよろしいでしょうか?」

 頭の奥に直接声が響いた。私が返事をせずにいると、その声の主は言葉を続ける。

「得物は・・・『神葬』とでも言いましょうか。戦いに負けた神は衰退を辿る、という意味では言い得てるでしょう。これは、一つの決まった形があるわけでは無く、『代理人』を選んだ神の得意とする得物、もしくは、『代理人』そのものが扱いやすい得物にする事が出来ます。どちらを選んでも、得物の『特殊性』は保たれますので、ご安心下さい」

「『特殊性』?」

「ええ。ギリシャ神話群を率いるゼウスを例にしてみれば、ゼウスの扱う『雷霆』という得物を扱えます。この『雷霆』の『特殊性』は『雷を扱える』という面です。ですので、この『雷霆』を槍にしようが、細剣にしようが、『雷を扱う』という特性は消える事はありません」

「で、その武器は何処に?」

「ここに。あなたが望めばすぐにでも姿を現します。扱い方は、その『神葬』が伝えるでしょう」

 そして、一拍空けて告げる。


「これより、あなたを戦神メンチュの名の元に、眷属として、『代理人』として承認します」


 今度は、分かりやすい何かは無かった。だが、頭には、ダイレクトに様々な情報が一気に流れ込んできた。

傍から見れば(既に一般の人間には認識されないが)、立ち眩を起こしているように見えただろう。

ゆっくりと、目を開けると、私の目の前にはひと振りの湾曲した剣が鞘に納まった状態で、虚空に現れていた。本能的に、何も疑わずに、その柄を握る。

 異様に軽い。これが剣自体の重量なのか、『代理人』となったことの恩恵なのかは分からないが軽かった。

繊細なディティールが施された豪奢な剣だったが、デザイン性に富んだ雰囲気はしない。ただ、その剣に本当に必要だから彫られている、といった感じだ。

剣を鞘から少し抜き、刃を眺める。刃には、刃を覗き込む私の姿はおろか、背後に広がる蒼天までもを映すほどに磨かれていた。そこから、剣をひと思いに抜き放つ。

澄み渡る鈴の音を彷彿とさせる音と共に、抵抗を感じさせず抜かれた剣は、陽の光に照らされて、一層に輝きを増す。

 抜剣したまま、二度三度と素振りし、感触を確かめる。やはり軽い。

そのまま剣を正中線に構え、頭上に振り上げ、右足の踏み込みと共に振り下ろす――――。


ゴッッッッッっっっ、と、振りおろされた軌跡の延長線上に沿って、軽く見積もってもてキロ単位で地面が断裂した。


「なっ・・・!?」

 遅れて感じた大地震のような縦揺れと、三々五々に散る無関係な人々の阿鼻叫喚は耳に入らなかった。砂嵐の様な砂塵はあっという間に全てを呑み込んだ。そんな中、無意識に呼吸が荒くなる。

 私は、ただ振り下ろしただけだった。勿論多少は力を入れたが、それでも、こんな被害になるとは思ってもみなかった。

自分は、半端じゃない力を与えられてしまった。

そう実感すると、思い出したように膝が笑う。膝だけでなく、全身が自分でも驚くほど、不気味に小刻みに震え出す。思わず、剣を地面に突き刺し、それに寄り掛かる。だが、立っていることすら困難になると、体を支えていた剣が不意に消滅し、支えを失った膝は崩れ落ちる。

周囲では、何も知らない人達がくもの子を散らしたかの様に慌てふためいているが、不思議と自分の中では、何かが落ち着いてきた。

何故神々は、自ら争わず、人に代理を求めたのか。

それは、神々が全力で戦えば、世界の一つや二つは容易に破壊できるからだ。いくら大工でも、自分で建てられるから、と引っ越し先の家を破壊してから引っ越そうとは思わない。ようはそういう事だ。

そして与えられたのは、たとえダウンサイジングされていたとしても、そんな神の力の一部なのだ。これくらいの事は容易に行えるのだろう。

この落ち着きが、『代理人』となったおかげなのか、生来のものなのかは分からないが、とにかく落ち着けた。

荒くなった呼吸を正すと、全身の震えも止まっていた。

私は立ち上がると、もうもうと立ち込める砂煙から視界を開こうと、手近の建物を見上げると、軽く膝を曲げる。

今度は全力で跳ぶことの無いように、細心の注意を払って跳躍する。だが、それでも十分に人間を超越した速度で七メートル程の建物の屋上を軽く跳び越し、悠然と着地する。

この高さでも、地表付近よりはマシだが砂塵があるが、確認作業には支障はない。

元々、区画整理された道に沿ってバラック小屋は建てられているため、この区画の端まで断裂は続いているが、幸いにも妹の小屋は巻き込まれていないようだ。

ひとまず安堵の息をつくと、これからの行動を考える。

『代理戦争』は世界規模で行われていて、この世界で語られているような神々が、人間に力を与えて、一番を決める。となれば、最高で、この世界に語り継がれてきた神話の神々の数だけ、『代理人』が居る事になる。

それだけの『代理人』がこんな力を持っているとしたら、『戦争』では無く『災害』の域に達するはずだ。

そして、無数の神々に『代理人』が付いたとしたら――――、


「思考が周回遅れになっている、よ!」


「がぁっっっッッッッ!?」

 腹に、鈍器で殴られたような強烈な痛みが炸裂した。同時に、立っていた建物は崩落し、体はもの凄い勢いで地面に叩き付けられる。

何度か地面に跳ねて、数十メートル程で停止した。咳き込みながら、どうにか呼吸を整える。

何故襲われた、なんて考えはすぐに捨てる。問題は誰に襲われたか、だ。しかし、それも今すぐ考えることでは無い。

状況に思考が追いつくと、咄嗟にその場から、爆心地から遠ざかる為に全力で跳ぶ。直後に、最前まで居た地面が盛大にはじけ飛ぶ。

なんとか体勢を立て直し、身構える。武術など習っていないから見よう見まねだが、それでも無いよりはマシだろうか。

「うーん・・・今ので倒しきれないのか。ちょっと予想外だよな」

 先程聞いた声が砂塵の中から聞こえる。やはり、これは、その人物の仕業のようだ。男性の様だが、声で年齢は計りづらかった。

砂塵に小柄ながら、影が映る。その影が右手を横に薙ぐ。たった、それだけの動作だった。

その動作だけで、砂塵は綺麗さっぱりに消え去った。

薙いだ動作で突風を起こして吹き飛ばした、とかでは無く、綺麗に消滅したのだ。

 だが、驚いている暇は無い。

クレーターの出来たその場には、茶髪の少年が立っていた。上はTシャツにパーカーを羽織り、下はジーパンというラフな格好の少年は、不遜に立っていた。

「あーあ。折角、良いカモだと思ったんだけどなー。キミの神さまは何なのかな?」

「知らないわよ、そんなの」

 勿論、神の名前は聞かされているが、その特性などは全く伝えられていないので、丸っきり嘘でも無い。

だが、少年はそんなのはどうでも良いのか、騒乱に包まれた街を見回している。

「まあ、何であろうと、叩き潰すに変わりないんだけどさ。教えてくれた方が、楽に死ねるよ」

 全くと言っていいほど、全身を脱力させた少年は両手を広げ、無防備に歩み寄る。駆けたり、跳んだりせず、ただ歩み寄る。

 それだけなのに、私の全身からは気色の悪い汗が滝の様に流れ、背筋が凍った。

「来いっ!!」

 自らに喝を入れようと、声を張り上げると、同時に右手にはさっきの剣が握られていた。抜身の剣に目をやると、不気味な程に震えていた体も徐々に落ち着きを取り戻した。

相手の様子に変化は無い。気づいていない筈もないが、おそらく気にしていないのだろう。

戦闘になっても勝てる。そんな自信が滲み出ているようだった。

無意識の内に剣を構え、重心が前に傾く。

何者であれ、彼も『代理人』だろう。願いを叶える為には、いずれ戦わねばならない相手だ。

一度、大きく息を吸い、止める。辺りの騒乱は遠ざかっており、もう誰も付近にはいないだろう。巻き込む心配は無い。前に傾けた重心でひと思いに駆け出す。

剣を下に構え、五十メートルはあった距離を一秒も掛からず詰めると、少年の懐まで肉薄する。少年はまだ、呆気に取られている。

 今なら、行ける!

完全完璧のタイミングだった。私が少年の左脇腹から斬り上げる動作に入ったのと同じくして、少年はこちらに目を向けていた。どんな回避行動も手遅れなはず。

だが、今度は私が面を食らう番だった。

少年の左手が閃いた。私の剣の進路を阻むかのように掌で剣の刃を握る。

衝撃が、剣を中心に突き抜けた。

割れた地面が散弾のように飛び散り、周囲の脆い建物に突き刺さる。幸い、とっくに他の人間はこの場を去っているので建物の外壁が破壊されるだけで済んだ。それだけで済んでしまった。

 そう。少年は、素手で刃を掴んで受け、なお健在だった。そして、少年は不敵な笑みを浮かべると、掴んだ剣に力を加えた。

押しても引いてもびくともしない。こちらがどんなに力んでも、剣は固定されているかのように少年の左手に握られたままだ。

驚愕を露わにした私に追い打ちを掛けるように、更なる出来事が重なる。二人の力に耐えかねたのか、剣の刃が粉々に砕け散ったのだ。

 驚愕に驚愕が重なると人間はどんな表情になるのか。多分、今の私の顔がその答えになっている。だが、元々揺らいでいた気持ちが揺らごうが、私の思考に何ら変化は起きなかった。むしろ冷静に、砕ける剣を眺めていた。しかし、これには少年も予想外だったのか、怪訝そうな顔をしていたが、そんな事はどうでもいい。ひとまず距離を取る。

 少年の一瞬の隙で、数十メートル離れられたが、おそらくこの距離なら、少年は一息で届くはずだ。安心出来る間合いでは無いのだが、それでも多少の安堵感は否めない。

「君の剣、脆いね」

 少年は愉快そうに笑いながら、自らの左手を見つめ開閉させながら言った。

「そんな剣が神葬なら・・・もう良いかな」

 少し声のトーンを落しそう言うと、左手を握り締める。

不穏な気配を肌に感じる。

そう思考した時には、眼前に捉えていたはずの少年の姿は消えていた。

――――違うッッッっっっ!

殆ど反射で振り返り、それと同時に右足が回し蹴りを放っていた。

凄まじい速度を叩き出した蹴り足は宙に舞っていた塵や埃を仄かに赤熱させ、蹴り足そのものも熱を帯びる。そう認識した直後に、音速の壁を超えた反動で衝撃波が巻き起こる。

だが、それでも私の蹴りは空を切った。視界の端には、少年が屈んで蹴りを躱し、私の右側に体をずらしたのが辛うじて映った。

少年は緩慢な動きで――――と言っても音速域での話で、常人が認識できる速度はとうに超えている――――がら空きの顔面に目掛けて拳を放つ。

見えているのに躱せないもどかしさがどうしようも無く、黙って少年の拳を受け入れるしか出来ず、少年の振り切った拳が、衝撃が私の体に突き刺さり、伝播し、吹き飛ばす。

足は地面を離れ、高速で滑空する。建物にぶつかろうがそのエネルギーを殺しきれずに崩れさり、隣の通りに出ても勢いは衰えず、次の通りまで突き抜け、そこでようやく地面を数回撥ねたかと思うと、通り沿いの建物にぶつかって停止する。

方向感覚が完全に麻痺したが、建物が遅れて崩れるのが聞き取れた。

揺れる頭を左右に振って意識を明瞭にすると、殴られた頬が痛む。だが、それ以外は痛む箇所は無かった。脆いとはいえ、コンクリートに叩き付けられたのに、だ。

立ち上がろうと四肢に力を入れるが、若干平衡感覚がぶれているが、特には問題無さそうだ。

 どう動くか・・・。

力の差は歴然としている。『力』の使い方もはっきりしない現状での勝算は皆無だ。幸い、少年はまだこちらを舐めている。ならば隙を作って、逃げに完全に徹する。それが得策だ。

そう結論づけた直後、正面の崩れた建物の残骸が消し飛ぶ。目の前で起きた現象に目を疑うが、そんな私の心境とは裏腹に、その現象の中心であろう場所には少年が悠然と歩を進めていた。彼の右手には、先程まで無かった本らしき物が握られていた。

「全く・・・今ので意識も飛ばないなんて、大した化け物ぶりだ」

 声を張り上げているわけでは無いのに、その声は百数メートル離れた私の耳に容易に届いた。

「『化け物』なんてヒドイ言いようね。アンタも似たようなもんでしょ」

 ついさっきまで逃げる算段を立てていたのだが、彼の他人事の様な呟きについ反応してしまった。

「僕も同じ?何を言っているんだ」

 少年はまたしても不意に消えると、私の十メートル程離れた場所に現れる。その言葉は、どこか怨嗟に満ちた、ただ矛先は別の誰かに向けられた言葉に思えた。

「僕は『君ら』と違って、望んでこの『力』を手に入れた。何も知らず、ただ唐突に与えられた『代理人《劣化版》』とは違うね」

 少年の言わんとしたい事は分からない。ただ彼には、彼なりの戦う理由があるのだろう。

「僕は苦労して『この力』を手に入れた。なのに!神々は、ただトップを決めるだけの為に、夢を見るだけ見て、それを自ら叶えようとしない凡人共にその力の一端を授けた。前回の『代理戦争』の時だってそうだ!僕が死ぬ思いで手に入れた力を、分け隔てなく分配しやがった!

超然とした雰囲気を醸し出していた今までとは違い、声を荒らげていた。だが、キャラの瓦解よりも気になることがあった。

「『前回の代理戦争』?」

 思わず口にしてしまったが、少年は大層な身振りをすると、高らかに説明を始める。

「そうさ。こんなもんを神さまって奴は、こんな下らない戦争を二度も繰り返してまでも、自分たちの頂点を決めようとしてるんだよ!俺達人間なんて、文字通り、チェスの駒でしかない。盤上で無様に、神さま《プレイヤー》の気に障らないように生きていかないといけないんだよ!しかも、『前回』の『勝者』なんて、そんな神さまの仲間入りをしちまったんだからな!」

 理解の出来ない話が多過ぎる。支離滅裂と言ってもいい。少年は何を言っている?

前回の代理戦争、そして優勝者、それはどれだけ昔の話なのだ?

そんな疑問が錯綜している表情を読み取ったのか、彼は愉快に笑うと、

「人間の主観的な時間で言ってみれば、百年にも満たない」

「はっ・・・?」

 思考に多数の齟齬が生じる。

では、彼の実年齢は?

では、見た目が伴っていないのは?

では、代理戦争があった爪痕は?

では、前回の勝者は?

 次々と湧き出す疑問に、少年が答えることは無かった。

 ただ、一言。

「・・・この世界は狂ってるよ!」

少年は、地面を割れんばかりに踏み込むと、こちらに突っ込んでくる。気味が悪い程に冷たい汗が背中を伝う。だが、その一挙手一投足が緻密に把握できていた。

これを火事場の馬鹿力、とでも言うのだろうか。私は無意識に右手に何かを握っていた。

剣だ。先程、完膚なきまでに粉砕された剣。それが私の右手に収まっていた。

一秒を、一瞬を、無間に引き延ばした一撃が交差する。

彼の動きに合わせて、私は剣を地面に食い込ませて走らせる。薄く、広く、斬り剥がされた地面は、土の壁となり少年と私の間に屹立する。と同時に私は反転すると、全力でこの場から離れる。


ゴッッッッッッ、と。辺りを二方向からの爆音が席巻する。


一瞬を経て、薄く広がった土の壁は、かき消されるように消え去る。だが、その一瞬があれば十分だった。

 今度は一切の加減をせずに、全力で踏み込んで跳ぶ。地面は、そのエネルギーを抑え切れず、クレーターが拡がる。

自分では真っ直ぐ跳んだ筈だが、体は既に地面から十数メートルの高さに達していた。背後で響き渡る筈の轟音は耳に届かない加速されている為、揚力が生じたのだろう。

その為、景色は目くるめく流れていく・・・という事にはならず、思考回路も、認識速度も何十倍にも引き延ばされ、体感では空中浮遊のようだった。

 

極限まで圧縮された時間の中。

唐突に、莫大な光に包まれたかと思うと、直後に凄まじい音・・・というよりは衝撃が全身に響き――――


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